■今後の見通し

3. プライム市場の上場維持基準適合に向けた取り組み
(1) 上場維持基準の適合に向けた基本方針
2022年4月に予定されている東京証券取引所の市場区分見直しにおいて、インテリックス<8940>はプライム市場を選択した。移行基準日(2021年6月30日)におけるプライム市場の上場維持基準に対する適合状況については、流通株式数、流通株式比率、1日平均売買代金でクリアしたものの、流通株式時価総額が35.93億円と基準の100億円を下回る状況となっている。このため、同社は上場維持基準を充足するための計画書(2027年5月期までを計画期間と定める)を2021年12月に東証に提出している。

流通株式時価総額100億円に向けた基本方針として、同社は以下の3点を掲げている。

a) 新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書及び中期経営計画に沿った業績向上
「新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書」に沿った「中期経営計画」を2022年7月に公表する予定にしている。同計画では既存事業に不動産市況に影響を受けにくい新たな事業領域を加えることで、安定した事業ポートフォリオを構築し、収益の持続的成長を目指していく。定量的な数値目標としては、2027年5月期に経常利益で32億円、親会社株主に帰属する当期純利益で22億円、純資産で175億円を設定した。2021年5月期実績と比較すると、経常利益で1.7倍、親会社株主に帰属する当期純利益と純資産で2倍となる。

リースバック事業やアセットシェアリング事業等のソリューション事業分野で安定した収益基盤を構築し、リノベーション事業分野を成長ドライバーとして収益成長を図っていく考えだ。リノベーション事業分野における成長戦略としては、2021年に販売を開始した省エネリノベーション「ECOCUBE」の普及・拡販を積極的に推進していくことで競合他社との差別化を図り、大幅な収益成長を目指していく。

収益目標が達成されれば、流通株式時価総額で100億円をクリアする可能性も高くなる。同社の2021年5月期までの過去5期間の平均予想PER9.0倍を前提とすれば、2027年5月期の親会社株主に帰属する当期純利益で換算した流通株式時価総額は102億円となるためだ※1。また、PBR(1株当たり純資産倍率)で見た場合、現状は0.45倍と解散価値を下回る評価となっており、東証1部の不動産セクター平均が1.2倍となっているほか、リノベーションマンションを手掛け売上高はほぼ同規模水準にあるスター・マイカ・ホールディングス<2975>が1.1倍程度であることを考えると評価不足は否めない。この要因として、ここ数年の業績がリノベーションマンション市場の競争激化によって伸び悩んでいたことが一因と弊社では考えている。2027年5月期に純資産が175億円まで拡大し、PBRで1.1倍程度に評価されれば流通株式時価総額で99億円となる※2。いずれにしても業績を成長ステージに再び乗せていくことが、現在割安に評価されているPERやPBRの水準訂正につながるものと弊社では考えている。

※1 9.0倍×22億円×51.6%=102億円。2021年12月時点の東証1部の不動産セクター平均PER16.3倍まで評価されれば185億円となる。
※2 1.1倍×175億円×51.6%=99億円。2021年12月時点の東証1部の不動産セクター平均PBR1.2倍まで評価されれば108億円となる。


b) コーポレートガバナンスの充実
同社は持続的な成長と中長期的な企業価値向上のために、コーポレートガバナンスの強化を経営の重要課題として位置付けている。特に、2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードにおいて、プライム市場に適用される原則を中心に、適用に向けて積極的に取り組んでいく方針だ。

c) IR活動の強化
同社は2023年5月期からスタートする5カ年の中期経営計画発表を皮切りに、積極的なIR情報の発信、中長期的視点で投資家とのコミュニケーションを図ることで、同社に対する認知・理解・賛同・投資機会を促していく。また、機関投資家向けだけでなく、個人投資家向け説明会の開催やメディア露出等の各種IR施策を積極展開していくほか、サステナブルな社会づくりに貢献する企業としての認知度を高めてESG投資家へ訴求していく考えだ。

(2) 省エネリノベーション「ECOCUBE」
今後の収益成長を実現していくため、省エネリノベーション「ECOCUBE」による差別化・高付加価値化戦略を強力に推進していく方針を打ち出している。「ECOCUBE」は室内の温熱計算に基づいて断熱性・気密性を高め、高性能な換気・熱交換器を採用した空調システムを設置することで、住む人の健康や省エネルギー化による経済メリットを実現した商品となる。2011年から開発販売を行い、改良を重ねて2021年7月に再リリースした。「温熱計算+断熱材+高性能内窓+熱交換式第一種換気」を標準仕様とし、既存住宅のリノベーションに「省エネルギー」という付加価値を加えたものとなり、政府が目指す脱炭素社会の実現にも貢献する商品となる。

同社が販売するリノヴェックスマンションの平均面積70m2弱の場合、冷暖房機器の消費電力は従来比で1/4程度に削減可能となり、電力料金で換算すると年間10万円の削減効果につながると同社では試算している。販売価格はシステムの構成によって変わるが、通常のリノヴェックスマンションよりも200~300万円程度高くなる。ただ、省エネ型のリノベーション住宅に関しては国の補助金制度※を活用できることや、電力料金の削減効果が見込めること、健康にもプラスの効果を与えることなどから、価格差分を付加価値として購入者に訴求できるかどうかがポイントとなる。「ECOCUBE」の拡販が進めば、リノヴェックスマンションの平均販売単価並びに売上総利益率の上昇に寄与するものと同社では見ている。

※経済産業省が推進する次世代省エネ建材支援事業のなかで、「省エネルギー投資促進に向けた支援補助金」制度を設けている。高性能断熱材や二重窓など補助対象製品を用いたリノベーション費用については、その1/2以内、集合住宅の場合は上限125万円まで補助金で賄うことができる。環境省でも同様の補助金制度有り。


2022年5月期の販売目標は200件(業績計画には織り込まず)としており、2022年1月15日時点の進捗状況は施工件数で96件、販売件数で13件となっている。同社では「ECOCUBE」の普及・拡販を進めていくため、今後ブランディング戦略(テレビCM含む)を積極的に展開して認知度向上を図っていくほか、販売面ではアライアンスやM&Aを含めた展開を推進していく予定にしている。2021年12月には、リノベーション協議会が主催する「リノベーション・オフ・ザ・イヤー2021」において、特別賞(省エネリノベーション普及貢献賞)を受賞するなど、認知度も徐々に広がりつつあり、今後の展開が注目される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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情報提供元: FISCO
記事名:「 インテリックス Research Memo(9):省エネリノベーション「ECOCUBE」を差別化商品として拡販(1)