■今後の見通し

2. イノベーション<3970>の成長戦略
今後の成長戦略として、主力事業である「ITトレンド」「BIZトレンド」「List Finder」の成長に向けた取り組みを推進していくほか、「Seminar Shelf」や「コクリポ」等の新規事業並びに2020年以降にグループ会社化したIFA(Independent Financial Advisor:独立系資産運用コンサルタント)事業を展開する子会社やM&A業務を行う子会社の育成にも取り組み、年率2ケタ台の収益成長を目指していく。

(1) 「ITトレンド」「BIZトレンド」
主力の「ITトレンド」「BIZトレンド」の成長戦略については従来と変わらず、「ユニークユーザー数(サイト来訪者数の拡大)」×「資料請求件数(問合せ当たりの資料請求件数の拡大)」×「コンバージョン率(問合せ率の向上)」の3つのKPIをそれぞれ引き上げていくことで、年率2ケタ成長を目指していく方針だ。

「ユニークユーザー数」の拡大施策としては、前述した検索エンジンで上位表示されるためのSEO対策や広告施策の強化、日経BP等の提携先企業からの流入のほか、需要拡大が見込まれる新カテゴリーを追加し、比較・資料検討サイトとしての媒体価値向上に取り組んでいく方針となっている。市場環境としては引き続き、大企業だけでなく中堅・中小企業においてもDX推進のためのIT投資が進むと見られており、初期投資負担の少ないSaaSサービスの導入に向けて比較検討サイトである「ITトレンド」への訪問者数も増加するものと予想される。特に、2021年度は政府の経済対策の1つとして、中小企業向けを対象としたIT導入補助金制度※の予算枠を拡大する方向で検討が進められているようで、「ITトレンド」にとっても追い風となる。

※ITツール(ソフトウェア、サービス等。ハードウェアは除く)を導入する経費の一部を補助することで、中小企業・小規模事業者等の生産性向上を図ることを目的とした制度。


「資料請求数」の向上施策として、有力な製品・サービスをより多く掲載するため営業を強化していくほか、サイト来訪者が資料請求しやすくなるようなサイト構成の改善や、ホワイトペーパー※施策に取り組んでいく。特に、IT製品を販売する側の企業にとっては、リアルの展示会やセミナーが中止・延期となり、見込み顧客の獲得手段が制限されるなかにおいて、費用対効果の高い「ITトレンド」は見込み顧客獲得のための重要なツールとなる。このため、今後もさらに掲載社数や掲載製品数が拡充され媒体価値が向上、さらに訪問者数が増加するといった好循環になる可能性がある。また、「コンバージョン率」の向上施策としては、広告やターゲティングの最適化、サイトのユーザビリティ向上、売上貢献度の高いカテゴリーに注力していく。特に、広告ターゲティングについては、日経ID会員への広告を強化していく方針だ。先行して取り組みを進めた「Seminar Shelf」においてCVRが上昇するなどの結果が出ており、「ITトレンド」においてもその効果が期待される。また、将来的にはクチコミ機能を追加していくことも検討している。

※ホワイトペーパーとは、リード獲得やナーチャリング、契約等に至るまでに効果を発揮するマーケティング用資料で、販売目的用の製品資料ではなく、見込み顧客の課題解決に資する資料となる。目的別に、ノウハウ型、製品比較型、事例紹介型、調査レポート型、業界トレンド型などに分けられる。


(2) 「Semina Shelf」
セミナー動画プラットフォームの「Seminar Shelf」については、引き続き「いつでも、どこでも、無料で視聴できる」といった長所を訴求し、掲載企業と会員数を増やしていくことで事業拡大を進めていく。掲載企業にとっては、動画で自社の製品・サービスに関する多彩な訴求が可能となるほか、閲覧状況の分析も可能で、1件当たりの成果報酬も5千円と低価格でメリットは大きい。現在、動画コンテンツとしては300件強となっており、今後もさらに増やしてプラットフォームの価値向上を図っていく。集客施策としては、日経ID会員向けのメールマガジン等による集客のほか、各業界における著名人を起用した動画セミナーの配信なども行って、会員数を増やしていく戦略となっている。

ただ、最近はオンライン展示会を開催する企業も増えており、今後、同社の動画セミナープラットフォームがどのような影響を受けるのかについては流動的である。こうしたなか、同社でも2020年11月に初のオンライン展示会となる「ITトレンドEXPO 2020」を開催している(70社、93製品を出展)。著名人を呼んで大々的にプロモーションし、2日間で約1.3万人を集客するなど盛況だった。出展者側からの評価として、訪問者の属性(メールアドレスのドメイン)を法人等に限定したことが好評だったと言う。通常の展示会では訪問者は出展企業のブースで名刺を渡し、製品の資料などを受け取るが、オンライン展示会では製品紹介動画を見る際に、ワンクリックで閲覧者の属性情報が出展企業に送信される仕組みとなっている。このため、見込み顧客の獲得につながらない閲覧数が増えてしまうと、逆にその後の業務が煩雑になるといった問題点が指摘されていた。同社では今回の結果も踏まえて、より良い形で今後も定期的にオンライン展示会を開催していく方針で、次回は2021年3月期第4四半期に予定している。オンライン展示会については、出展料(動画制作料等)と動画閲覧によって獲得する見込み顧客の件数が成果報酬となる。第1回はトライアルも兼ねた開催だったため損益的にはほぼ影響が無かったが、第2回以降は利益が出せる料金体系にして開催していくことにしている。

(3) 「List Finder」
「List Finder」については、アカウント数の拡大に向けてターゲットとなる層の特徴に合わせた営業活動を進めていく方針で、活用事例を充実させ導入効果をより具体的に訴求していくことで新規顧客の開拓を進めていく。また、解約防止策として、導入から定着までのサポート体制をさらに強化していくほか、利便性の向上に向けた機能改良も進めていく。また、2020年1月にはsalesforce.comとのAPI連携も開始した。これは、salesforce.comが登録している顧客情報を一括で「List Finder」にインポートし、すぐに活用できるようにしたものだ。salesforce.comにもMAツールとして「Pardot」があるが、料金が高いために導入していない顧客も多く、こうした顧客に対して「List Finder」を提案する。また機能面では、ユーザーの要望が高い、シナリオ設定による自動メール配信機能の強化などに取り組んでいく予定にしている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


<EY>
情報提供元: FISCO
記事名:「 イノベーション Research Memo(10):既存事業の更なる成長に向けた取り組み強化、新規事業の育成も推進(1)