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(1) LSI開発販売関連
LSI開発販売関連事業では、遊技機器向けグラフィクスLSI(以下、G-LSI)の開発販売を中心に、メモリモジュールやLEDドライバ等周辺デバイスの開発販売を行っているほか、産業機器などの組込み機器用G-LSIの開発販売も行っている。2020年3月期の売上構成比で見ると、遊技機器向けG-LSIが約30%を占めており、残りが遊技機器向けメモリモジュールを中心としたその他デバイスとなっている。
同社の遊技機器向けグラフィックスLSIの特徴は、比較的廉価なCPUとの組み合わせでも高精細な描画表示を実現する能力を有していることにある。また、画像ロムに格納された圧縮画像データを瞬時に伸長して高速表示するほか、多彩な演出を可能とする数多くのエフェクト機能も搭載している。遊技機器向けグラフィックスLSIについては、このような特定用途に特化した技術が必要となるほか、設計プロセスの微細化、回路規模の大型化により研究開発費が増大する傾向にあるため参入障壁も高い。競合企業としては米NVIDIAやヤマハ<7951>などがある。
なお、遊技機器向けG-LSI市場では、リユース(再使用)品が一定規模で使われており、機器の出荷台数とG-LSIの需要が必ずしも連動しない点には注意する必要がある。これは遊技機器に搭載される部材の品質が複数回の繰り返し利用でも問題ない水準であることに加えて、遊技機器メーカーがコスト削減のためにリユース品を使う動きが広まったことが背景にある。遊技機器メーカーはリサイクル業者を介して、または直接パチンコホールなどから部材を回収して再利用している。リユース率は遊技機器メーカーのコスト削減施策の動向に影響を受けるが、年間需要のおよそ3割から4割程度がリユース品になっていると推定される。また、G-LSIの世代後半期にはリユース率が高まり、次世代品の販売開始とともにリユース率も下がる傾向にある。
同社はファブレスメーカーのため、半導体の製造に関してはすべて外部に委託している。G-LSIについては「AG5」までルネサスエレクトロニクス<6723>を始めとした国内半導体メーカーをメインに製造委託してきたが、次世代品の「AG6」については海外の大手ファンドリーメーカーに製造委託している。最先端の微細回路技術を低コストで量産できるためだ。このため、「AG6」の仕入れについては為替の影響を受けることになる。一方、販路については専門のエレクトロニクス商社を通じて遊技機器メーカーに販売している。
なお、同社は研究開発型のファブレスメーカーであるため、売上高に占める研究開発費率が高いという特徴がある。特に、2016年3月期以降は「AG6」の開発を本格的に開始したことや、演出用の周辺LSIなどその他LSIの開発も強化してきたことで研究開発費の水準は年間20億円以上で推移し、この間の収益圧迫要因ともなっていた。2020年3月期は「AG6」の開発が終了したことで、1,549百万円と大きく減少し、収益の改善要因となっている。後継品の開発については、遊技機器市場そのものが縮小傾向となっているだけに、投資判断は従来以上に慎重に進めていく方向で考えているようだ。
(2) 新規事業関連
新規事業関連として、同社ではミドルウェア、機械学習(AI)、ブロックチェーン、情報セキュリティ領域にターゲットを定めた事業の育成に取り組んでいる。このため、2020年3月期の売上高も196百万円とまだ小さく先行投資段階の事業と位置付けられる。
ミドルウェアソフトでは、ゲーミング市場におけるソフトウェア開発用にターゲットを絞り、同社が得意とする画像及び音声圧縮技術を中心に製品を提供している。製品としては、ムービーミドルウェアの「H2MD」※1や超解像「GRADIA(グラディア)」※2、低負荷・低遅延を実現したサウンドミドルウェア「C-FA(シーファ)」、HDR対応超高圧縮ムービーミドルウェア「LESIA(リーシャ)」、ファイルパッキングミドルウェア「VUCKET(バケット)」※3などを揃えている。
※1 ブラウザで動画を再生できる動画コーデックライブラリで、複数動画の同時再生や透過レイヤー(動画の重ね合わせ)制御が可能なこと、CPUの負荷が少ないこと等が特徴となっている。
※2 超解像とは、ディスプレイに表示される文字や絵などを拡大した時に、通常はジャギー状(ギザギザ状)になってしまう輪郭部分を滑らかで自然な状態に補正する技術
※3 自動実行型の圧縮ファイル・ソフトウェア、VUCKETは画像・音声等の大容量ファイルを一つにまとめる機能だけでなく、ファイルの破損チェックや暗号化等にも対応している。
AI分野では、独自開発したエッジ推論向けディープラーニング・フレームワーク「ailia」の販売を行っている。「ailia」の特徴はクロスプラットフォームに対応しているほか、GPUの積極活用により推論処理スピードで世界最高水準の性能を実現していることにある。また、2019年に子会社化したモーションポートレートでは、画像認識・処理技術を基に、静止画から自動的にアニメーションを⽣成する「MotionPortrait」技術のIPライセンスや開発支援サービス等を提供している。子会社化の目的は、AI分野における開発力の強化と、相互の技術力を融合することにより、新たな価値を創出し、既存顧客の深耕と新規顧客の開拓を進めていくことにある。
ブロックチェーン分野では2018年に子会社化したVIPPOOLのブロックチェーン技術を活用し、マイニング用のハードウェアの開発・販売を行うほか、分離型ウォレットの開発も進めている。また、同技術を用いたソリューションサービスの展開も進めている。
セキュリティ分野では、暗号技術を用いたソリューション「SHALO」をUSBドングルに搭載して販売していく予定となっている。ライセンス管理や暗号通貨のハードウェアウォレット、Windows等のアプリケーション起動時の認証用等での需要を見込んでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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