このような事業環境のもとで同社は、自動車生産の伸び以上の拡大を目指す。具体的には日産自動車への売上拡大は怠らないものの、日産自動車以外への取引拡大を行い、事業拡大とともに1社依存のリスク低減を目指す。なお既存事業では特に欧米での拡大を見込む。具体的には欧州では、キーセット事業に加えドアハンドル事業に参入、2018年10月にSociete de Peinture de Pieces Plastiques SAS(以下、SPPP)を取得、環境規制の厳しい欧州で既存塗装設備を活用したビジネスの立ち上げを行った。既にRenault S.A.(ルノー)などにバックドアハンドルを納入しており、今後はVW以外でのビジネス拡大が見込まれる。事業拡大に向け、SPPPスロバキアが2024年にハンドル事業の稼働を始め、チェコのキーセット工場で生産性向上にも注力している。またティア1メーカーに対し、機構部品のアッセンブルやアンテナカバーなどの加飾品、ドアハンドル事業などの拡大を目指す。北米向けではインサイドドアハンドルなどの納入を始めた。中国では自動車用外装メッキ部品製造のADVANCONを子会社化、最新鋭の設備を持ち環境規制強化のなかで優位性を発揮し事業拡大を目指す。また中国ではトラック向けに鍵のボタン1つで解錠しエンジンをかけるRPKS(リモートドア鍵ユニット)の製造を広州工場で始め、商用車メーカーに拡販を進める。日本は、日産自動車と三菱自動車が共同開発したEV(SAKURA及びeKクロス EV)のキーセットに同社の製品が採用された。今後も同社製品の採用拡大に向けて拡販し、国内のシェアアップを目指す。一方、自動車部品事業の高付加価値化では、フラッシュドアハンドル(ハンドルとタッチセンサー、施解錠装置で構成される格納式ハンドル)、センサー適応品、システムモジュール製品などの拡販を推進していく。全体として新車販売計画に沿い、計画どおりの事業展開が可能と弊社では見ている。
ロッカーアクセス事業では、コロナ禍の終息により2023年3月期に営業黒字転換を果たした。今後は国内レジャーの回復、インバウンド需要の再拡大から順調な需要拡大が見込まれる。また同事業は売上の40%を占めるターミナルロッカーについて、鍵式からIC式への入替が進行中で、IC式ロッカー普及率は2020年の約39%に対し2026年には60%まで高まると見ている。またここにきてマルチ決済対応、時間制運用機能、宅配受取機能など、新たなサービス対応ニーズも高まっており、高付加価値化も期待される。さらに新市場としてリモート対策や置き配など、新たなビジネス展開が重要となる。この分野では、オンライン注文の商品を店舗で受け取るBOPIS(Buy Online Pickup In Store)での展開も増えている。一例として、店舗側システムと連携し、QRコードを使って受け渡しができる「STLシリーズ」が挙げられる。従来店頭で受け渡していた商品を、クラウド管理されたロッカーを介し非対面で顧客に受け渡すことが可能であり、店舗の効率化と顧客への利便性の提供が同時に図れ、調剤薬局や飲食店等、多様な業態での利用が期待される。また最近では透明ボックスを活用したセルフベンダーが無人販売機として人気を集めている。電源不要で中身が見え、様々な商品を同時に販売でき、価格帯も自由で、新鮮な野菜やレジャーのお土産品などに利用が可能である。また宮城県の新鮮なホヤ、牡蠣、ホタテ、鮭を使った商品の製造販売を手掛ける水月堂物産(株)では規格外等の品を格安で提供することに利用しており、SDGsの観点から食品ロスの軽減につながっている。現在、ライバル企業が少ないとのことで、思わぬヒット製品となる可能性がある。