シュッピン<3179>はカメラや高級腕時計など「価値あるもの」に特化したEC(eコマース)企業。中古品と新品のそれぞれのニーズの違いや商品特性の違いを活かし、中古品と新品が相互に作用し合いながら会員基盤の拡大や業績の伸びを実現してきた。最近では、独自のEC買取やOne to One マーケティング、CGMの活用などにも取り組み、プラットフォーム型事業モデルとして進化を続けている。この数年間は、新型コロナウイルスの感染拡大(以下、コロナ禍)により店舗売上が低調に推移したほか、戦略的な在庫投資に取り組んできた「時計事業」については、世界的な価格相場の下落を受けて一時的に落ち込んだものの、主軸である「カメラ事業」はAI活用による新たな機能の導入※などによりECを軸に順調に伸びており、事業モデルの進化という点においては明らかに一段上のステージに入ってきたと言える。
1. 2023年3月期の業績 2023年3月期の業績は、売上高が前期比5.0%増の45,618百万円、営業利益が同21.6%減の2,463百万円と増収減益となったが、売上高は過去最高、営業利益は過去2番目の水準を確保した。主力の「カメラ事業」については、AIを活用したOne to One マーケティングが奏功したことや、カメラメーカー各社からの大型新製品の販売により市場全体が活況を呈したことも手伝って大きく拡大した。ただ、もうひとつの柱である「時計事業」が、中国のロックダウンなど国際情勢等の影響を受けて免税売上(店舗売上)が低調に推移したことに加え、グローバル価格相場の大幅な下落により落ち込んだ。もっとも、足元では「時計事業」も回復傾向にあるようだ。利益面でも、「カメラ事業」が高い売上総利益率を維持した一方、「時計事業」における赤字販売の実施や商品評価損の計上などが利益を圧迫し営業減益となり、営業利益率も5.4%(前期は7.2%)に低下した。活動面では、越境ECの強化やレディースブランドサロン「BRILLER(ブリエ)」のリニューアルオープンなど、将来を見据えた取り組みにおいて一定の成果を残すことができた。