*16:18JST プログリット Research Memo(8):中長期ターゲットである英語学習領域以外の市場規模は約1.2兆円 ■プログリット<9560>の今後の見通し

2. 今後の成長戦略
今後の成長戦略は、英語コーチングサービスの供給力の増強、法人向けビジネスの強化、開発力を活かしたサブスクサービスの拡充、新たな英語学習領域及び英語学習領域以外への展開を基本戦略としている。オーガニック戦略として、主力である英語コーチングサービスの更なる顧客獲得拡大とサブスクサービスへの投資を中心に進めるなか、新規領域では積み上げてきたノウハウを生かし、新たな英語学習サービスと英語学習以外のサービスへ拡大し、既存領域と新規領域を組み合わせることで、事業価値の最大化を目指す。

(1) 英語コーチングサービスの供給力の増強
英語コーチングサービスの成長を確保するため、コンサルタントの人材を増やし、供給力を増強する。優秀な人材を社員として採用し、継続的にスキルを向上できるよう、コーチング研修の実施、コンサルティングノウハウや経験を組織知としてシェアしてアドバイスしあう「CSアップ」や「BPS」などの仕組みを整備している。また、社員のエンゲージメント向上に向けて、全国から全社員が集まり中長期的に目線合わせを行う創業祭、ミッション実現に通じる仕事を全員で称えるミッションアワードなどの開催、エンゲージメントサーベイの実施とその改善活動など、多様な取り組みで社員の士気を高めている。こうした人的資本経営を実践しながら、待遇面の改善も進め、優秀なコンサルタントがその能力をフルに発揮できる環境を整備することで、人材を増強していく。なお、2023年3月には(株)リンクアンドモチベーションが主催する「ベストモチベーションカンパニーアワード2023」を、2020年、2021年に続いて受賞した。同賞は、リンクアンドモチベーションが従業員エンゲージメント調査を実施した企業の中から、最も「エンゲージメントスコア」(企業と従業員の相互理解・相思相愛度合いを偏差値化したもの)の高い10社が表彰されるもので、同社は中堅・成長ベンチャー企業部門(2,000名未満)において5位を受賞している。

(2) 法人向けビジネスの強化
法人研修市場においては、同社と大手英会話スクールの取引先企業数には10倍以上の開きがあり、同社では今後3,000社~5,000社の開拓余地があると捉えている。2023年8月期第2四半期より法人向けの営業組織の改革を実行に移し、1人当たり顧客接触回数が大幅に増加し、取引先企業数は着実に増えている。今後、企業側のニーズを的確に捉え、個別にカスタマイズするなど質の高いメニューを提案していくことで、シェアを拡大する計画である。

(3) 開発力を活かしたサブスクサービスの拡充
同社のサービス開発では、人の力とテクノロジーの力が融合されていることが大きな強みである。第1に、英語コーチングサービスにおいて膨大な顧客の学習データを蓄積しており、どのような学習をどの程度実施すれば顧客の英語力が伸びるのかを科学的に分析できる。第2に、顧客とコンサルタントの1対1の深い信頼関係により、英語学習に取り組んでいる顧客の悩み事やニーズといった定性的な情報を、常に獲得して理解できる。第3に、卒業生の中から600名程度がアンバサダーとなり、同社とのコミュニケーションを継続しながら、非常に濃い様々なフィードバックを提供している。新しくローンチする予定のスピフルの開発においても、特にリレーションの強い30名程度のアンバサダーに参加してもらい、一緒に開発を行っている。そして、最終的に同社のサービス開発チームが、第1から第3までの力と結びついて、顧客のニーズを的確に捉えたサービスをアプリとして内製化している。

新サービスとなるスピフル、プログリットAI英会話(仮称)は、それぞれAIを活用したサービスであり、2024年8月期第2四半期にローンチ予定である。スピーキングに特化したスピフルでは、日本語を見て瞬時に英訳する口頭英作文と1分間スピーチトレーニングの2つを、シンプルで使い易いプロダクトに落とし込んでおり、生成AIの活用によって録音した自身のスピーチを瞬時に添削できる。プログリットAI英会話(仮称)は、AIを相手に英会話を行うアプリで、いつでもどこでもネイティブの発音と会話速度が設定されたAIのネイティブスピーカーと英会話を実践でき、オンライン英会話や英会話スクールよりも低価格の実現を目指している。また、リアルの講師に見られるビジネスなどの専門的な知識の限界がAIにはないので、どのようなトピックでも英語で会話できるところが大きな特色である。ローンチ時にはシンプルなUI/UX※でユーザーの使い易いアプリに仕上げる予定である。

※UI/UX:UI(ユーザーインターフェース)とは、ユーザーとサービスやプロダクトの接点。アプリであれば、アプリ内に存在するデザインやボタンなど。UX(ユーザーエクスペリエンス)とは、ユーザーがサービスやプロダクトを通じて得られる体験。アプリであればその利用を通じて得られる包括的な体験。


このように同社では、シャドテンでリスニング力と発音を、スピフルでスピーキング力を、プログリットAI英会話(仮称)でアウトプットと英会話を、それぞれ鍛えるサービスとして提供することになる。AI翻訳などの進化によってリーディング、ライティングの学習の重要性は相対的に低くなっていくなかで、リアルタイムコミュニケーションを鍛えることにフォーカスしてアプリをローンチしていく計画だ。英語コーチングという高価格帯セグメントで培ったプログリットのブランド力を活用して、今後はより低価格な英会話スクール、オンライン英会話といったセグメントにサブスクサービスを展開し、様々な価格帯や目的に向けたサービスを提供する事業ポートフォリオを構築していく。これにより、より幅広い顧客層を獲得し、サービス間での顧客の回遊も見込みながらLTVを向上させることで、成長を加速できると弊社では見ている。

(4) 新たな英語学習領域及び英語学習領域以外への展開
サブスクサービスの展開後は、M&Aによる成長を目指す。短期のターゲット市場としては、現在のサービスの延長上にある英語学習領域で、幼児・子供向けの語学スクールやオンライン語学学習、学習教材、留学斡旋などのサービスへの展開を想定している。中長期のターゲットとしては、英語学習領域以外において、グローバル人材の育成を目的としたeラーニングや法人向けの教育研修サービスの展開を想定している。

なお、現在同社がサービスを提供している成人向け語学スクールの市場規模は約1,700億円とされ、新たな英語学習領域の市場規模は約5,100億円とみられている。さらに中長期ターゲットとする英語学習領域以外も含む教育研修の市場規模は約1.2兆円と巨大なマーケットとなる。同社の事業領域の拡大とともに、利益成長の加速が見込まれると弊社では考えている。

(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)

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情報提供元: FISCO
記事名:「 プログリット Research Memo(8):中長期ターゲットである英語学習領域以外の市場規模は約1.2兆円