■クリーク・アンド・リバー社<4763>の業績動向

2. 事業セグメント別動向
(1) クリエイティブ分野(日本)
クリエイティブ分野(日本)の売上高(社内取引含む、以下同様)は前期比6.0%増の26,067百万円、営業利益は同35.0%増の1,775百万円と過去最高を更新した。コロナ禍の影響でWeb分野が減収減益となったほか、新規エージェンシー分野で損失が拡大したものの、ゲームや電子書籍・YouTube等の好調、並びに映像分野の収益増でカバーした。

分野別業績の前期比伸び率を同社が開示している構成比から試算すると、映像(テレビ、映画)は6.0%増収、18.2%増益となった。増収要因の大半は、2020年8月より連結対象となったウイング※の寄与によるもので、既存事業ベースでは同社で手掛けるテレビのレギュラー番組が終了したこともあり微増収にとどまった。ただ、利益面では2020年4月からの同一労働同一賃金制度導入による派遣単価の見直しが進んだことに加えて、低採算案件が減少したことや経費削減に取り組んだことなどで2ケタ増益となった。

※ウイングはNHK及び関連会社の番組制作・編集部門へのスタッフ派遣、並びに気象キャスターの派遣を行っており、直近業績(2020年3月期)は売上高で706百万円、営業利益で2百万円。のれんは70百万円で5年定額償却となっている。


ゲーム分野は6.0%増収、82.9%増益となった。売上高はコロナ禍による巣ごもり現象を背景に、ソーシャルゲーム、コンシューマゲーム向けともに派遣、受託開発ビジネスが伸長した。また、子会社のクレイテックワークスも、受託開発したNintendo Switch用RPG「ブレイブリーデフォルトII」(スクウェア・エニックス、2021年2月発売)が収益増に貢献したほか、前期の収益悪化要因となった「パレットパレード」の開発・プロモーション費用(1.6億円)が無くなったことも増益に寄与した。ゲーム分野の増益額は5億円強になったと見られ、クリエイティブ分野(日本)の増益分の大半を占めた格好となる。

Web分野は2.2%増収、2.2%増益となった。Web・広告・出版業界に特化した業界最大級の求人情報サイト「Webist(ウェビスト)」や、AI・IoT領域の求人サイト「Symbiorise(シンビオライズ)」を通じたWebクリエイター及びデータサイエンティスト等の人材ネットワーク拡充に取り組んだものの、これら職種の派遣需要が伸び悩んだことに加えて、コロナ禍でアウトソーシング事業(求人情報サイトやグルメ情報サイト運営会社からのサイト掲載記事の作成・編集・撮影業務の受託)が大きく落ち込んだことで、前年同期ほぼ横ばいとなった。

電子書籍・YouTube等分野は32.5%増収、64.0%増益と好調に推移した。巣ごもり現象で電子書籍の配信数・ダウンロード数が増加したほか、前期に低迷した中国向け版権ビジネスが回復したこと、YouTube関連では「The Online Creators」において、YouTuberの動画再生回数が順調に拡大したほか、企業の旺盛なWeb動画制作ニーズを取り込んだことなども収益増に貢献した。YouTube関連事業の営業利益は1億円を超える規模にまで成長している。

新規エージェンシー・その他分野の売上高は6.0%増となったものの、投資増により営業損失は2.5億円程度増加したものと見られる。建築分野では、一級建築士の紹介及びBIM※技術者の派遣が堅調に推移したほか、2020年4月よりVR技術を活用した営業支援サービス「超建築VR」(VR画像を用いてハウスメーカーや工務店が顧客に住宅をプレゼンテーション・販売を行う)を本格始動しており、好評を博している。また、新規分野としてコンピュータサイエンス(研究者や博士)、ライフサイエンス(研究開発者やその補助者)、シェフ、落語家やプロの役者、アスリート、企業における業務や機能の最高責任者となるCXO等のエージェンシー事業において、今後の成長に向けた取り組みを推進した。

