■事業概要

7. 日本化学工業<4092>事業の研究・開発方針
収益性向上に向けて、高付加価値の新製品開発・拡販、利益率の低い汎用製品から特殊用途の高付加価値製品へのシフトも推進している。例えば電池材料のセルシード(コバルト酸リチウム)は、スマートフォン用など利益率の低い民生用から方向転換し、特殊用途向けに注力している。また電子セラミック材料では、車載やIoTなどの高い信頼性が要求される高付加価値分野での事業展開を推進している。

セグメント別売上高営業利益率(連結調整前)の推移を見ると、収益の2本柱である化学品事業と機能品事業は原料価格変動、製品構成差などで変動する傾向がある。化学品事業は利益率が低下傾向だが、機能品事業はMLCC用パルセラムや高付加価値機能材料の需要拡大などによって、構成比とともに利益率も上昇傾向である。なお2020年3月期については、売上の期ずれ、製品構成差、減価償却費の増加などの影響で、各事業とも利益率が低下する形となった。


需要・為替・原料価格変動がリスク要因だが全天候型構造でカバー
8. 収益特性・リスク要因と対策
主な収益特性・リスク要因として、経済状況変化による需要変動リスク、為替変動リスク、原料調達・価格変動リスク、及び化学工業薬品製造販売に関連した法的規制などがある。

需要変動リスクについては最終製品の生産・販売動向の影響を受ける。化学品事業と機能品事業の最終需要先は自動車、家電、半導体・液晶、二次電池、鉄鋼、塗料、製紙、土木、家庭用品、食品、飼料、医薬・農薬と幅広い。また同社が扱う製品の多くは、いわゆる川上分野に位置するため、川下分野に当たる最終製品の需要変動からおおむね4~5ヶ月程度遅れる形で、同社の生産・販売に影響を与える特性がある。

ただし特定業種・顧客への依存度が比較的低い全天候型構造(主要顧客はTDK<6762>だが全売上高に占める割合は1割程度)であり、一部業種・顧客の需要が低迷しても他の業種・顧客でカバーして、リスクを軽減する強みがある。また最終製品の大幅な需要変動に対しても、同社への影響時期にタイムラグがあるため、事前に対策を取ることが可能になる。

為替変動リスクについては、海外から外貨建てで仕入れている原料の価格に影響を与える。為替変動リスクを軽減するため、一部で為替予約によるヘッジを行っている。なお外貨建てで海外向けに直接輸出する比率は小さく、また海外売上比率も小さいため、為替変動による売上面への影響は比較的軽微である。

原料調達・価格変動リスクについては、鉱物資源由来の原料が中心のため、世界的な資源ナショナリズムや環境規制、原料調達先における自然災害などで需給がタイト化する調達リスク、及び相場変動による仕入価格変動リスクがある。これらを避ける対策として、調達は原産国の複数化を含めた複数購買を進めており、特定の原料メーカーとの長期契約により、安定調達を行えるよう対応している。原料価格上昇に対しては製品販売価格改定や自社内での生産性向上・コスト削減などで対応するが、原料価格の急激な高騰で製品販売価格への転嫁が遅れた場合は収益に影響を与える可能性がある。なおコバルトに関しては相場変動に製品販売価格がおおむね連動する形となっている。

化学工業薬品製造販売に関連した法的規制に関しては、1997年4月にレスポンシブル・ケア(RC)基本方針を策定し、環境保全・保安防災・労働安全衛生及び製品安全に関する国内外の法規制遵守、環境を配慮した安全操業などを推進している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)




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情報提供元: FISCO
記事名:「 日本化 Research Memo(5):高付加価値製品へのシフト推進