さくらKCS Research Memo(8):事業、人材、財務、AXの基本戦略を基に成長基盤の再構築を図る
FISCO 2026年09月10日 12:08:00
*12:08JST さくらKCS Research Memo(8):事業、人材、財務、AXの基本戦略を基に成長基盤の再構築を図る
■中期経営計画
2. 4つの基本戦略
(1) 事業戦略
事業戦略では、さくらケーシーエス<4761>の強みを生かせる分野に経営資源を集中投下し、成長領域へのシフトと収益性の高い事業ポートフォリオへの転換を進める。具体的には、SMBCグループ向け「開発内製化支援ビジネス」を安定成長の基盤として拡大するとともに、「ソリューションビジネス」と「セキュリティ・デジタル基盤ビジネス」を高収益化の柱として育成する。これら3つの重点ビジネスに投資とリソースを積極的に振り向けることで、収益力の向上を図る。同社は各ビジネスを、市場性と自社の強みの2軸で4つの領域に区分している。ともに高い「コア・注力事業」には前述の3ビジネスを位置付けてリソースを積極投入し、強みはあるものの市場性が限られる運用支援などは「安定事業」として効率性を重視する。市場性は大きいが強みが確立していない領域を「育成事業」、いずれも低い領域を「構造変革事業」とし、上位領域への移行を進める。
ソリューションビジネスでは、SAPなどのERP、自治体、地銀・信金、学校、化学、経理業務などの自社及び他社ソリューションの販売・導入・保守に注力し、顧客のDX推進や業務課題の解決を支援する。SMBCグループ向けビジネスでは、データガバナンスやEUC(エンドユーザーコンピューティング)領域など、同社の強みを生かせる分野へ注力する。AI活用の拡大とも連動し、従来の労働力提供型から、AIを活用した価値提供型のビジネスモデルへの転換を図る。一方、セキュリティ・デジタル基盤ビジネスでは、サイバーセキュリティリスクやサプライチェーンリスクの高まりを事業機会と捉える。金融機関向けサイバーセキュリティフレームワークに則した自社対策ノウハウと、2025年10月に開設した新データセンターの強固なファシリティを活用し、セキュリティ対策からデジタル基盤の構築、運用サポートまでを一体で提供する方針である。
(2) 人材戦略
人材戦略においては、事業戦略を実現する源泉として人材を位置付け、「新しいことに果敢に挑戦し、自ら主体的に行動できる自律的な人材」の獲得・育成・定着を進める。これにより、事業成長を支える人材基盤を強化する。事業成長で得られた成果は、賃金、賞与、福利厚生、教育研修などを通じて従業員へ還元する方針である。また、成長と挑戦を適切に評価へ反映できるよう、人事評価制度を抜本的に見直す。なお、2027年3月期には3期連続となる平均約5%のベースアップを実施している。
さらに、AIなどの新技術に実際に触れる機会を提供し、基礎から実務レベルまで段階的に学べる学習プラットフォームを整備することで、一人ひとりの成長を後押しする。働きやすい職場環境の整備も重視しており、フリーアドレス化、リラックススペースの拡充、在宅勤務やフレックス勤務制度の活用、出産・育児・介護との両立支援、健康経営の推進を通じて、多様な人材が活躍できる組織づくりを進める。
(3) 投資・財務戦略
投資・財務戦略では、PBR1.0倍以上の実現に向け、収益力の強化、資本配分の適正化、資本市場からの期待値最大化に取り組む。前述のとおり、収益性は改善しているものの、資産効率や財務レバレッジには改善余地があるとの認識から、適切な資本配分を通じて企業価値の向上を目指す。
新中期経営計画期間中の営業キャッシュ・フローは、人材投資・研究開発費を控除する前の段階で約125億円を見込んでいる。そのうえで、人材投資に約45億円、研究開発に約5億円、商品力強化に約15億円、設備投資に約40億円を配分する計画である。さらに、M&Aやアライアンスによる資本提携も選択肢に含め、将来の成長に向けた投資を進める。
株主還元の詳細については後述するが、DOEを新たな指標とし、キャッシュ・アロケーションにおける投資計画と余剰資金の状況を踏まえながら、株主還元を実施する方針である。2027年3月期から2029年3月期までの計画期間においてDOE3.5~4.0%の水準を確保することを目指す。
(4) AX戦略
AX戦略では、全社業務でAIを利活用し、その実践知の蓄積と共有を継続することで、ビジネスプロセスの変革と新たな価値創造を実現する。
