■要約

TOKAIホールディングス<3167>は、静岡県を地盤にLPガスを中心とした「エネルギー・住生活関連事業」と「情報通信事業」を展開する総合生活インフラ企業である。320万件を超える「顧客力」と多彩な商品・サービスをワンストップで提供する「総合力」、顧客ニーズに即応する「機動力」を強みに、ABCIR+S(アブサーズ)※1戦略を推進しながら、「Total Life Concierge(暮らしの総合サービス)構想※2」の実現を目指している。

※1 ABCIR+S(アブサーズ):同社グループのデジタル技術革新に向けた戦略のこと。AI(A)、Big Data(B)、Cloud(C)、IoT(I)、Robotics(R)、Smart Phone(S)の頭文字をつなげた造語で、関連する新規サービスの創出・育成に注力している。
※2 Total Life Concierge構想:同社グループが提供する様々なサービスにより、顧客の快適な生活を総合的、かつきめ細かくサポートし、顧客満足度の向上を目指すビジョンのこと。


1. 2023年3月期第2四半期累計業績の概要
2023年3月期第2四半期累計の連結業績は、売上高で前年同期比8.4%増の104,110百万円と2期連続で増収、過去最高を更新した。第2四半期末の継続取引顧客件数が3,242千件と前年同期比から117千件増加したことに加えて、エネルギー仕入価格に連動した販売価格の上昇により、エネルギー事業の売上高が同21.9%増と大幅増となったことが主因だ。一方、営業利益は同18.6%減の4,253百万円と減益となった。CATV事業やアクア事業が増益となったものの、LPガスの仕入価格高騰による影響や顧客獲得費用の増加等が減益要因となった。また、営業外でベトナム関連会社に係るのれんの減損損失17億円を計上したことにより、経常利益段階では同54.0%減の2,432百万円と減益幅が大きくなった。会社計画に対しては売上高で11億円、営業利益で7億円程度上振れたものと見られる。なお、同社は2022年9月15日付で不適切な経費使用を理由に、代表取締役及び社長兼最高経営責任者の鴇田氏を解任し、同年12月15日付で特別調査委員会による調査報告書を発表したほか、同23日付で再発防止策及び関係者の処分を発表した。

2. 2023年3月期の業績見通し
2023年3月期の連結業績は、売上高で前期比5.8%増の223,000百万円、営業利益で同8.2%減の14,500百万円と期初計画を据え置いた。売上高はLPガスの販売価格上昇等により計画を上回る可能性が高く、過去最高を更新する見込みだ。一方、利益面ではLPガスの仕入価格上昇によるマイナス影響額が当初計画の51億円から60億円程度に膨らみそうなことから、計画並みに着地するものと予想される。継続取引顧客件数については前期末比102千件増の3,295千件を計画していたが、情報通信事業やCATV事業において第2四半期まで想定を上回るペースで進捗していることから計画を上回る可能性が高い。

3. 中期経営計画の進捗について
2021年5月に発表した中期経営計画「Innovation Plan 2024 “Design the Future Life”」では、2022年3月期から2025年3月期までの4年間を「Life Designの実現に向けた基盤を造るステージ」と位置付け、経営数値目標として2025年3月期に売上高2,450億円、営業利益186億円、継続取引顧客件数356万件を掲げ、その達成に向け取り組んでいる。前半の2年間で先行投資を積極的に行い、後半の2年間で利益成長を加速する戦略だ。計画2年目となる2023年3月期は、エネルギー価格上昇の影響によりいったん減益となるが、経営環境が厳しくなっているLPガス業界においてシェアを拡大する好機になると考えられる。2024年3月期以降は成長投資の効果が顕在化し、増益基調に転じる見通しだ。新規ビジネスの創出を視野に入れたM&Aやアライアンスについても検討を進めており、今後の動向が注目される。

■Key Points
・2023年3月期第2四半期累計業績は減益となるも、売上高は過去最高を更新
・2023年3月期業績は売上高、営業利益で会社計画を達成見込み。顧客件数は、情報通信事業、CATV事業において想定を上回るペースで増加していることから、上振れの公算大
・中期経営計画の重点戦略を推進し、2024年3月期以降に利益成長を加速
・配当性向は40~50%を目安に実施、自己株式の取得も機動的に実施する方針

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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情報提供元: FISCO
記事名:「 TOKAI Research Memo(1):逆風下でLPガス事業はシェア拡大の好機となる可能性