■今後の見通し

(5) 脱炭素社会に向けた取り組み
日本では2030年度の新たな温室効果ガス排出削減目標として、2013年度から46%削減することを目指し、さらに50%の高みに向けて挑戦を続ける新たな方針が示された。弊社では、日本政府が掲げる2050年までのカーボンニュートラルを実現する手段として、日本ヒューム<5262>の再生可能エネルギー向け部材や環境製品への取り組み等に注目している。

a) 再生可能エネルギーへの取り組み
同社は長崎県五島市沖に設置された浮体式洋上風力発電設備「はえんかぜ」の浮体部にリング状のプレキャスト部材を提供している。洋上風力発電の方式は、海底に風車を固定する「着床式」と、洋上に浮かんだ浮体構造物を利用する「浮体式」に分けられる。現在、世界で運用されている洋上風力発電の99%以上が着床式と言われている。着床式のほとんどは水深50メートル以下の海域に設置されていることや、地震多発地帯で海底地形が複雑である日本では、設置場所ごとに個別設計が必要となる着床式が採用されることは難しいと見られる。弊社では、日本においてさらに再生可能エネルギーを増やすための国の資金援助や支援策等から、浮体式洋上風力発電設備は増えていくと見ており、同社のコンクリート製品の新たな需要先となることを期待している。

b) 環境製品への取り組み
日本政府によるカーボンニュートラル宣言以前より、同社では環境に配慮した脱炭素製品「e-CON(R)」を提供している。

「e-CON(R)」とは、東京都下水道サービス(株)と共同で開発したセメントを使わないコンクリート材料である。「e-CON(R)」の主成分である高炉スラグ微粉末の潜在水硬性、フライアッシュのポゾラン反応により、セメントと同様に安定な水和物(C-S-H)を生成することで固まる仕組みになっている。

「e-CON(R)」の特性は、以下のとおりである。
・CO2排出量を80%減
「e-CON(R)」は、産業副産物を活用することにより地球温暖化対策として有効である。セメントレス化によるエコロジカルな製品であるため、CO2等の温室効果ガスの排出量を抑制し、地球環境の保全に貢献できる。
・耐硫酸性
耐用年数が100年を有する高耐久性の下水道管が要望されるなかで、「e-CON(R)」は、優れた耐硫酸性によって新しい時代のニーズとライフサイクルコストの低減に応えることができる。
・耐塩害性
塩分が浸透しにくい緻密な硬化体組織のため耐塩害性が高く、海洋構造物等に適している。

「e-CON(R)」の対応可能製品は、RCセグメント、ヒューム管、ボックスカルバート、マンホール、壁高欄等である。弊社では、CO2排出量の大幅削減と産業副産物の活用によるゼロエミッションに貢献するカーボンニュートラル時代の新しいコンクリート材料として需要拡大を期待している。

c) 合弁会社コンフロンティア(株)の設立
2022年2月15日、同社とNJSは合弁会社コンフロンティアを設立した(出資割合:同社50%、NJS 50%)。「社会基盤の整備に参加し、豊かな人間環境づくりに貢献する」メーカーとしての同社と「水と環境のサービスを通じて、豊かで安全な社会を創造する」技術コンサルタントとしてのNJSの知見を融合し、つまりハードとソフトのハイブリッド型でインフラの課題解決に取り組んでいく考えである。

コンフロンティアの主な事業内容は、以下のとおりである。
・脱炭素マテリアル事業
脱炭素社会を推進する資材の開発と関連するサービスを提供する。特に低炭素コンクリート、CO2吸収建設資材及びCO2分離利用技術の開発と事業化を推進する。
・再生可能エネルギー事業
再生可能エネルギーの導入促進、地域のエネルギー自給率の向上、災害時のエネルギー供給等を目的とし、エネルギー関連のサービスを提供する。特に、公共施設やインフラに関連した再生可能エネルギーの導入を推進する。
・インフラソリューション事業
インフラのライフサイクルを通したトータルソリューションを提供する。特にインフラの長寿命化対策、循環型社会に対応した資源再利用及びスマートインフラ(DX)による情報活用を推進する。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 藤田 要)


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情報提供元: FISCO
記事名:「 日本ヒューム Research Memo(7):社会課題の解決に貢献することで、持続的な成長を目指す(2)