*14:44JST 富士興産:石油と環境リサイクルを両輪に、総還元性向80%以上を掲げる資源循環型エネルギー商社 富士興産<5009>は、1949年に創業し、戦後の産業需要拡大を背景に燃料からアスファルト・潤滑油・LPGへ領域を拡大、近年は廃油再生やバイオ燃料など循環型ビジネスを強化している。同社は、2025年10月に持株会社体制へ移行する予定であり、富士ユナイトホールディングスが完全親会社になる。持株会社はグループ経営戦略の策定やリサイクル事業におけるM&Aなどの経営意思決定を担い、事業会社は事業運営に専念する形となる。

同社事業は、石油事業、リサイクル事業、環境関連事業、ホームエネルギー事業、レンタル事業の五本柱。売上高の約9割を占める石油事業がコアビジネスになるが、近年、BtoB向けの需要は、脱炭素化が続く中、緩やかに低下傾向にある。このため、軽油に較べて二酸化炭素の排出量が低減可能なバイオディーゼル燃料(BDF)を含むバイオ燃料に近年は注力し、設備投資が先行したことから、前期は石油事業単体で営業赤字となっている。バイオ燃料の販売量は今後増加することが見込まれ、全社収益の重石となる構図は払しょくされつつある。また、バイオ燃料以外の燃料油販売においては、直販需要家を中心とした付加価値販売により採算性が改善している。同事業においては、顧客向けに製品を配送する必要があるため、供給網を全国に張り巡らす必要がある。同社はENEOS系列会社として配送ネットワークを活用できることに加え、自社でも配送網を構築していることから、安定的な供給体制が競合に対する強みとなっている。

同社は、リサイクル事業に近年注力しており、中期経営計画においても成長領域と位置づけている。エネルギー商社としての長年の経験、知見を活かし、廃油を回収し、再生重油を販売するオイルリサイクルなどを展開している。全国にリサイクル事業者は数多くあるが、大半は小規模となっている。高齢化が進み、事業継承ニーズが高まる中、同社は自社事業との親和性が高いものについては、機動的かつ積極的にM&Aを検討している。

2026年3月期業績予想は、売上高は前期比20%増の82,000百万円、営業利益は前期同様の800百万円、当期純利益は30.3%減の500百万円としている。注目されている石油事業については、直販需要家を中心とした付加価値販売やバイオ燃料の販売量増加を受け、営業利益は70百万円と黒字転換する見込み。それ以外においても、リサイクル事業、ホームエネルギー事業、レンタル事業など幅広く、安定的に収益計上することが見込まれる。

同社は、中期経営計画(FY2024-26)を発表しているが、定量目標として26年度3月期に経常利益1,450百万円、ROE8%以上を掲げている。重点施策は、バイオ燃料を含む石油事業の新規展開とリサイクル事業の強化による利益の最大化である。ROE向上に向けては、既存事業の収益力強化に加え、リサイクル事業におけるM&Aの実施が期待される。同社は、前期に20億円の借入金調達を実施しており、手元資金は十分にある。同社が着目するリサイクル事業では、多数の小規模事業者が存在しており、M&Aを通じた成長加速が可能となろう。

株主還元方針については、中期経営計画において、総還元性向80%以上(3年平均)、DOE5%以上を目指すとしている。2026年3月期の配当予想は1株当たり62円(配当性向81.7%、予想配当利回り5.17%)となっている。

同社は、中核事業である石油事業においてバイオ燃料の製造設備に先行投資してきたが、ようやくセグメント利益の黒字転換が見えてきており、企業成長における不透明感が後退しつつある。また、成長領域として掲げるリサイクル事業を含め他の事業セグメントも安定的に収益を計上しており、収益基盤は強固になりつつある。足元の株価バリュエーションはPBR0.82倍、予想配当利回り5%以上であり割安感がある。今後、注力するバイオ燃料やリサイクル事業の収益貢献度が更に増える場合には、グリーン銘柄として見直され、株価も大きく上昇する可能性があると考える。

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情報提供元: FISCO
記事名:「 富士興産:石油と環境リサイクルを両輪に、総還元性向80%以上を掲げる資源循環型エネルギー商社