■今後の見通し

2. 成長戦略
はてな<3930>は2023年7月期以降の中期目標として、売上高で年率15%程度の成長路線に乗せていくことを見込んでいる。具体的な中期成長戦略としては、売上高30億円を突破したあとは、3つのサービスのシナジー効果を最大限に活用しながら3サービスのいずれも成長し、2~3年で売上高40億円の達成を目指していく方針を打ち出している。また、人員体制については40億円達成時に225名程度を想定し、従業員1人当たり売上高については2021年7月期実績から約15%増加を見込んでおり、生産性向上により利益率も上昇するものと予想される。ここ数年は成長投資の継続やコロナ禍の影響もあって業績が伸び悩んでいたものの、今後は再度2ケタ台の成長路線へと復帰する見通しだ。主な事業方針は以下の通り。

(1) コンテンツプラットフォームサービス
コンテンツプラットフォームサービスでは、優れた書き手や投稿者を惹きつけることで、サービス全体の価値を向上させることに注力する。具体的には、「はてなブログ」へのアクセス数や“いいね!”数などの定量的フィードバックだけでなく、読んだ人のコメントやつぶやきなどの定性的フィードバックによる体験を増やすことで書き手を良い意味で刺激するほか、良質なコンテンツを投稿したくなる機会を増やすことで新たな書き手を惹きつける好循環を作り上げていく。

定性的なフィードバックに着目した施策としては、2021年7月に、「はてなブックマーク」のコメント表示改善施策としてYahoo!JAPANの独自技術「建設的コメント順位付けモデル」の導入を開始した。同モデルの導入によって、攻撃的・不謹慎であるといった穏当ではないコメントの表示を抑制し、建設的なコメントが表示されやすくなる。また、定量的フィードバックに着目した施策として、2021年7月期第4四半期に、他サイトへの誘因を目的としたスパムと判断できるコメント投稿やブログ記事を生み出すアカウントについて、システム的・人的に検出し利用を制限するシステムを構築し、運用している。

これらの施策を継続することにより、「はてなブログ」等の良質コンテンツを増やし、登録ユーザー数や月間ユニークブラウザ数が増加することでアフィリエイト広告収入の拡大につなげていく戦略だ。また、有料課金サービスについては、スタートアップ企業または小規模法人向けの「はてなブログBusiness」の顧客獲得に向けたプロモーション施策を強化していく。

(2) コンテンツマーケティングサービス
コンテンツマーケティングサービスでは、「はてなブログMedia」顧客獲得のためにプロモーション施策を強化すると同時に、公式SNSの運用などマーケティング支援サービスを強化することで成長を目指す。また、単価アップ施策として、新サービスの提供にも取り組んでいく方針を掲げており、コロナ禍収束後に弾みをつけるべく体制整備を進めている。

(3) テクノロジーソリューションサービス
クラウドサービス市場が年率2割前後で成長を続けるなか、運用コスト抑制につながることから、「Mackerel」についても年率2ケタ台の成長が続くものと予想される。このため同社では、オンライン展示会への出展やデジタルマーケティングの強化により、見込み顧客の獲得を図っていく方針だ。そのほか、AWSやGoogle Cloudユーザーの利用増加並びにOEM提供先での契約件数増加も見込んでいる。

一方、「GigaViewer」については、搭載メディア数の増加、課金機能の追加開発、レベニューシェアモデルの導入拡大により、さらなる収益拡大を目指す。

搭載メディア数の拡大による開発・運用料の増加だけでなく、広告配信や課金システム導入によるレベニューシェア(広告・課金収益等)の獲得によって高成長を目指す。また、同社のUGCサービスのノウハウを生かし、出版社運営のマンガ・小説サイトのマネタイズ支援にも取り組んでおり、「出版業のDX支援を推進する」という方針も継続する。電子コミック市場が年率2ケタ成長で拡大していることを考慮すれば、「GigaViewer」関連の売上高は中長期的に現状の2倍程度まで拡大できる余地があると弊社では考えている。

そのほか、受託開発サービスについては、新規大型案件の獲得・実施により、事業規模の拡大を図っていく。同社の受託案件は、任天堂(イカリング2、スマプラス)など、一般ユーザーに利用されるサイトの企画・開発・運用であるため、提供するサイトそのものの規模や品質が顧客の業界向けの最大の宣伝手段となり、次の案件にもつながりやすい。今後もこうした受注を確実に取り込んでいくことで成長を目指す。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


<YM>
情報提供元: FISCO
記事名:「 はてな Research Memo(8):BtoBビジネスの拡大により、業績は再成長ステージへ