事業面では、エンジニアの役割を「実装者」から「価値創出の設計者・指揮者」へ再定義し、開発品質と生産性の飛躍的な向上を目指す。2025年時点のAI成熟度を準備・PoV※段階と捉え、2028年には戦略的活用段階へ到達する目標を掲げている。業務面では、AIとの共創により営業を高度化し、営業効率の向上と営業力の強化を両立させる。間接業務についても、AIによる支援を受ける段階から従業員がAIを指揮する段階へ転換し、属人化の排除と生産性の向上を図る。
※「Proof of Value(価値実証)」の略で、製品やサービスが実際にどれだけの価値を提供できるかを検証するプロセスを指す。
推進体制としては、CAXOの統括の下、AX推進部(AI専任組織)と事業部推進リーダーで構成するAI CoEが、AI・セキュリティ統合ガバナンス体制を構築し、AXのけん引役を担う。AI利活用に伴うリスクを情報セキュリティと一体で捉え、倫理性、透明性、安全性、法令遵守、公平性、説明責任、人間中心の設計を重視しながら、AIの活用を進める方針である。
3. サステナビリティ基本方針
サステナビリティについて、同社はSMBCグループの一員として同グループの方針に沿いながら、同社グループの経営理念に基づく企業活動を通じて、持続可能な社会の実現と自社グループの持続的成長の両立に取り組む。
重点強化テーマには、持続的成長の源泉である人材への積極投資、多様な人材がいきいきと活躍できる就労環境と企業風土の醸成、深刻化するサイバーセキュリティリスクへの継続的な対策強化を掲げている。
これら3つのテーマには、2029年3月期末時点の目標を設定している。人材への投資では、1人当たりの年間教育投資を12万円以上とし、売上高比率0.6%以上を目安に継続的な投資を実施する。就労環境では、従業員アンケートにおけるエンゲージメントスコアを指標とし、アンケートを年1回以上実施して結果を施策へ反映する。併せて、男性の育児休暇取得率100%、管理職に占める女性の割合10%以上を目標としている。セキュリティでは、連結売上高セキュリティ投資比率について、(一社)日本サイバーセキュリティ・イノベーション委員会が大企業向けに推奨する0.5%以上の水準を維持する。
また、具体的な取り組みとしては、社内手続きや取引書類の電子化、再生可能エネルギー利用率の向上、ITサービスを通じた貢献、キャリア形成支援、ダイバーシティ推進、健康経営、DX・AX・セキュリティ対策ソリューションを推進する計画である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 森本 展正)
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■中期経営計画
2. 4つの基本戦略
(1) 事業戦略
事業戦略では、さくらケーシーエス<4761>の強みを生かせる分野に経営資源を集中投下し、成長領域へのシフトと収益性の高い事業ポートフォリオへの転換を進める。具体的には、SMBCグループ向け「開発内製化支援ビジネス」を安定成長の基盤として拡大するとともに、「ソリューションビジネス」と「セキュリティ・デジタル基盤ビジネス」を高収益化の柱として育成する。これら3つの重点ビジネスに投資とリソースを積極的に振り向けることで、収益力の向上を図る。同社は各ビジネスを、市場性と自社の強みの2軸で4つの領域に区分している。ともに高い「コア・注力事業」には前述の3ビジネスを位置付けてリソースを積極投入し、強みはあるものの市場性が限られる運用支援などは「安定事業」として効率性を重視する。市場性は大きいが強みが確立していない領域を「育成事業」、いずれも低い領域を「構造変革事業」とし、上位領域への移行を進める。
ソリューションビジネスでは、SAPなどのERP、自治体、地銀・信金、学校、化学、経理業務などの自社及び他社ソリューションの販売・導入・保守に注力し、顧客のDX推進や業務課題の解決を支援する。SMBCグループ向けビジネスでは、データガバナンスやEUC(エンドユーザーコンピューティング)領域など、同社の強みを生かせる分野へ注力する。AI活用の拡大とも連動し、従来の労働力提供型から、AIを活用した価値提供型のビジネスモデルへの転換を図る。一方、セキュリティ・デジタル基盤ビジネスでは、サイバーセキュリティリスクやサプライチェーンリスクの高まりを事業機会と捉える。金融機関向けサイバーセキュリティフレームワークに則した自社対策ノウハウと、2025年10月に開設した新データセンターの強固なファシリティを活用し、セキュリティ対策からデジタル基盤の構築、運用サポートまでを一体で提供する方針である。
(2) 人材戦略
