■業績動向

2. 事業セグメント別動向
(1) クリエイティブ分野(日本)
クリエイティブ分野(日本)の売上高(社内取引含む、以下同様)は前期比13.1%増の29,486百万円、営業利益は同39.6%増の2,478百万円と過去最高を大きく更新した。主力のゲーム、Web分野が好調に推移したほか、「漫画LABO」で制作されたオリジナル作品でヒット作が相次いで生まれ、電子書籍分野の収益が大きく伸長したこと、建築分野を中心に新規エージェンシー事業も着実に成長し、収益が改善したことなどが要因だ。

分野別業績の前期比伸び率をクリーク・アンド・リバー社<4763>が開示している構成比から試算すると、映像(テレビ、映画)分野は13.1%増収、0.3%減益となった。増収分の約4割は2020年8月に連結子会社化した(株)ウイング※の業績がフル寄与したことによるものだが、既存事業ベースでも同社で手掛けるテレビのレギュラー番組などが堅調に推移し増収となった。一方で利益が伸び悩んだ要因は、東京オリンピック・パラリンピックの開催により、手掛けていたレギュラー番組がなくなったことや、請負案件で一部不採算案件が発生したことによる。

※ウイングはNHK及び関連会社の番組制作・編集部門へのスタッフ派遣、並びに気象キャスターの派遣を行っており、年間売上高は約7億円、営業利益も若干の黒字を計上している。のれんは70百万円で5年定額償却となっている。


ゲーム分野は16.4%増収、13.9%増益となった。新作ゲームの旺盛な開発需要を背景に、同社及び子会社の(株)クレイテックワークスともに受託開発案件が好調に推移した。Web分野(紙媒体含む)は8.9%増収、24.7%増益となった。受託開発案件が好調に推移したほか、前期にコロナ禍で落ち込んでいたアウトソーシング事業(求人情報サイトやグルメ情報サイト運営会社からのサイト掲載記事の作成・編集・撮影業務の受託)も回復に転じたことが要因だ。

電子書籍・YouTube等分野は13.1%増収、24.7%増益となった。電子書籍については、Amazon Kindle等の電子書店向け配信数やダウンロード数が順調に拡大したほか、「漫画LABO」で制作されたオリジナル作品でベストセラー作品が生まれたことも増益要因となった。「漫画LABO」の売上高は約3億円と小さいものの、営業利益率は6割程度と高く、増益に貢献した。「漫画LABO」のビジネスモデルは、電子書籍の販売額からプラットフォーマーに支払う手数料を差し引いた金額が売上高となり、ここから作家等に制作料を支払い、残った部分が営業利益となる。また、YouTube関連ではクリエイターによりアップロードされた動画の月間総再生回数が7.4億回(チャンネル数は300)まで増加したが、競争激化により成長率はやや鈍化した。このため、ゲーム実況分野や企業チャンネルの運営受託等に注力している。

新規エージェンシー・その他分野(建築、シェフ、コンピュータサイエンス、ライフサイエンス、アグリカルチャー、CXO、アスリート、舞台芸術、VR等)の売上高は41.4%増と大きく伸長し、営業損失も前期から2億円弱縮小したものと見られる。なかでも売上規模の大きい建築分野に関しては、一級建築士の紹介及びBIM技術者の派遣が堅調に推移したほか、設計・建築の受託案件が順調に拡大し増収に寄与した。新たな取り組みとなるVR建築展示場「XR EXPO(R)」※も2021年12月にオープンした。リアル展示場と比較して30分の1以下の費用でモデルハウスを構築できるため、建築士や工務店の出展が容易なほか、住宅購入者もVRゴーグルを使って外観、内装などをリアル展示場と同じ感覚で確認することができるため、注文住宅の商談における次世代プラットフォームとして今後の成長が期待される。

※中小企業庁の「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ビジネスモデル構築型)」に採択され、補助金によって開発資金や広告費用などを賄っている。


そのほか、AI等のコンピュータサイエンスの技術者や博士、ライフサイエンスの研究開発者及び研究補助者、企業における業務や機能の最高責任者、シェフ等のエージェンシー事業等を展開し、今後の成長に向けた取り組みを推進した。また、XR (VR/AR/MR)分野に関しては、2020年4月に販売を開始した教育・研修用VRソリューション「ファストVR」の導入が進んでいるほか、子会社の(株)VR Japanとの連携による「低遅延VRリアルタイム配信システム」や、「医療機関向けVR遠隔同時講義システム」の販売を2022年1月から開始している(販売はVR Japan)。

(2) クリエイティブ分野(韓国)
クリエイティブ分野(韓国)の売上高は前期比6.1%増の3,469百万円、営業利益は0百万円(前期は49百万円の損失)と若干ながらも黒字に転換した。売上高はテレビ局向け派遣事業が伸び悩んだものの、デジタルコミック(Webtoon)やYouTube等のライツマネジメント事業が伸長した。利益面では、不採算だったゲームソフトのライツマネジメント事業を2021年2月期に終息させたことや、デジタルコミック、YouTube関連の増収効果により増益となった。なお、デジタルコミックの版権取得費用の計上方法について、従来は予定配信期間で按分計上していたが、取得時に一括費用計上する方法に変更しており、この影響で第4四半期は9百万円の営業損失となっている。

(3) 医療分野
医療分野では、子会社の(株)メディカル・プリンシプル社(出資比率100.0%)で「民間医局」ブランドによる医師紹介事業を中心に、医学生・研修医を対象とした合同説明会「レジナビFair」や「レジナビFairオンライン」、臨床研修情報サイト「レジナビ」、若手医師向け情報収集サイト「民間医局コネクト」等のサービスを提供している。また、2021年6月には介護事業を含む効果的な地域医療周辺サービス事業を展開すべく、孫会社として(株)コミュニティ・メディカル・イノベーション(出資比率100.0%)を新設した。

2022年2月期の売上高は前期比12.3%増の4,407百万円、営業利益は同20.1%増の869百万円と2期ぶりに過去最高を更新した。医師紹介事業が、全国各地での慢性的な医師不足に加えて自治体や企業、医療機関向けに新型コロナワクチン接種のための医師紹介案件が増加したこともあり好調に推移した。また、イベント事業の「レジナビFair」は前期に続いてリアルの開催ができなかったものの、代替手段として「レジナビFairオンライン」を開催し、若干の増益要因となった。一方、新規事業であるクリニック経営支援サービスについては2件を手掛けたものの、売上寄与は小さく若干の損失を計上した。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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情報提供元: FISCO
記事名:「 C&R社 Research Memo(5):クリエイティブ分野と医療分野が2ケタ増収増益(1)