■井関農機<6310>の中長期の成長戦略

4. 収益性改善
天候不順などの外部環境の影響に関わらず、安定して収益をあげるための構造改革を実施することで、2025年までに営業利益率を5%に高めることを目指す。

具体的には各生産工場で重複していた機能などの統合による固定費率の改善、内外作区分の見直しを実施し一部部品の外注による工数削減の実現、IT導入による事業活動の効率化、棚卸資産の削減による資産効率の改善などによって営業利益率5%、ROE8%、営業キャッシュフロー600億円(5年累計)を実現していきたい考えだ。

5. ESG
4つ目の取り組みはESGを念頭に事業を行っていくことだ。新中期経営計画を策定した同社は、国内製造所の生産活動から排出されるCO2を2030年までに2013年度比で26%削減すること(2019年削減率は目標9%に対して実績が12%と目標を上回った)、国内売上高におけるエコ商品比率を2030年までに50%以上に高めることを目標として設定していたが、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同したことを受けて、さらなる環境経営の推進を実施している。具体的には、グローバル生産拠点における生産活動から排出されるCO2を2030年までに2014年比で46%削減すること、国内売上高に占めるエコ商品比率を2025年までに65%まで高めることを計画している。環境経営の推進に加えて、事業を通じて「農業の強靭化を応援」「住みよい村や街の景観整備」「循環型社会を目指す環境保全」という3つの面からSDGsの実現に貢献する考えだ。

また社内活動においても、ワークライフバランスの充実やダイバーシティの確保などによって従業員のエンゲージメントを高めることを目標としている。

ESG投資は近年、頻発する自然災害、サプライチェーンにおける人権問題などを受け、機関投資家や個人投資家の間で急速に広まっている。こうした中、ESGを考慮しない企業活動を行っている企業は今後資金を調達することがますます難しくなると弊社は予想する。そういった意味でESGを念頭に事業活動を行っていくことは重要であると言えるだろう。

大型フラッグシップモデルであるJapanシリーズ販売活動への注力、サブスクサービスの市場投入、本社購買部機能の拡充など既に2021年12月期から新中期経営計画の下に具体的な活動が実施されており、2022年12月期以降はこういった活動がさらに加速することが予想される。

6. 新中期経営計画の進捗状況
2022年12月期第2四半期においても新中期経営計画は着実に進捗している。国内市場では、大規模顧客拡大に向けてジャパンシリーズの拡販に注力している。また、ベンチャー企業との協業によって有機農業促進に向けた取り組みを開始した点も見逃せない。スマート農機も順調に販売が進んでいる。一例を挙げると、田植機の8条クラスに関しては、直進アシスト機能を搭載したものが売上の6割を超えた。また、トラクタの中型クラスであるNT、NTAにも直進アシストに対応したモデルを投入している。北米では、AGCO社向けに20馬力前後の製品を投入し、コストダウン機の販売を加速させている。受注残に占める割合も大きく、市場の評価は好評だ。また、製品のモデルチェンジ毎に全社的な水準をしっかりと遵守させることによって、収益性も向上しており、今後も新中期経営計画の着実な実行による業績の拡大と企業価値の向上が期待される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)

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情報提供元: FISCO
記事名:「 井関農 Research Memo(8):「変革」をキーワードにさらなる100年企業を目指す(2)