■業績動向

1. 2021年9月期の業績概要
ティア<2485>の2021年9月期の連結業績は、売上高で前期比2.4%増の12,203百万円、営業利益で同49.1%増の887百万円、経常利益で同49.4%増の877百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同57.0%増の542百万円となった。コロナ禍による緊急事態宣言が長引いたことにより、葬儀規模の縮小に伴う葬儀単価の低迷が期を通して続いたものの、テレビCM等を活用したプロモーション施策等の効果もあって葬儀件数が伸長し、市場環境が厳しい中でも売上高は2期ぶりの増収に転じた。また、利益面では増収効果に加えて、各種経費の削減に取り組んだことで3期ぶりの増益に転じている。期初計画比では葬儀単価が想定を下回ったことにより売上高で1.6%下回ったものの、経費削減が想定以上に進んだことで各利益は20%以上上回って着地した。

2021年9月期の出店状況は、直営店で愛知県下に4店舗を開設し、リロケーションにより1店舗を閉鎖し、FC店で愛知県下に1店舗、大阪府下に1店舗を開設した。この結果、期末の店舗数は直営店で前期末比3店舗増の77店舗、FC店で同2店舗増の55店舗となり、合計132店舗となった。また、葬儀件数は直営で前期比11.0%増の12,599件、FCで同13.4%増の5,521件、合計で同11.7%増の18,120件となった。同期間における国内全体の葬儀件数伸び率は5.0%増※となっており、業界平均を上回る成長が続いている。

※経済産業省「特定サービス産業動態調査報告書」より算出。


売上高の前期比増減要因を見ると、新店稼働により526百万円の増収、既存店の葬儀件数増加で643百万円の増収、FC事業で12百万円の増収となった一方で、既存店の葬儀単価低下で805百万円の減収、既存店のその他売上減(法要等)で148百万円の減収となった。また、期初計画比では、葬儀件数の増加で348百万円の増収となったものの、葬儀単価低下で446百万円の減収、FC売上高で26百万円の減収、その他売上高で71百万円の減収となり、合計では196百万円の減収となった。

葬儀件数が増加した要因として、中核となる東海エリアにおいてテレビCMとリアルイベントを連携したプロモーション施策等が奏功し、問い合わせ件数が増加したことに加え、コンタクトセンターのオペレーションを強化※し、受注成約率を高めることに成功したことが挙げられる。

※電話対応テキストとスクリプトの見直し、電話対応研修の実施、仮入会の受付フローの見直し、入電時における提携団体の案内方法の見直し等に取り組んだ。


経常利益の前期比増減要因を見ると、売上総利益の増加で195百万円の増益となったほか、支払手数料の減少で88百万円、減価償却費の減少で42百万円の増益となり、広告宣伝費の増加64百万円を吸収し、合計で290百万円の増益となった。また、期初計画比では売上総利益が4百万円減少したほか、広告宣伝費が48百万円増加したものの、人件費が143百万円、その他経費が77百万円減少したことにより、合計で167百万円の増益となった。

売上原価率は61.1%と前期比で0.7ポイント低下した。内訳を見ると、商品原価率が「接客人材・警備」「納棺」「霊柩業務」「生花」の内製化を進めたことで、前期比1.9ポイント低下した。内製化の拡大による人財補充等により労務費率が同1.0ポイント上昇したほか、新店稼働に伴う賃料や光熱費等の増加により雑費率が同0.2ポイント上昇したものの、商品原価率の低下により全体の原価率は改善した。一方、販管費率は31.7%と前期比で1.5ポイント低下し、金額ベースでも96百万円減少した。広告宣伝費で64百万円、人件費で2百万円それぞれ増加したが、その他経費で164百万円を削減した効果による。同社は、収益回復に向けて既存会館の賃料減額や宿直職の廃止といった業務内容の見直し、採用費やその他経費に至るまですべての業務でコストの見直しに取り組んだ。期初計画ではこれら取り組みにより234百万円の経費削減を見込んでいたが、実績としては316百万円の削減(売上原価分も含む)を達成している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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情報提供元: FISCO
記事名:「 ティア Research Memo(4):2021年9月期は葬儀単価の下落を件数増加と経費削減でカバーし、増収増益を達成