■日本電技<1723>の中期経営計画

4. 新中期経営計画
長期経営指針「ND For The Next 2030」の発表に合わせ、長期成長の基盤を構築するステージ1の中期経営計画を策定した。中期経営計画では「既存事業の強化」「拡大戦略の実行」「ND企業文化の成長」——を重点成長戦略に、中期業績目標として2024年3月期に受注高350億円、売上高340億円、営業利益45億円、ROE10%以上を掲げた。結果にこだわって推進していく考えである。

成長戦略の「既存事業の強化」では、特に空調計装関連事業において将来、厳しい受注環境になることが予想されるため、全社最適を目的に経営資源を投下し、建物運用ソリューション事業者としての確固たるポジションを築く方針である。具体的には、新設工事においては、従来の「地域ブロック最適」から「全社最適」へと経営の重心をシフト、新設工事案件が集中している首都圏に経営資源を集中投下する。また、メンテナンスストック性を重視した新設工事を受注することで、既設工事へとつなげることを徹底する。これにより、確実に収益を確保していく考えである。加えて、リニューアルやメンテナンス事業など既存事業の基盤を強化する計画である。既設工事においては、顧客の建物運用課題を的確に捉えたソリューションの提供、高付加価値やサービスをプラスオンした新計装システムの提供、脱炭素社会を踏まえた省エネ提案の強化——など総合力により各地の顧客の満足度向上を目指し、建物運用ソリューション事業者としてローカル企業との差別化を図る。

「拡大戦略の実行」では、高い成長性が予想される産業システム関連事業において、組織再編や事業領域拡大によって中核事業への成長を目指す。具体的には、産業システム関連事業の組織を再編して事業部制を導入し、産業システム関連事業に経営資源をシフトする。中途採用による専門人材の確保、事業部サイトの制作など販促ツールの拡充、食品メーカーや食品製造機械などに対する営業効果の高い展示会への出展——といった経営戦略を積極化する方針である。ステージ1はまだ種まき期間だが、生産管理システムなどジュピターアドバンスシステムズの経営資源や知見を取り込むことでシナジーを最大化し競争力を強化、最終的には産業システム関連事業で利益を確保し、事業領域を拡大するとともに空調計装関連事業との両輪を目指す。

「ND企業文化の成長」では、中長期的な企業価値の向上を目指して、人的資本の充実、働き方改革の推進、ガバナンスの徹底を推進する。人的資本の充実では、中堅や若手社員の早期戦力化、経営人材など人材の育成、採用強化による量的・質的な人員確保を進める。働き方改革の推進では、ワークライフバランスや人材・働き方の多様化、健康経営の推進など従業員とのエンゲージメントを推進する。ガバナンスの徹底では、取締役会の実効性確保、独立社外取締役の活用、経営の透明性確保、株主との建設的対話に向けた情報開示の充実などを進める。こうした中期経営計画を実行的なものにし、2030年のあるべき姿の実現へ向けて、ESG経営への取り組みも開始する。財務目標と対をなす非財務目標として、脱炭素社会実現への貢献、計装エンジニアリングの可能性への挑戦といった環境目標、従業員とのエンゲージメントやダイバーシティの推進など社会目標、中長期的な企業価値の向上や地域・社会貢献といったガバナンス目標を、同社グループのマテリアリティとして掲げる。ESG経営を通じてサスティナブルな社会の実現を目指し、社員への意識浸透、取り組み定着化などサスティナビリティ経営を促進する考えである。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)


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情報提供元: FISCO
記事名:「 日本電技 Research Memo(5):産業システムの独り立ち~成長を期す