■マイクロアド<9553>の会社概要

・自動車業界向け「IGNITION」
同プロダクトは、自動車業界に特化したマーケティングデータプラットフォームである。自動車専門メディアからの膨大なサイト閲覧データと「IGNITION」独自のAI分析を組み合わせることによって、来店につながる可能性が高い潜在顧客層を獲得することを可能にしている。具体的には、複数の自動車専門メディアや趣味に関するメディアのデータからユーザー毎の自動車購買可能性をスコア化し、購買までのユーザー行動を購買プロセスとしてモデル化している。そのうえで、購買可能性を基にした広告配信を実行することによって検討者数の最大化を実現している。大量のデータベースに加えて、購買プロセスのモデル化による的確なターゲティングと広告配信がユーザーに与えた影響を可視化して比較できる点も特徴だ。これらの機能によって、顧客が抱える「購買を予定している層に配信したい」「自動車関心層よりも細かいターゲティングをしたい」「来店しても成約につながる顧客が少ない」といった課題を解決している。

・飲料食品業界向け「Pantry」
同プロダクトは、飲料・食品業界に特化したマーケティングプラットフォームである。実店舗でのクレジットカード等の決済データや、各種ポイントサービスの履歴データを活用し、オフラインの実店舗での購買活動を基にした、オンライン上でのマーケティングを実現している。消費者が定常的に購入している飲料・食品ブランドを分析することで、ブランドスイッチを促すマーケティングをオンライン上で実現するなど、オフラインでの購買傾向を基にしたデジタルマーケティングを可能にしている。また、実施したデジタルマーケティングの効果が実店舗での製品売上にどれだけ寄与したのかを、購買データを基に分析することで、その広告効果を可視化するレポーティングも行っている。これらの機能によって、顧客が抱える「リアルな消費行動を元にしたマーケティングを行いたい」「デジタルマーケティング施策が売上にどの程度効果があったか把握したい」といった課題を解決している。

これらの業界特化型のプロダクトを提供している「UNIVERSE」の稼働アカウント数は、好調に推移している。2022年9月期第3四半期の累計稼働アカウント数は、前年同期比52.0%増の1,144件と急伸している。同社は主要KPIとして稼働アカウント数を設定している。各業界に特化することよって、より的確なデータ分析を可能にしている同社プロダクトに対する顧客ニーズは今後も高まることが予想され、稼働アカウント数は順調に推移すると弊社は推察する。また、業界に特化するということは業界特徴に合わせたデータを効率的に分析できるということに加えて、顧客企業のKPIを深く理解することにもつながる。KPIを理解していることにより、データから抽出したインサイトを適切にKPIと関連付けながら顧客に提案できるという点も魅力だと弊社は考える。顧客企業のKPIに対する深い理解とそれに基づく提案は、同社の長い事業活動の歴史に裏打ちされたものである。この意味で模倣困難性が高く、同社の競争優位になっていると言えるだろう。

「UNIVERSE」の収益モデルは従量課金型であり、顧客がマーケティング活動を行う度に同社に支払われる広告費とデータ費が売上として計上される仕組みになっている。

b) 「国内コンサルティングサービス」
同サービスは、メディア企業向け広告収益最大化サービスである「MicroAd COMPASS」と、Webメディアにおける総合的な収益化支援を目的とした子会社「Enhance」から構成される。

・「MicroAd COMPASS」
同プロダクトは、インターネット広告を掲載する媒体社向け広告収益最大化サービスとして提供されている。RTBによるオークションによってリアルタイムで最も収益が見込める広告を瞬時に選択し、顧客の広告収益最大化に貢献している。その他、無償で利用できる豊富なアドサーバー機能、マルチデバイスへの対応、ブランド価値を守る柔軟な掲載可否設定などの特徴を有している。2022年2月時点で累計2,100を超えるインターネットメディアに導入されており、RTBを通じて多くのDSPと接続している。収益モデルとしては、メディア企業へ支払われる広告費の一部をプラットフォーム利用料として徴収している格好だ。

・「Enhance」
連結子会社である、株式会社エンハンスがサービス提供を行っている。主にメディア企業の広告収益拡大に向けたコンサルティングサービスを提供し、各メディアの広告枠の運用を預かる形で、様々な広告サービスを組み合合わせることで収益の最大化を実現し、コンサルティングフィーの形で収益をあげている。

(2) デジタルサイネージサービス
連結子会社である、株式会社マイクロアドデジタルサイネージが、広告主・ロケーションオーナーの双方をターゲットに「MONOLITHS」の提供を行っている。ロケーションオーナーは自社が保有するデジタルサイネージを一括で管理できるCMSとして「MONOLITHS」を活用することができる。デジタルサイネージに掲出するコンテンツをリアルタイムでWebブラウザを通じて管理することが可能になる。また、管理画面より広告枠を設定し、その広告枠をアドネットワークの広告在庫として提供することもできる。一方、広告主は「MONOLITHS」を使用することによって「渋谷エリア×土日×夕方」のような細かいセグメント分けで広告枠を買い付けることが可能になる。また、天気やSNSなどの外部データを配信に反映させることも可能だ。同社のデジタルサイネージは、2022年3月時点で屋外大型ビジョン、ドラッグストア、スーパーマーケット、美容サロン、タクシーなどの多様なロケーションに13万面超が設置されている。同社は広告主及び広告代理店がロケーションオーナーに支払う広告費の一部をプラットフォーム利用料として徴収している。また、ロケーションオーナーからのCMS利用料も収益となる仕組みだ。

(3) 海外コンサルティングサービス
海外を拠点に顧客企業のデジタルマーケティングをメディアの買付からクリエイティブ制作までワンストップで支援している。特に台湾においては、独自のネイティブ向け広告プラットフォーム「COMPASS-FIT」、訪日インバウンドWebメディアの「Japaholic」とのタイアップ広告などのサービスを提供している。これらのサービスは差別化ポイントになることに加えて、利益率も高いことから今後も注力していく方針だ。なお、中国とベトナムにおいては2022年9月期中に法人及び事業売却を完了させている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)

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情報提供元: FISCO
記事名:「 マイクロアド Research Memo(3):顧客企業のデジタルマーケティングの課題を解決(2)