a) ビジネス利用の拡大 法人ユーザー向けを対象に開設した「ココナラビジネス」の利用拡大を図るための施策として、テレビCMやタクシー広告による認知度向上を図るとともに、アライアンス戦略によって法人会員の獲得を進めていく。その第1弾として、2022年10月に(株)みずほ銀行と業務提携を発表した。みずほ銀行が抱えるネット法人顧客※に対して、「ココナラビジネス」のサービスを特典付きで利用できることを銀行のサイトを通じて告知したが、実際のところ期待したほどの効果は得られなかった。銀行では他社商材に関する営業を行えないことが一因と同社では考えており、今後は他業種で中小企業の顧客基盤を持つ企業とアライアンスを組むことで、法人会員の獲得を進める方針だ。中小企業ではDXに取り組みたいがIT系の人材が社内にいないため、DXが進まないといったジレンマを抱えている企業が多く、こうした企業に対して「ココナラビジネス」で提供する制作・ビジネス系サービスを提供していく。「ココナラビジネス」の法人会員数は2万社強だが、国内の中小企業は300万社を超えており潜在的な成長余地は大きい。一方、大企業の開拓については直接セールスが有効と考え、「ココナラエージェント」も含めて営業活動を開始している。
b) ユーザビリティの向上 「ココナラ」の利便性向上を目的とした機能拡充については、下期以降も継続的に実施する予定だ。期初段階では「予約管理機能」「サブスクリプション機能」※1「高額取引向け決済機能」※2の導入を計画し、「予約管理機能」についてはリリースしたが、そのほかの機能については適宜、開発の優先順位を見直していることもあり現時点では未定となっている。その代わりの新機能として、ChatGPTを活用した「AIアシスタント機能(β)」を2023年4月にリリースした。こうした新機能の開発によって、マーケットプレイスが活性化し流通高も拡大していくものと予想される。
c) 新規事業の立ち上げ 新たなマッチング手法へのチャレンジとして、ITフリーランス向け業務委託案件の紹介サービス「ココナラエージェント」を2023年1月から開始した。現時点では想定どおりで、順調な立ち上がりとなっているようだ。案件数を獲得するための営業組織も新たに作り、経験者の中途採用を強化する方針となっている。「ココナラエージェント」は「ココナラ」で扱えなかった月次稼働型案件となるため、「ココナラ」会員のIT系フリーランスに対して多様な働き方を提供できることにもなり、競合他社にはない強みとなる。また、月次稼働型案件を利用する法人会員が、単発案件について「ココナラビジネス」を利用する機会が増えることも想定され、2つのサービスを提供することによるシナジーも期待できることになる。同社では「ココナラエージェント」のサービス開始によって、法人会員の拡大だけでなくITフリーランスの登録者を増やすことで、ココナラ経済圏を一段と拡大する戦略だ。また、2023年8月期中にもう1つ新規事業を立ち上げる可能性を会社側では示唆している。同社は検討中のサービスとしては、「ココナラ」の周辺サポートがあり、また将来的には海外進出も見据えている。