人材戦略においては、事業戦略を実現する源泉として人材を位置付け、「新しいことに果敢に挑戦し、自ら主体的に行動できる自律的な人材」の獲得・育成・定着を進める。これにより、事業成長を支える人材基盤を強化する。事業成長で得られた成果は、賃金、賞与、福利厚生、教育研修などを通じて従業員へ還元する方針である。また、成長と挑戦を適切に評価へ反映できるよう、人事評価制度を抜本的に見直す。なお、2027年3月期には3期連続となる平均約5%のベースアップを実施している。
さらに、AIなどの新技術に実際に触れる機会を提供し、基礎から実務レベルまで段階的に学べる学習プラットフォームを整備することで、一人ひとりの成長を後押しする。働きやすい職場環境の整備も重視しており、フリーアドレス化、リラックススペースの拡充、在宅勤務やフレックス勤務制度の活用、出産・育児・介護との両立支援、健康経営の推進を通じて、多様な人材が活躍できる組織づくりを進める。
(3) 投資・財務戦略
投資・財務戦略では、PBR1.0倍以上の実現に向け、収益力の強化、資本配分の適正化、資本市場からの期待値最大化に取り組む。前述のとおり、収益性は改善しているものの、資産効率や財務レバレッジには改善余地があるとの認識から、適切な資本配分を通じて企業価値の向上を目指す。
新中期経営計画期間中の営業キャッシュ・フローは、人材投資・研究開発費を控除する前の段階で約125億円を見込んでいる。そのうえで、人材投資に約45億円、研究開発に約5億円、商品力強化に約15億円、設備投資に約40億円を配分する計画である。さらに、M&Aやアライアンスによる資本提携も選択肢に含め、将来の成長に向けた投資を進める。
株主還元の詳細については後述するが、DOEを新たな指標とし、キャッシュ・アロケーションにおける投資計画と余剰資金の状況を踏まえながら、株主還元を実施する方針である。2027年3月期から2029年3月期までの計画期間においてDOE3.5~4.0%の水準を確保することを目指す。
(4) AX戦略
AX戦略では、全社業務でAIを利活用し、その実践知の蓄積と共有を継続することで、ビジネスプロセスの変革と新たな価値創造を実現する。
事業面では、エンジニアの役割を「実装者」から「価値創出の設計者・指揮者」へ再定義し、開発品質と生産性の飛躍的な向上を目指す。2025年時点のAI成熟度を準備・PoV※段階と捉え、2028年には戦略的活用段階へ到達する目標を掲げている。業務面では、AIとの共創により営業を高度化し、営業効率の向上と営業力の強化を両立させる。間接業務についても、AIによる支援を受ける段階から従業員がAIを指揮する段階へ転換し、属人化の排除と生産性の向上を図る。
※「Proof of Value(価値実証)」の略で、製品やサービスが実際にどれだけの価値を提供できるかを検証するプロセスを指す。
推進体制としては、CAXOの統括の下、AX推進部(AI専任組織)と事業部推進リーダーで構成するAI CoEが、AI・セキュリティ統合ガバナンス体制を構築し、AXのけん引役を担う。AI利活用に伴うリスクを情報セキュリティと一体で捉え、倫理性、透明性、安全性、法令遵守、公平性、説明責任、人間中心の設計を重視しながら、AIの活用を進める方針である。
3. サステナビリティ基本方針
サステナビリティについて、同社はSMBCグループの一員として同グループの方針に沿いながら、同社グループの経営理念に基づく企業活動を通じて、持続可能な社会の実現と自社グループの持続的成長の両立に取り組む。
重点強化テーマには、持続的成長の源泉である人材への積極投資、多様な人材がいきいきと活躍できる就労環境と企業風土の醸成、深刻化するサイバーセキュリティリスクへの継続的な対策強化を掲げている。
これら3つのテーマには、2029年3月期末時点の目標を設定している。人材への投資では、1人当たりの年間教育投資を12万円以上とし、売上高比率0.6%以上を目安に継続的な投資を実施する。就労環境では、従業員アンケートにおけるエンゲージメントスコアを指標とし、アンケートを年1回以上実施して結果を施策へ反映する。併せて、男性の育児休暇取得率100%、管理職に占める女性の割合10%以上を目標としている。セキュリティでは、連結売上高セキュリティ投資比率について、(一社)日本サイバーセキュリティ・イノベーション委員会が大企業向けに推奨する0.5%以上の水準を維持する。
また、具体的な取り組みとしては、社内手続きや取引書類の電子化、再生可能エネルギー利用率の向上、ITサービスを通じた貢献、キャリア形成支援、ダイバーシティ推進、健康経営、DX・AX・セキュリティ対策ソリューションを推進する計画である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 森本 展正)
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情報提供元: FISCO