※BIM(Building Information Modeling)とは、コンピューター上に作成した3次元の建物のデジタルモデルに、コストや仕上げ、管理情報などの属性データを追加した建築物のデータベースを、建築の設計、施工から維持管理までのあらゆる工程で情報活用を行うためのソリューションのことを指す。


そのほか、2020年11月に東京都が実施する「5G技術活用型開発等促進事業」の開発プロモーターとして同社が選定され、新たに子会社化したきづきアーキテクト(出資比率70%、1億円)※と連携して、5G関連技術を活用したサービスを開発するスタートアップ企業7社に対する支援を開始している。このうちの1社である(株)Re-alは、力触覚技術「リアルハプティクス」を活用したロボティクスのスタートアップ企業で、第一弾のソリューションとして、触覚伝達技術を生かした遠隔/仮想釣りロボットシステムの開発に取り組んでおり、今後、5G環境下での実証実験も進めていく予定となっている。

※きづきアーキテクトは世界有数のコンサルティング会社である(株)ローランド・ベルガー出身の長島聡(ながしまさとし)氏が2020年7月に設立した会社で、主に製造業における事業構想の立案、ロードマップ策定、DX導入等で豊富な実績・ノウハウを有している。従業員数は数名程度と少ないが、外部コンサルタントとのネットワークを構築しており、プロジェクトごとにチームを組成してサービス支援していくビジネススタイルとなる。


(2) クリエイティブ分野(韓国)
クリエイティブ分野(韓国)の売上高は3,269百万円(前期実績67百万円)、営業損失は49百万円(同66百万円の損失)となった。このうち、2021年2月期より連結子会社となった映像派遣事業を行うCREEK & RIVER ENTERTAINMENTの売上高は約32億円、営業利益は20百万円となった。一方、ゲームソフトのライツマネジメント事業を展開するCREEK & RIVER KOREAについては、コロナ禍の影響で海外へのゲーム配信時期が遅れたこともあり、約70百万円の営業損失を計上した。同社ではこうした状況に鑑み、韓国におけるゲームソフトのライツマネジメント事業については終息する方針を決定している。

(3) 医療分野
医療分野では、子会社の(株)メディカル・プリンシプル社(出資比率100.0%)で「民間医局」ブランドによる医師紹介事業を中心に、医学生・研修医を対象とした合同説明会「レジナビフェア」や、臨床研修情報サイト「レジナビ」、医師向け情報共有サイト「民間医局コネクト」の運営、医師向け教育プログラム「民間医局アカデミー」等のサービスを提供している。

2021年2月期の売上高は前期比3.6%減の3,923百万円、営業利益は同2.2%減の723百万円と減収減益となった。勤務医(常勤・非常勤)の紹介事業については慢性的な医師不足を背景に好調に推移したものの、コロナ禍の影響でスポット案件(学会出席のための代理医師派遣、企業向け派遣等)の需要が落ち込んだほか、医学生・研修医向け「レジナビフェア」の開催が中止※となったことが減収減益要因となった。コロナ禍によるマイナス影響額は売上高で6億円、営業利益で3億円となっている。

※「レジナビフェア」の売上高は開催中止による出展料の減少等により前期比7割減の2億円となり、損益面でも赤字となった。


なお、「レジナビフェア」については期中にオンラインでの配信を開始し、収益モデルの構築に取り組んだ。2020年7月から2021年2月までに約550施設の動画コンテンツを配信し、延べ7千人の医学生が視聴した※。オンライン配信としたことで、全国のあらゆる地域の病院や学生の参加が可能となり、サービス内容に対する満足度も好評だったことから、今後はリアルでの開催と合わせてオンライン説明会も継続していく予定にしている。また、2021年1月からは新たに診療科目別のオンラインフェア「専門研修プログラム」の配信も開始している。

※2019年に開催した「レジナビフェア」(全国9会場)の参加数は、病院で延べ2,350施設、来場者数で延べ1万人規模であった。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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情報提供元: FISCO
記事名:「 C&R社 Research Memo(5):医療、会計・法曹分野の減収減益をクリエイティブ分野(日本)でカバー(1)