■今後の見通し

1. 2022年10月期の業績見通し
システムディ<3804>の2022年10月期の連結業績は売上高で前期比12.8%増の4,332百万円、営業利益で同10.4%増の892百万円、経常利益で同10.3%増の892百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同2.0%増の584百万円となる見通しだ。コロナ禍が続くなかでもトップシェアを維持すべく、攻めの営業で新規顧客を獲得してさらなるシェア拡大に取り組んでいく方針だ。

売上高については薬局ソリューション事業をのぞくすべての事業で2ケタ増収を見込んでいる。新規顧客の増加に伴う導入支援売上の伸長によりストック収益の売上比率は若干低下するものの50%程度を見込んでいる。また、営業利益率についても顧客獲得のための営業費用増を織り込み、前期比で若干低下するが同社がKPIとする20%台を維持する計画となっている。親会社株主に帰属する当期純利益の増益率が1ケタ台にとどまるのは、役員退職慰労金等の計上による実効税率の上昇を見込んでいることによる。

なお、2022年10月期は公教育ソリューション事業や公会計ソリューション事業において2022年3月から4月にかけて新規案件の導入が集中するため、上期偏重型の業績を見込んでいる。下期の利益が前年同期比で落ち込む計算となるが、コロナ禍が続いていることもあり保守的な計画になっているものと思われる。営業費用以外で特段の費用増は見込んでおらず、上期が計画どおり進捗すれば、通期で上振れする可能性もあると弊社では見ている。なお、2022年4月の新卒社員数は例年並みの18~19名を予定している。


学園ソリューション、ウェルネスソリューションを含めて主力事業は2ケタ増収を見込む
2. 事業部門別の成長戦略
(1) 学園ソリューション事業
学園ソリューション事業は前期比15%程度の増収を見込んでいる。前期から期ずれしていたカスタマイズ案件が売上に貢献するほか、次世代学園総合情報システム「CampusPlan Smart」による既存顧客のリプレイスや、「キャンパスプラン for Azure」の新規顧客獲得に注力していく。特に大学では会計制度の変更によって2015年前後にシステム改修・更新の特需が発生しており、この部分の更新需要が2022年頃まで発生すると見られており、他社製品をリプレイスする好機となる。

「キャンパスプラン」の大きな特長は、学務系業務や法人系業務などをトータルで提供できる点にある。この“トータルソリューションの提供”という点では直接的な競合製品はない。同社が業界トップシェアの地位を確立した要因もここにある。領域ごと(例えば会計・経理や人事、学務などの領域)では強い競合製品がそれぞれ複数存在するが、違う企業のソフトウェア製品を導入している場合はシステム操作に慣れるまで時間を要するといった課題がある。すべての業務システムを同一製品で網羅することができれば、職員が他部署に異動となった場合でもスムーズにシステムを操作でき、業務効率の向上にもつながる。「CampusPlan Smart」では現在、総務・人事給与システムを先行してリリースしたが、2023年までに学務系システムも含めてすべての機能をカバーする予定で、既存製品との連携にも対応しているため、顧客側から見れば契約更新時期にスムーズにリプレイスすることができる。

一方、私立高校は全国に約1,300校、専門学校は約2,900校あり、そのうち同社製品は約150校に導入されていると見られる。導入シェアで見ると数%とわずかだが、逆にシェア拡大余地が大きいと見ることもできる。私立高校・専門学校の1校当たり生徒数※は、高校で約770名、専門学校で約220名と、大学の約3,500名と比べて規模が小さいため、初期投資負担の少ないクラウドサービス「キャンパスプラン for Azure」で機能性やコストパフォーマンスを訴求し、顧客開拓を進めていく戦略だ。1校当たりの売上規模は大学と比べて小さくなるものの、導入校数を伸ばしていくことができれば、中長期的に安定収益基盤として収益貢献していくものと期待される。

※文部科学省「令和3年度学校基本調査」のデータを基に算出。


(2) ウェルネスソリューション事業
ウェルネスソリューション事業については前期比10%の増収を見込んでいる。コロナ禍でフィットネスクラブ事業者の経営悪化が続くなかで会員管理システム「Hello EX」についても不透明な状況が続く見通しだが、パーソナルジムなど小規模事業者をターゲットとしたクラウド型会員管理・会費回収システム「Smart Hello」の伸長を見込んでいるほか、文化・観光施設向け運営管理システム「Hello Fun」についても機能強化を図ることで、下期からの顧客獲得を見込んでいる。

「Smart Hello」については、月額料金プランが1万円~3万円と低コストで、タブレット端末での利用も想定した操作性や機能を備えていること、様々な会費制度に対応できる柔軟性に優れていることなどが特徴となっており、パーソナルジムを中心に引き合いが増加しており、今後も積極的に営業活動を進めていく方針となっている。

(3) 公教育ソリューション事業
公教育ソリューション事業は前期比10%超の増収を見込んでいる。前述したとおり、高校向けで2022年4月より北海道、愛知県、新潟県の約500校で稼働開始が予定されており、1校当たり月平均2万円としても70百万円程度の増収要因となる計算で、増収要因の大半はこれら新規導入校分の寄与となる。一方、小中学校向けに関しては導入自治体数が若干の増加にとどまる見込みで、売上高も微増収となる見通しだ。

(4) 公会計ソリューション事業
公会計ソリューション事業は前期比10%超の増収を見込んでいる。前述したとおり、業界2番手の国策による競合製品が2022年度末でサービスを終了することを発表しており、同製品のユーザーからの最終の切り替え需要が発生することになる。リプレイスを終えてない自治体のなかには大規模自治体も多く、1案件あたりの受注額も大型化している。こうした案件が第2四半期の売上に寄与するものと弊社では見ており、2022年10月期は5期ぶりに過去最高売上(2017年10月期677百万円)を更新する可能性がある。

(5) ソフトエンジニアリング事業
ソフトエンジニアリング事業は前期比10%超の増収を見込んでいる。コンプライアンスやコーポレートガバナンスの強化に取り組む動きが、一般企業だけでなく金融機関、学校法人などにも広がっており、積極的に営業活動を展開していくことで拡販を進めていく。特に、学校法人では不祥事等の防止に向けコンプライアンスの強化に向けた取り組みが一段と進む可能性があり、顧客開拓の好機になると見ている。

(6) 薬局ソリューション事業
調剤薬局業界は、大手チェーンと個人経営の小規模薬局に大きく二分された業界構造となっている。コロナ禍が続くなかで市場環境としては決して良好とは言えない状況だが、今後も保守・サポートを中心に安定した売上水準を見込んでいる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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情報提供元: FISCO
記事名:「 システム ディ Research Memo(7):2022年10月期は新規顧客を積極的に開拓し、増収増益を目指す