*14:43JST 飯野海運 Research Memo(3):海運業(外航海運業、内航・近海海運業)と不動産業が両輪 ■事業概要

1. 事業の概要
飯野海運<9119>は海運業(外航海運業、内航・近海海運業)と不動産業を収益の両輪としている。2024年3月期のセグメント別売上高構成比(調整前)は外航海運業が83.3%、内航・近海海運業が7.3%、不動産業が9.4%、営業利益構成比は外航海運業が79.4%、内航・近海海運業が2.1%、不動産業が18.4%、売上高営業利益率は外航海運業が13.2%、内航・近海海運業が4.0%、不動産業が27.1%だった。なお海運業は、特に外航海運業が海運市況・為替動向や入渠費用などの影響により業績が大きく変動する傾向がある。同社の海運業の特徴として、市況変動の影響を受けにくい中長期契約を主力としていることが挙げられるが、一部のスポット契約は市況変動の影響を受ける。2023年3月期と2024年3月期は海運市況・為替動向が収益を大幅に押し上げる要因となった。不動産業の営業利益は設備更新・営繕費用・電力料金などの影響を受けるが、この要因を除けば営業利益率がおおむね30%前後で推移し、高利益率の安定収益源となっている。

2. 海運業
海運業のうち、外航海運業は全世界にわたる水域において、原油を輸送する大型原油タンカー、石油化学製品を輸送するケミカルタンカー、LNG(液化天然ガス)やLPG(液化石油ガス)を輸送する大型ガス船、石炭・木材チップを輸送する専用船及び石炭や穀物・鋼材・肥料などを輸送する小型〜中型ドライバルク船(ばら積み貨物船)を運航している。内航・近海海運業は国内及び近海を中心とした水域において、LNG・LPG・石油化学系ガスを輸送する小型ガス船を運航している。

2024年3月期末時点のグループ運航船舶数は合計96隻(社船49隻、用船47隻、共有相手持分及び短期用船を含む)である。船種別の内訳は、外航海運業の大型原油タンカー4隻、ケミカルタンカー36隻、大型ガス船9隻(LNG船1隻、LPG船7隻、アンモニア船(中小型)1隻、注:LNG船は社船1隻以外に出資先会社で24隻を共同保有または用船)、ドライバルク船22隻(ドライバルク船21隻、木材チップ専用船1隻)、内航・近海海運業の小型ガス船25隻(LNG船1隻、LPG船22隻、溶融硫黄船1隻)となっている。

主要取引先としては、アストモスエネルギー(株)(出光興産<5019>グループと三菱商事<8058>グループのLPG部門が統合したLPG商社)、出光興産<5019>、王子ホールディングス<3861>、ENEOS(株)(ENEOSホールディングス<5020>グループ会社)、JA全農(全国農業協同組合連合会)、J-POWER(電源開発)<9513>、東ソー<4042>、日本ゼオン<4205>、北海道瓦斯<9534>、Equinor ASA、Borealis AG、SABIC/ARAMCO TRADING FUJAIRAH FZEなどがある。なお2022年4月には世界的な総合化学品メーカーであるSABICから、貢献度が特に高く優れた実績のあった企業として「SABIC Suppliers Recognition Program 2022」を受賞した。

同社は、資源・エネルギー関連輸送を主力として、グローバル・ネットワークを駆使した効率的な輸送で、遠洋から近海にわたる幅広い水域で海上輸送サービスを提供している。業界最大級の船隊規模を誇るケミカルタンカーや、安定収益源として中長期契約を積み上げる大型ガス船などを特徴・強みとしている。特に中東積み石油化学製品の輸送量はトップクラスのシェアを誇っている。またLPG・石油化学系ガスの国内輸送シェアは業界トップクラスで、国内では数少ない内航LNG船も運航している。

同社が運航するケミカルタンカーの多くはステンレス製タンクを有していることも特徴だ。ステンレス製タンクは通常のコーティングタンクに比べて耐腐食性が強いため、硫酸なども輸送できるメリットがあり、石油化学製品だけでなくパーム油などの輸送も行うことで効率的な運航を図っている。ステンレス製タンクに加えて、タンク洗浄など石油化学製品輸送に要求される高度な船舶管理ノウハウ、さらには効率的な輸送ノウハウを有していることが、同社の競争優位性につながっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)

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情報提供元: FISCO
記事名:「 飯野海運 Research Memo(3):海運業(外航海運業、内航・近海海運業)と不動産業が両輪