■霞ヶ関キャピタル<3498>の事業別の取り組み

3. 再生可能エネルギー発電施設開発事業
国内再生可能エネルギー市場は、固定価格買取制度※の下での買取実績及び設備認定容量が引き続き増加基調にある。しかし、事業化される見込みの薄い多数の太陽光発電施設等の設備認定案件により送電網が押さえられ、一部地域においては新規の有望案件の事業推進が困難になる状況が生じていた。この状況を踏まえ、経済産業省が「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」を設置するなど、再生可能エネルギーの大量導入に伴い顕在化しはじめた系統制約や調整力確保、国民負担の軽減等の新たな課題の解決に向けた議論も本格化している。

※太陽光発電等で発電した電気をすべて、固定価格で電力会社が買い取る制度。


資源エネルギー庁「エネルギー基本計画の見直しに向けて」及び「エネルギー基本計画(案)の概要」によれば、国内総発電量に占める再生可能エネルギー発電の構成比を、2018年度の17%から2030年度には36~38%に拡大する目標を掲げている。また、再生可能エネルギー発電のうち太陽光発電の構成比を、2018年度の6.7%から2030年度には14.0~16.0%程度に拡大する計画となっているものの、成熟市場であることから採算が取れにくくなっている。これに対して風力発電の構成比については、2018年度の0.7%から2030年度には5.0%程度へと、比率は低いものの成長率は最も高くなる計画である。再生可能エネルギー導入に対する政府の支援姿勢は継続されていることから、国内の再生可能エネルギー市場はより一層拡大していく見通しであるが、これに加えて地球温暖化に対応する世界の潮流もあり、安心・安全な再生可能エネルギーへのシフトが政府の計画以上のペースで進むことも予想される。

同社では、北海道から鹿児島県まで全国25件の太陽光発電施設を開発し売却済(うち、2021年8月期は鹿児島県南九州市の1件)である。一方、2021年4月に北海道松前郡松前町で稼働済みの小型陸上風力発電施設8基及び開発用地を取得したことで、同社本社オフィスの使用電力量をカバーする年間電力量となった。また、これまでのノウハウを生かし、大型風力発電施設開発への参画も予定しており、今後はオフィスだけでなく、保有物件や開発物件にも対象範囲を拡大する予定だ。なお、新たに取得した土地については、協働パートナー及び関係機関とともに風力発電施設開発に向けて準備を進めている。このように同社では、既に成熟傾向にある太陽光発電ではなく、成長性が高く利益幅も大きい風力発電に注力する方針だ。また、バイオマス発電※への投資も考えているようだが、当面は物流施設開発事業やアパートメントホテル開発事業への投資を中心とする方針だ。

※動植物から生まれた生物資源を直接燃焼やガス化などによって発電するもの。


4. その他事業
同社は、保育園開発事業や海外事業にも取り組んでいる。保育関連市場は、女性の社会進出に対する意識の変化や政府による女性活躍推進により、共働き世帯数や女性の就業率が依然として上昇傾向にあることから、保育に対する需要は引き続き高い。また、こうした需要に対応するため、政府及び自治体が保育の受け皿拡大を目的に保育士確保や保育所整備の施策を進めており、保育所の新設に対する需要は当面の間継続すると見込まれる。

同社は東京都内に台東区(さくらさくみらい入谷保育園)、練馬区、大田区、目黒区、江東区、文京区、世田谷区の合計7ヶ所の開園・企画実績がある。2021年8月期は文京区保育園開発及び世田谷区保育園用地を売却し、合計7件の開発が完了した。なお、保育園開発はサイズが小さく、粗利も低いことから、同社の事業としての優先順位は低いと見られる。

海外事業としては、ASEANの中で最もインフラが整っているタイと、人口が現在の2億6,000万人から3億人に増加すると予想されるインドネシアに現地法人を設立している。タイは、日本とアジア、そして世界をつなぐ「ハブ」となる立地であり、高速鉄道・路線複線化計画により国内交通インフラの整備が進められている。同社は2018年8月に、世界中に複数の上場会社を傘下に持つ、世界有数のコングロマリットCharoen Pokphand Groupの関連子会社であるAlpha Capital Enterprises Limitedの株式を取得し、そのネットワークを今後の事業展開に活用する考えだ。また、インドネシアは多くの島々で成り立っており、太陽光をはじめとする分散型電源が求められていることから、同社の持つノウハウを活用する計画だ。なお、インドネシアの不動産デベロッパーであるPT Baruna Realty(GREENWOODS)とジョイントオペレーションスキームを用いた投資契約を締結し、戸建て住宅開発プロジェクト「Citaville Pilar Cikarang」を始動している。インドネシアは消費市場をけん引する中間所得層の拡大が進み、住宅をはじめとする不動産市場の需要拡大が期待されることから、インドネシアでのさらなる事業拡大を目指す。

同社の海外事業での役割は、事業を企画し、適切なファイナンスで資金を調達して販売するスキームを作り上げ、日本の投資家、デベロッパー、事業会社に、海外への水先案内人として投資機会や事業機会を提供することである。当面はコロナ禍に伴い人々の往来にも制約があるため海外事業での大きな進展は難しいが、長期的には有望な事業分野と言えよう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)


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情報提供元: FISCO
記事名:「 霞ヶ関キャピタル Research Memo(5):ポストコロナを見据えて、物流施設開発事業を大幅に拡大(2)