■高千穂交易<2676>の事業概要

3. デバイス事業
(1) 電子プロダクト(同45.6%)
主に海外メーカー製の半導体や電子デバイス、センサー等を扱っている。主たる仕入先はモノリシック・パワー・システムズ、ノウルズ、オクタジックなど。従来はアナログ系半導体を中心とした商品構成だったが、現在は海外半導体メーカーの最先端デバイスや、シリコンマイク、センサー等の各種電子部品を豊富に取り揃え、高機能・低消費電力・小型化など多様な市場ニーズに応えている。近年ではソリューション事業の拡大を図るため、技術サポートや複合的なソリューション販売に注力し付加価値を高めている。

(2) 産機プロダクト(同54.4%)
快適な社会環境・生活環境づくりに資する製品を製造する顧客へ機構部品(スライドレール、ガススプリング、昇降システム、ソフトクローズユニット等)や電子錠などの「ムーブメント・ソリューション」を販売している。主な市場として、自動機(ATM)、住設、OA/PPC、OF(オフィス家具)、遊技、その他(自動車等)に分けられている。

ATM向けのスライドレールでは国内トップシェアを誇る。商社でありながら独自の設計やオリジナルプログラムによるシミュレーション解析などを実施し、顧客の要望に適合した商品開発に取り組んでいる。2015年からは米国法人を通じて、米国住宅設備市場などへ参入するなど、海外市場ではまだ普及期にある日本式ムーブメントソリューションの拡販を推進している。

4. 主な仕入先と販売先
以上のように同社は非常に多くの商品・製品を取り扱っていることから仕入先は約400社に上るが、主要製品を供給する上位20社が約60%を占める。一方で販売先も多岐にわたっており、取引先の口座数は約2,000社になるが、主要な上位顧客20社が40%を占める。特定の顧客に偏っていることはなく、顧客層は分散されている。

5. 競合、特色、強み
同社は非常に多くの商品を取り扱っているため、それぞれの分野で多くの競合会社が存在する。しかし、事業全体において特にこれといった競合会社を探すのは簡単ではない。あえて個別分野での競合会社を挙げれば、商品監視システムでのチェックポイントジャパン(株)、スライドレールでの日本アキュライド(株)(両社とも米国の日本法人)、半導体では規模は異なるが半導体専門商社など。また、RFID分野では多くの電機メーカーやシステム会社と競合する。

同社の最大の特色は専門性の高い商材を扱っている点だろう。そのため営業社員であっても技術的に高い専門性・知識を持っており、同社の社員の40%以上が技術系出身となっている。ある意味で専門的なプロ集団とも言える。そのため同社は、売上規模は大きくはないが、売上総利益率は25%前後となっており、一般的な半導体や電子部品商社の売上総利益率(約10~15%)と比べて高い。

高い専門性を備えた社員が多いことから、単に1つの製品を右から左へ販売するだけでなく、顧客のニーズを理解して、たとえばA製品とB製品にCソフトを組み合わせて最適なソリューションを提供したり、日本未導入の新規性の高い新商材を独自の情報網から探索し提案できる営業ができるのも同社の特色であり強みだろう。また、そのような専門性を有していることから、顧客からの信頼も厚く、顧客の要望に沿って材料段階から企画・設計を行うような場合もある。同社のそのような専門性・特殊性は売上総利益率に現れている。

このような専門性を備えたビジネススタイルというのは、ある意味では「深く・狭く」でもあるが、今後は後述の中期経営計画でも述べるように、付加価値の高い新商品の導入や専門性を生かし先行投資した子会社を活用し、グローバル市場も視野に横断的に「深く・広く」事業展開を図る計画だ。

事業構成として捉えると、大きくはシステム、デバイスに分かれるが事業規模はほぼ同程度であり、突出した事業は見当たらない。また各々が販売している商品、顧客が異なるため、業界や市場の好不調がそのまま企業業績には反映されず、連結においては高い安定性を誇っている。一方で成長性を高めるため、各事業ともに新規分野の育成による事業拡大を中期計画において画策している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)




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情報提供元: FISCO
記事名:「 高千穂交易 Research Memo(4):システム事業とデバイス事業が2本柱。海外では防火システムも手掛ける(2)