*13:30JST 銚子丸:「すし銚子丸」運営、劇場型ビジネスモデルでサービス提供において他社と差別化 銚子丸<3075>は、千葉県に本拠を置く寿司チェーン運営企業である。主力 ブランド「すし銚子丸」を中心に、「すし銚子丸雅」や立食い寿司「Standing鮨Bar Yasuke」など複数の業態を東京・千葉・埼玉・神奈川の関東圏で展開している。事業セグメントは飲食業(小売業)1本で、売上高の大半は自社運営店舗での飲食売上で占められている。魚介類は地元銚子港をはじめ全国各地から直送し、伝統的な江戸前握り寿司として提供しており、厳選した赤酢のシャリや丁寧な接客も特徴とする。近年はスマートフォンアプリ「縁アプリ」による顧客管理や予約サービスの導入、従業員教育によるサービス向上に注力している。

同社の強みは、創業以来「鮮度と食材の品質」にこだわった店舗づくりを続けている点である。豊洲市場や各地の漁場から店舗へ直送された魚をさばき、顧客の目の前で職人が寿司を握る「技術力と人財力」と、回転寿司の中でも劇場型エンターテイメント性を持つ「ライブ型ビジネスモデル」のほか、全ての従業員が理念・真心を売る「銚子丸プライド」を持つ組織集団となっている。大手回転寿司チェーン(スシロー、くら寿司、はま寿司等)がリーズナブルな価格帯・大量出店で幅広い客層を狙う中、やや高めの価格帯でより本格的な寿司体験を提供する点で差別化を図っている。とはいえ、品質・安全とローコストの両立にも取り組む。また、直営店舗のスタッフが目の前で握るスタイルのため落ち着いた雰囲気で食事できるほか、季節限定メニューやこだわり食材を使った創作寿司にも注力している。新業態店舗の拡大、さらに、自社のDX推進(「縁アプリ」など)や人材育成を掲げ、顧客とのコミュニケーション強化や技術力向上を図り、関東圏での知名度とリピーター基盤を築いている。

2025年2月期の売上高は17,388百万円、営業利益1,052百万円で着地した。前年の2024年5月期(12ヶ月)と比較すると、9ヶ月13日間の変則決算のため単純比較は難しい。オペレーションの効率化を目的として6店舗の大規模改装を実施、新業態にも取り組み店舗数は91店舗となった。原材料やエネルギー価格の高騰、労働力不足や人件費の上昇など厳しい状況が続く一方で、店舗リニューアルやデジタル予約の導入、顧客単価向上施策などが一定の効果を上げつつある。そのほか、出張回転寿司は、件数・参加人数とも堅調に推移。2026年2月期の会社計画では、売上高が24,263百万円、営業利益が1,445百万円と想定している。「すし銚子丸」 ブランドの深化と磨き上げや品質・安全とローコストの両立による既存業態の徹底的な磨き上げに加え、出店と新業態開発・DX推進を続ける中で2025年度中に米国(カリフォルニア州)1号店の出店を計画している。

銚子丸が属する外食産業、とりわけ寿司小売市場は、国内消費動向の影響を大きく受ける分野である。新型コロナウイルス収束後は外食需要が回復しつつあるものの、原材料価格や人件費の上昇圧力は依然として強い。また、消費者の嗜好は多様化し、外食チェーン各社が取り込む市場シェアも飽和状態に近づいている。こうした中、国内の代表的な回転寿司チェーン各社(スシロー、くら寿司、はま寿司等)はいずれも強固な店舗網と効率的なオペレーションで競合しており、同社も高品質訴求や地域密着戦略で差別化を図っている。他方、訪日外国人観光客の回復に伴い首都圏の飲食店にも追い風が期待されており、同社の客層はファミリーや地元住民が中心であるが、インバウンド需要の影響がプラスに働く可能性もあろう。

中期経営計画を掲げており、同社は2028年2月期に売上高26,750百万円、営業利益1,660百万円を掲げている。デジタル化や人財投資による店舗運営効率化を推進し、収益力向上に取り組む方針。既存店のリニューアルや新規出店による営業面の拡大を図る一方、人手不足対応のため顧客予約システム(縁アプリ)活用やトレーニング強化などでサービス品質維持を目指している。株主還元では、安定配当を掲げる中、株主資本配当率(DOE)2%程度を意識しているようだ。ROEの向上に合わせて適宜、DOE水準の見直しを検討していく方針。劇場型で顧客へのサービスの提供価値向上を掲げる中、持続的な成長が続くか注目しておきたい。

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情報提供元: FISCO
記事名:「 銚子丸:「すし銚子丸」運営、劇場型ビジネスモデルでサービス提供において他社と差別化