その一方、株式市場及び投資家のなかには、上期決算と会社予想との乖離を受けて計画達成にやや懐疑的な目を向けている向きもあるだろう。しかし、最大のネックである特定案件については、そもそも前述したとおり単純なマンパワーを無限に消費し続けるような性質の問題を抱えているわけではない。念のため余裕を持って、現有メンバーで期末である9月までに完成させるという想定のもと、前倒しでコストを織り込んだ格好のようである。追加ハードないしソフト導入によって問題が解消されるという結論であれば、そうした追加コストが発生する可能性はあろうが、メーカーも巻き込んだ形で問題解決にあたっていることもあり、コストの大部分がこの段階で明確化されたこと自体が逆に先行きの見通しを明るくした部分もあるだろう。また、DELL TECHNOLOGIES製のバックアップ統合製品「DP4400」を中心とした高付加価値レジリエンスソリューション販売については、サイバー攻撃の検知と早期対処を行うEDR(Endpoint Detection and Response)やファイル交換システムによるEmotetコンピュータウイルス対策などをプラスした複合的な商談の流れは引き続き豊富なようだ。加えて、自営のプライベートクラウド基盤を運用しているSaaS事業者においては、経年によるシステム基盤更新の需要が必然的に発生することになる。同社がSaaS事業者向けのシステム構築を拡大し始めてから一定期間が経過し、既存顧客のシステム基盤更新需要が望めるなか、製商品販売の高付加価値化戦略を開始するには適したタイミングが到来している。実際、2023年4月28日付で開示したSaaS用プライベートクラウド基盤の大型案件(約10億円)については、同社が設計・構築したシステムの拡張案件である。特定案件のような技術的にも新しいイレギュラー事象が発生する可能性は低いほか、特定案件に配属されているエンジニア以外の人員が担当することから、人繰りという面からも安心感がある。同大型案件は、もともと下期偏重だった計画をさらに押し上げる要素として、ポジティブなインパクトを与えてくることになるだろう。