■要約

クオールホールディングス<3034>は大手調剤薬局チェーンの1社で、調剤薬局店舗数で第2位、売上高で第3位(上場企業ベース)の位置にある。マンツーマン薬局と異業種連携による新業態薬局での店舗展開に特徴がある。調剤以外の分野では、CMR(契約MR)を中心とするBPO事業に加えて、2019年8月に藤永製薬(株)を子会社化し、医薬品製造販売事業に進出した。

1. 2020年3月期はM&A効果と処方箋単価の上昇で2期ぶりの増収増益を達成
2020年3月期の連結業績は、売上高で前期比14.2%増の165,411百万円、営業利益で同9.7%増の7,733百万円と増収増益を達成した。主力の保険薬局事業がM&Aも含めた出店増効果(前期末比39店舗増の805店舗)と、GE(後発医薬品)加算率の推進等による処方箋単価の上昇(前期比5.8%増)により、2ケタ増収増益と好調に推移したことが主因だ。また、BPO事業においてもCMRの派遣数が572人と過去最高を更新するなど順調に推移した。

2. 保険薬局事業は順調に拡大、医療関連事業も製薬メーカーの子会社化で新たな成長ステージに
中長期成長戦略は、従来から一貫しており変更はない。保険薬局事業では「戦略的出店による規模の拡大」と「薬局の価値創出」の2つの軸で臨んでいる。2019年に薬機法が改正され、2020年9月よりオンライン服薬指導が解禁されるほか、2021年からは2類型(地域連携薬局、専門医療機関連携薬局)の認定制度が導入されることとなり、業界大手による集約化の動きが一段と加速すると見られる。同社は既存店の価値創出に取り組むことで収益力を高めると同時に、都市部を中心にM&Aも含めた出店拡大を行うことで保険薬局事業の拡大を目指す。また、経営の安定化を図るため医療関連事業(BPO事業及び医薬品製造販売事業)の規模拡大と高収益化にも取り組んでいく。BPO事業ではCMRの拡大に加えて薬剤師や看護師など医療系人材紹介派遣事業についても成長を加速化させていく。また、医薬品製造販売事業については、グループシナジーの最大化を図ることで規模を拡大し、さらなるM&Aの展開によって飛躍的な成長を目指す。中期業績目標である売上高3,000億円、営業利益250億円の達成に向けた今後の事業展開が注目される。

3. 2021年3月期は新型コロナの影響が9月まで続くことを前提に増収減益で計画
2021年3月期の業績は売上高で前期比0.1%増の165,500百万円、営業利益で同15.9%減の6,500百万円を見込んでいる。新型コロナウイルスの影響が2020年9月まで継続することを前提に計画を策定した。感染を避けるため病院の外来患者数が減少し、処方期間も長期化したことで、4月の処方箋応需枚数が前年同月比で16.9%減と大きく落ち込んでおり、処方箋応需枚数に連動する技術料収入の落ち込みが響く。上期の営業利益で見ると、前年同期比76.7%減の800百万円、金額で約26億円の減益となるが、その大半は保険薬局事業における技術料収入の落ち込みによるものと思われる。ただ、6月以降、感染拡大の動きが収束に向かえば、処方箋応需枚数の減少率も縮小し、業績上振れの可能性も出てくる。新規出店についてはM&Aも含めて50店舗前後を計画している。一方、医業関連事業はCMRの採用・育成を強化し売上拡大を図っていくほか、医療系人材紹介派遣事業についても成長スピードを加速するため分社化したアポプラスキャリア(株)にて積極展開を進めていく計画となっている。

■Key Points
・M&Aの推進で店舗数は前期末比39店舗増の805店舗に拡大、処方箋単価もGE加算率の推進等により上昇
・医薬品製造販売事業を安定収益基盤として拡大し、医療関連事業の規模拡大と収益性向上により売上高3,000億円、営業利益250億円を目指す
・2021年3月期業績見通しは9月まで新型コロナウイルスの影響が続くことを前提に策定

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




<EY>

情報提供元: FISCO
記事名:「 クオールHD Research Memo(1):保険薬局事業の拡大と医療関連事業の育成で総合ヘルスケアカンパニーを目指す