*14:21JST 日本ヒューム Research Memo(1):安全・安心、豊かな環境つくりに貢献するコンクリート二次製品総合メーカー ■要約

日本ヒューム<5262>は、2025年に会社創立100周年を迎えるコンクリート二次製品の総合メーカーである。1925年に我が国の衛生環境を良くするために設立された同社は、ヒューム管を日本国内で初めて製造し、現在でもトップシェアを有する。豊かな人間環境づくりを企業理念として、建設市場の人手不足を補うプレキャスト製品や社会インフラ老朽化に対応する製品・施工方法開発を通じ社会貢献を行っている。

1. 基礎事業、下水道関連事業、太陽光発電・不動産事業を展開
コンクリートパイル製造・販売・杭打工事などを行う基礎事業、ヒューム管などコンクリート製下水道関連製品の製造・販売、コンクリート製道路関連製品の製造・販売、下水道関連工事などを行う下水道関連事業、太陽光発電、不動産賃貸・管理などを行う太陽光発電・不動産事業、下水道関連工事用機材のレンタル事業などを行うその他事業を展開している。売上面では基礎事業と下水道関連事業が2本柱だが、利益面では下水道関連事業が柱となっている。時代のニーズに合った製品や工法を開発する技術力が特徴・強みで、カーボンニュートラルに向けた脱炭素型・長寿命化対応コンクリート「e-CON(R)」など、次世代に向けた新技術・新製品の開発を強化している。ヒューム管とコンクリートパイルの両方で上位市場シェアを獲得しているのは同社のみで、同社の技術力や品質力の高さを示していると言えるだろう。

2. 2023年3月期は増収減益で着地
2023年3月期の連結業績は、売上高が前期比8.1%増の31,876百万円、営業利益が同14.7%減の1,236百万円、経常利益が同16.8%減の2,102百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同23.1%減の1,642百万円となった。各利益は計画を下回り、減益で着地した。売上面は民間建設投資の回復などにより基礎事業がけん引して増収となったが、利益面は原材料価格高騰や下水道関連事業におけるヒューム管の需要減少などが影響し、減益となった。売上総利益は同3.4%減となり、売上総利益率は同2.0ポイント低下して16.8%となった。販管費は同0.5%増となり、販管費比率は同0.9ポイント低下して13.0%となった。事業別では、下水道関連事業は減収減益となったが、基礎事業の利益率の低下傾向に歯止めがかかった。

3. 2024年3月期は小幅の増収増益を予想、会社予想は保守的で上振れ余地
2024年3月期の連結業績予想は、売上高が前期比1.3%増の32,300百万円、営業利益が同5.2%増の1,300百万円、経常利益が同2.3%増の2,150百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同0.5%増の1,650百万円としている。基礎事業、下水道関連事業とも需要が堅調に推移し、下水道関連事業における防災関連の高付加価値製品の売上拡大も寄与して増収増益としている。なお、業績予想は原材料価格高騰の販売価格への転嫁が課題として小幅な増収増益に留めているが、弊社では、需要は堅調な推移が見込まれること、高付加価値製品の拡販や原材料価格の落ち着きで利益率の改善が見込まれること、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響が和らいで工事の順調な進捗が見込まれることなどを勘案すると、業績予想は保守的な印象が強く上振れ余地があると考えている。

4. 中期経営計画「23-27計画R」を策定
同社は2023年5月に、2024年3月期を初年度とする5ヶ年の中期経営計画「23-27計画R」を策定した。同計画期間を改革の期間と位置付け、推進する。ミッションには「継承と新化」を掲げた。2023年4月1日付で社長に就任した増渕智之(ますぶち ともゆき)氏は「激動の時代にあっても、社会資本形成に貢献するという創業精神のNHイムズや良き企業風土を「継承」しつつ、次の100年に向けて経営基盤を「新化」させていきたい。当社の強みを生かした高付加価値で有望な戦略製品も揃ってきた。さらに、100周年の次を担う人材育成にも取り組むなど、持続的成長に向けた改革や基盤づくりを進めていきたい」としている。経営目標値には2028年3月期の売上高400億円、営業利益22億円、経常利益30.5億円、当期純利益22.7億円、ROE5.0%以上を掲げた。計画期間の前半は将来に向けた研究開発や設備投資を強化して成長の土台を創り、後半に利益水準を回復するとともに、さらなる成長軌道に乗せる方針だ。事業別戦略としては、主力事業の振興軌道強化と戦略事業の強化により、成長基盤を構築する。特にプレキャスト製品事業の拡大を目指す。

5. アナリストの注目点
コンクリート二次製品を含む建設関連業界は、市場成熟感が強く受注競争が激しいうえに、人材難なども収益圧迫要因として懸念されるため、一般的に収益向上に向けた期待感はさほど大きくないと考えられる。ただし、同社の中期経営計画では、高付加価値のプレキャスト製品事業を新たな成長ドライバーと位置付けている。さらに脱炭素型・長寿命化対応コンクリート「e-CON(R)」のプレキャスト事業化など、ESGも意識した新たな事業展開に向けた意欲が窺える。こうした積極的な事業展開により、中長期的に収益拡大が期待できると弊社では評価している。さらに、株主還元策も強化する方針としており、株式市場での注目度の高まりが期待される。

■Key Points
・2025年に創立100周年を迎えるコンクリート二次製品の総合メーカー
・売上面は基礎事業と下水道関連事業が2本柱、利益面は下水道関連事業が柱。次世代に向けた新技術・新製品開発強化
・2023年3月期は増収なるも、受注構成変化などにより減益
・2024年3月期は高付加価値製品拡販などで増収増益を予想し、上振れ余地
・中期経営計画「23-27計画R」を策定。プレキャスト製品事業を拡大し、株主還元を強化

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)

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情報提供元: FISCO
記事名:「 日本ヒューム Research Memo(1):安全・安心、豊かな環境つくりに貢献するコンクリート二次製品総合メーカー