■電算システム<3630>の成長戦略

1. 第三者割当による新株予約権発行
2020年8月11日開催の取締役会において、第三者割当による第2回新株予約権(以下「本新株予約権」と言う。)の発行を決議した。今回のエクイティ・ファイナンスは、中長期的な視野に立ち、M&Aに関連する資金、東濃データセンター増築費用及び新規事業「DSK後払い」に係る資金の獲得を行い、一層の成長を目指すためのものである。中長期的な視野に立った成長投資に向け、保有する自己株式の一部の活用も可能であり、財務基盤の向上を図り、かつ希薄化に配慮しながら企業価値の向上に資するエクイティ性資金調達の実施が適切であると判断した。

M&Aに関しては、長期的な視点に立ち、投資採算を厳密に吟味しながらも的確に買収や資本参加の機会を捉えることは不可欠であると考えている。また、新規決済事業立ち上げの柱とすべく、債権保証型の後払い決済サービス事業「DSK後払い」を、2020年7月より連結子会社を通じて開始しており、サービスの立ち上げ段階においては、一定のリスク性資金の投入が必要となる。その他、最も成長が見込まれる分野の1つがクラウドビジネス分野と捉え、その中心となる東濃インターネットデータセンター増築は、新規案件の獲得を通じたクラウドサービス事業のもう一段の成長を目的としたものとなる。

資金使途については、ピーエスアイ買収に係るブリッジローンの返済(17億円:支払予定時期2020年8月−2021年1月)、債権保証型後払いサービス事業の立ち上げに伴う同社資金及び子会社への投融資資金(9億2,500万円:同2020年8月−2023年8月)、東濃インターネットデータセンター増築に係る投資資金(3億5,000万円:同2020年8月−2021年4月)、将来の買収及び戦略的投資のための資金(10億円:同2020年8月−2023年8月)と明確に打ち出している。


デジタルガバメント市場の広がりを機会と捉える
2. 国や自治体向けサービス強化
ユニバーサルメニューによる行政サービス情報提供事業等を手掛ける(株)アスコエパートナーズの第三者割当増資を引き受け、資本業務提携契約書を2020年7月22日付で締結している。我が国行政の電子化の推進を求める声はますます高まっており、国や地方自治体でもIT関連への対応は喫緊の課題となっている。このようなデジタルガバメント市場の広がりを機会と捉え、行政サービスコンテンツDB(データベース)の構築に独自のノウハウと実績を持つアスコエパートナーズとパートナーシップを組み、「ユニバーサルメニュー」の導入及び運用において、国や自治体が提供する行政サービスに誰もが簡単に検索・活用できるという付加価値を協力して提供していく。

同社はこれまでも決済代行サービスの税金・公共料金収納、BPOサービスの提供、システム開発など、個々の事業において各自治体へサービスの提供を行ってきており、アスコエパートナーズが提供する国や自治体向けのサービスとの親和性が非常に高い。業務提携の内容としては、1)自治体向けWebサイト、アプリ提供事業(新型コロナウイルス感染症 支援情報ナビ等)、2)国向けWebサイト構築、DB開発事業、3)企業向け行政サービスコンテンツ提供事業、4)自治体向け決済関連、BPO関連事業、5)自治体向けスマートシティ関連事業、6)行政サービス情報の流通にかかるビジネスの共同推進等となる。

3. 人事システム分野におけるパートナー契約
(株)Works Human Intelligenceと人事システム関連の各種事業領域における業務提携を目的にパートナー契約を締結している。Works Human Intelligenceは1996年に設立した(株)ワークスアプリケーションズを前身とし、人事業務全般を統合管理するパッケージソフトウェア「COMPANY®」の開発・販売・サポートを行っている。パートナー契約締結を契機として、Works Human Intelligenceが展開する自治体・公共機関向けソリューションの提供や同社が中堅企業向けに提供する「COMPANY®」を利用した人事・給与計算アウトソーシングサービス(BPO)事業の展開で協業を推進する。この「COMPANY®」は大企業向けとなるほか、収益に与える影響が大きい。それゆえに商談成立に向けてはWebのみの対応では困難であり、やはり顧客策への営業がカギを握ると弊社では考えている。そのため、新型コロナウイルスの影響による移動制限が長期化するようだと、会社側計画ほど伸びない可能性はありそうだ。

(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)




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情報提供元: FISCO
記事名:「 電算システム Research Memo(5):M&Aやクラウドビジネス分野強化など中長期的な視野に立った成長投資を実施