■業績見通し

2021年3月期の連結業績予想についてワコム<6727>は、上期業績の進捗等を踏まえ、期初予想(レンジ形式)を増額修正するとともに、ベースラインによる一本値にシフトした。修正後の売上高を前期比11.8%増の99,000百万円、営業利益を同61.7%増の9,000百万円、経常利益を同69.4%増の8,800百万円、親会社株主に帰属する当期純利益を同60.8%増の6,300百万円と通期でも増収増益となり、過去最高業績を更新する見通しとなっている。

売上高は、「ブランド製品事業」及び「テクノロジーソリューション事業」がそれぞれ伸長する想定となっている。また、損益面でも、将来に向けた積極的な研究開発投資を継続しながらも、増収効果や製品ミックス改善、販管費の最適化により大幅な増益を見込んでいる。

通期予想の達成のためには、下期売上高43,674百万円、営業利益382百万円あれば足りる。上期業績が大幅に上振れたにもかかわらず、下期の業績予想が保守的となっているのは、想定される下振れ要因を勘案したうえで、最低限達成すべき水準となっていることが理由である。すなわち、コロナ禍に伴う経済活動の不確実性のほか、上期業績の上振れ分のうち、需要の前倒し部分については、下期に反動減となる可能性についても慎重に見ているようだ。同社の意図する「ベースライン」とは、この最低限達成すべき水準を超える部分について、2022年3月期以降も見据えた取り組みを通じて、現時点では数値化しにくいオポチュニティ(業績上積み機会)を積極的に狙いに行くということのようだ。

事業別の業績見通しは以下のとおりである。

(1) ブランド製品事業
売上高を前期比19.8%増の51,000百万円、セグメント利益を同234.0%増の5,700百万円と大幅な増収増益を見込んでいる。売上高は、引き続き市場が拡大しているオンライン教育向け等の需要獲得のためペンタブレット製品やディスプレイ製品のエントリーモデルを中心に拡販を図る。損益面でも、増収効果や製品ミックス改善、販管費の最適化により大幅な増益を実現し、セグメント利益率は11.2%(前期は4.0%)に大きく改善する見通しである。

(2) テクノロジーソリューション事業
売上高を前期比4.4%増の48,000百万円、セグメント利益を同2.0%増の7,800百万円と増収増益を見込んでいる。コロナ禍による影響を慎重に勘案しつつ、主要顧客との強い関係を維持・発展させるとともに、教育向けをはじめとする新たな事業機会を生かすことで収益の獲得を図る方針である。損益面でも、将来に向けた積極的な研究開発投資をこなしながら、増収効果により増益を確保し、セグメント利益率も16.3%(前期は16.6%)と高水準を維持する見通しである。

弊社アナリストも、コロナ禍による影響や上期における需要前倒し分の反動減の可能性についてはリスク要因として念頭に置く必要はあるものの、オンライン教育向けなどの新たな需要が伸びていることを踏まえれば、同社のベースラインに基づく業績予想は十分に達成可能であり、どれだけの上乗せができるかがポイントになると見ている。例え下期において一過性の需要がはく落したとしても、市場の構造的な変化が明らかになってくれば、今後の成長性を占ううえでも重要な判断材料になるであろう。特に、これまで縮小傾向にあったペンタブレット製品の復調や、それに伴う収益性の変化にも注目したい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)




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情報提供元: FISCO
記事名:「 ワコム Research Memo(5):通期業績予想を増額修正。通期でも大幅増収増益となり過去最高業績を更新する見通し