a) 食道がん(放射線との併用療法) 食道がんを対象とした放射線併用療法による第2相臨床試験は、外科手術による切除や根治的化学放射線療法(放射線と抗がん剤を用いた治療法)が困難な患者を対象に行われ、ヒストリカルデータ(日本食道学会による放射線単独療法)との比較により有効性と安全性を確認する。予定症例数37例のうち、2022年2月時点で過半数の組入れを完了しており、今後も順調に組入れが進めば同社が目標とする2024年の国内承認申請は可能と見られる。先駆け審査指定制度※1の対象品目に指定されているため、早期審査により申請後1年以内に承認される可能性がある。同社は承認申請までに、「オーファンドラッグ※2指定」と販売パートナーとの提携実現を目指していく。
b) 食道がん(化学放射線療法との併用療法) 同社は2020年6月に米国の主要ながん研究グループであるNRGオンコロジーとの間で、食道がん患者を対象とした医師主導の第1相臨床試験を実施する契約を締結した。臨床試験の内容は、標準治療法である化学放射線療法を行いながらテロメライシンを隔週に3回投与し、安全性の確認と3ヶ月後の腫瘍の縮小効果を確認するというもの。完全奏効率が標準治療法を上回れば、次の開発ステージに進む可能性が高くなる(化学放射線療法単独で約50%程度)。また、3年後のがん再発率が既存療法より低ければ、食道がんにおいて外科手術以外の標準治療法候補となる可能性がある。予定症例数は15例(最大で21例)で2021年12月に第1例目の投与が開始された。コロナ禍の影響で開始時期が遅れたこともあり、組入れ推進のため治験施設を増やしていく予定となっている。食道がんを対象とするテロメライシンは、米国FDA(食品医薬品局)よりオーファンドラッグ指定を受けており、補助金支給や臨床研究費用の税額控除といった優遇措置が今後受けられるほか、販売承認された場合は7年間の販売独占権が得られることになっている。
c) 進行性または転移性固形がん(免疫チェックポイント阻害剤との併用療法) 食道がんを中心とした進行性または転移性固形がんでステージ4の患者を対象に、抗PD-1抗体であるペムブロリズマブ(開発:米メルク、商品名:キイトルーダ)との併用療法による医師主導の第1相臨床試験が国立がん研究センター東病院等で進められ、2021年に予定していた22例の組み入れが完了した。同治験はテロメライシンによる局所療法で腫瘍を縮小させ、患者のQOLを高めることで免疫チェックポイント阻害剤の治療効果をさらに高め、患者の生存期間を延伸することが可能かどうかを確認する試験である。