*15:04JST 東京通信 Research Memo(4):ヘルステック、ライブコマース、メタバース等、新規事業の展開に注力(2) ■東京通信<7359>の事業概要

(c) 推し活×メッセージアプリ「B4ND」
「B4ND」は、アーティストなどとの双方向のコミュニケーションを実現するメッセージアプリであり、「感謝や応援を、誰にも見られずに、憧れの人へ届けたい。オープンなSNSでなく、ファンだけに直接届けたい」というニーズに応えるものである。1対1のクローズドなコミュニケーション環境で個々のファンの存在を“認知できる”価値を提供することにより、従来のファンクラブという垣根を超えて、ファンとアーティストをダイレクトにつなげるプラットフォームとなることを目指している。アプリ内での課金に加えて、NFT(Non-Fungible Token=非代替性トークン)を活用したデジタルコンテンツの販売なども検討している。個々のファンの存在を“認知できる”という新しいファンコミュニケーションの価値を提供することでファンエンゲージメントを高めながら、それによって得られる収益を最大限、アーティストに還元することで、活動の継続化・永続化を支援していく。

「推し活」という言葉も浸透するなど、ファンの影響力がアーティストの人気や知名度に影響する時代が到来し、ファンエンゲージメントの重要性が高まっている。そうした中で、同社がこれまで培ってきたアーティストとのリレーションやメディアプロデュース経験を活用し、同事業を拡大させていく方針だ。2023年2月にβ版のリリースを行っており、新たな収益基盤として同社業績の拡大に寄与してくることが期待される。

令和4年版の消費者庁の調査によると、 2021年に流行語にもなった「推し活」は近年、SNSの利用によって、応援する人同士のみならず、応援する人と応援される人の繋がりも強くなっており、若者を中心に関連消費が広がっているという(「あなた自身の消費意識や行動について、以下の項目がどの程度当てはまると思いますか。」との問について、「有名人やキャラクター等を応援する活動にお金を使う」を選択し、「とても当てはまる」、「ある程度あてはまる」と回答したのは、20歳代では31.8%)。こうしたなかで、双方向のコミュニケーションを実現できるメッセージングアプリに対してもニーズは堅調に推移することが予想され、事業環境の見通しも明るいと弊社では見ている。

(d) ライブコマースサービス「PCAN Live」
ANAPと共同で、アパレル商品を中心に取り扱うライブコマース「PCAN Live」を手掛けており、インフルエンサーによるアパレル商品のライブ配信という新たな収益源を確立した。今後はANAPの協力の下で他サプライヤーと連携し、複数ブランドを手掛ける方針である。

これらの事業に加えて、新たな取り組みとして、TikTok特化型のマーケティング手法が学べるコミュニティサロン「ULTRA SALON」の提供も開始している。

(3) その他の事業
その他の区分は報告セグメントに含まれない事業セグメントで、投資事業、ソリューションセールス事業、スキルオン事業及び新規事業開発等となっている。さらに、事業ポートフォリオを拡大する取り組みとして、メタバース事業及びデジタルサイネージ事業へも参入している。

メタバース事業においては、METAVERSE A CLUBを2022年6月に設立している。ハイパーカジュアルゲームアプリ及び電話占い「カリス」、ファンビジネスのDX(デジタルトランスフォーメーション)支援を行う「スキルオン」やヘルステックアプリ「OWN.」といった、それぞれのコンテンツのメタバースを構築するビジネスを構想している。具体的には「カジュアルゲームアプリ×メタバース」「占い×メタバース」「アイドル×メタバース」「フィットネス×メタバース」が挙げられる。スマートフォンの枠を越え、メタバースへと変換することによりコンテンツ自体の市場を拡張させながら、より多くの人々へサービスを提供し、同社独自のWeb3.0(分散型インターネットと称される次世代のインターネット)経済圏の確立を目指す。なお、「アイドル×メタバース」構想における新しい商圏獲得の足掛かりとして、2022年5月に(株)オーバースへ出資を行った。この提携により、これまで培ってきたファンビジネスの企画運営ノウハウを活用するとともに、デジタルグッズ販売の運営支援などを手掛ける。また同年8月にはMETAVERSE A CLUBが、数学×AIを活用したソリューション開発を手掛けるArithmer及びニュースメディアなどを運営するNSCホールディングスと、メタバース事業創出に向けた合弁会社アミザを設立した。スマートフォン上における新たなサービスとして、仮想空間で誰もが思い描く「街づくり」ができるプラットフォームの構築を目指している。

デジタルサイネージ事業においては、2022年6月に(株)Digital Vision Industriesを設立している。同社では、インターネット広告事業において、独自のワンタグシステムの提供とAIを活用した効果測定により、国内主要ASPへの一括出稿及び効率的な成果管理を可能にしており、デジタルサイネージ事業への参入は、こうした知見と強みを生かすものである。従来の看板広告を、デジタルサイネージ広告によってリプレイスすることで、「広告効果の数値化」が可能となる。また、AIの活用により、視聴データを分析しながら、Web広告のような細かい設定やターゲットを絞った広告配信も可能となる。これらによって、エリア・属性を絞り込み、ターゲットに合わせてAIが判断し、適切な場所へ広告を配信することで、効率の良い広告配信と効果測定を実現できるという。看板広告をDXするためにデジタルサイネージの活用を進め、この広告枠を集約したデジタルサイネージ特化のアドネットワークの構築を推進する。

投資事業においては、同社の投資先が資金調達を進め、成長が加速する局面にある。2022年6月には、メタバース領域及びWeb3.0領域で事業を展開する(株)Brave groupが、シリーズCとして13.7億円の資金調達を実施し、累計調達額は約23億円に到達した。2022年7月には、法人カード事業を展開する(株)UPSIDERが、シリーズCラウンド エクステンションラウンドにおいて、国内メガバンク系ベンチャーキャピタルから資金調達を実施し、累計調達資金額は約200億円超となった。また、先述のオーバースは2023年春にIEOを予定している。

このほか新事業として、2023年1月に人材サービス「Seekers Port」をリリースし、人材ビジネスへと参入した。同社がこれまで様々なプログラミング言語やミドルウェア(Unity)におけるサービス開発を担ってきたエンジニア人材やゲームを創出するクリエイター人材の知見を基に、雇用創造や人材と企業のマッチングの創出を目指して、まずはデジタル人材を中心とした人材紹介事業を展開することを目的としている。これにより安定した収益基盤の獲得と、デジタル領域における社内外のさらなる発展に向けた人材プールの確立を推進する。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)

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情報提供元: FISCO
記事名:「 東京通信 Research Memo(4):ヘルステック、ライブコマース、メタバース等、新規事業の展開に注力(2)