■業績動向と財務状況

3. 中長期の成長イメージ
オンコリスバイオファーマ<4588>はテロメライシンを中外製薬に導出したが、更なる価値向上を図るため、米国で複数の医師主導治験を進めており、中外製薬によるオプション権行使につなげていきたい考えだ。中外製薬では当面、国内での食道がん(放射線併用療法)を対象とした上市を最優先に取り組んでいくものと思われるが、本来の目的は自社の免疫チェックポイント阻害剤であるアテゾリズマブとの併用療法による開発を進め、アテゾリズマブの市場価値を高めていくことにあると思われる。このため現在、日米で進められているペムブロリズマブとの併用療法による医師主導治験の結果が良好であれば、米国でもオプション権を行使してグループ会社であるジェネンテックにより、同一対象疾患の企業治験をアテゾリズマブで進めていく可能性が高いと弊社では見ている。医師主導治験の結果や中外製薬が国内で今後新たに進める臨床試験の結果が纏まる時期としては2022年から2023年頃になると見られ、オプション権が行使されるかどうかのタイミングになると思われる。オプション権が行使されれば、開発が海外でも進展しマイルストーン収入等の収益獲得も見込めることになる。また、最も開発が先行している国内の食道がんを対象とした放射線療法との併用による治験については、中外製薬で先駆け指定審査制度を使って、2023年以降の承認申請を目指す方針であることを明らかにしており、テロメライシンの上市による売上貢献も2023年以降になるものと予想される。

当面の業績については研究開発費が先行し、損失が続く可能性が高いものの、2023年以降はテロメライシンの上市が期待されるほか、「OBP-702」・「OBP-601」・「OBP-2011」などその他のパイプラインについてもライセンス契約やマイルストーン収入が得られる可能性がある。また、テロメスキャンについてもAI技術によるCTC自動解析ソフトウェアによる検査プラットフォームが確立できれば、商用化が現実味を帯びてくることとなる。2020年は新型コロナウイルス感染症の影響によって国内外の臨床試験の進捗が遅れたため、収益化のタイミングについても従来よりはやや遅れるものの、早ければ2023年以降に業績も収益化ステージに入ると弊社では予想している。

長期的には、第3世代テロメライシン等の開発や医療現場でのニーズが高い難病、希少疾病を対象とした新たな治療薬候補品の導入などにも注力していく方針となっており、収益ポートフォリオを拡充しながら企業価値の更なる向上を目指す戦略となっている。


当面の研究開発資金は第三者割当新株予約権の行使により調達
4. 財務状況
2020年12月期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比1,583百万円減少の2,796百万円となった。主な変動要因を見ると、流動資産では売上減少に伴い現金及び預金が1,274百万円減少した。また、固定資産では投資有価証券評価損を計上したことにより投資有価証券が328百万円減少したほか、関係会社貸付金31百万円を計上している。

負債合計は前期末比132百万円減少の793百万円となった。未払金が46百万円、未払消費税等が75百万円減少したことが主な減少要因となっている。また、純資産は1,450百万円減少の2,003百万円となった。当期純損失2,095百万円を計上した一方で、新株発行の増資等により資本金及び資本剰余金が315百万円増加した。

同社は今後の研究開発資金等の事業活動資金を確保するため、2021年1月に第三者割当による新株予約権を発行した(潜在株式数268.14万株、下限行使価額915円)。調達資金については2023年までの研究開発資金等に充当していく予定にしており、主なものとして、テロメライシンの上市に向けた製法開発等の研究開発費で1,970百万円、次世代テロメライシンの研究開発費で1,350百万円、新型コロナウイルス感染症治療薬の開発で800百万円となっている。テロメライシンの製法開発では、大量生産に向けて50Lタンク(従来は10Lバッグで製造)を用いた製造工程のプロセス評価を再実施していくことと、生産委託先を1社追加することに伴う費用で、2023年までには完了する見通しだ。なお、2021年1月から2月までに約17億円を新株予約権の行使により調達しており、未行使分の新株予約権は約132万株相当となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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情報提供元: FISCO
記事名:「 オンコリス Research Memo(10):次世代テロメライシンなどの開発を進め、更なる企業価値向上を目指す