■Jトラスト<8508>の業績動向

1. 2020年12月期第1四半期の業績概要
グループの営業収益の半分以上を海外子会社で計上しており、今後も海外を中心に事業展開を進めていくことから、ほとんどの海外子会社の決算期である12月末に決算期をそろえることで、更なるグローバルな事業の一体運営を推進し、経営情報の適時・適切な開示による経営の透明化をより一層図ることとした。決算期変更に伴い、2019年12月期は2019年4月1日から2019年12月31日までの9ヶ月間の変則決算となった。そのため、2020年12月期第1四半期は2020年1月~3月であるが、比較対象となる2019年12月期第1四半期は2019年4月~6月である。

2020年12月期第1四半期決算では、日本金融事業と韓国及びモンゴル金融事業の営業利益は計画を上回る着地となった。また、同社の業績回復の鍵を握る東南アジア金融事業は、赤字幅を縮小し、引き続き再建に向けて改革を継続中である。

2020年12月期第1四半期の営業収益は19,500百万円(前年同期比1,221百万円増)、営業利益は1,555百万円(同1,074百万円増)となり、通期業績予想に対する進捗率は、それぞれ22.5%、92.5%に達した。また、親会社に帰属する四半期利益も1,541百万円(同1,701百万円増)と、前年同期の赤字から大きく改善した。

2. セグメント別業績
同社グループは、日本で構築したビジネスモデルを海外展開することで、アジアの総合ファイナンシャルグループへと成長を遂げてきた。現在、日本金融事業、韓国及びモンゴル金融事業、東南アジア金融事業、投資事業、非金融事業(総合エンターテインメント事業と不動産事業の合算)の5事業セグメントを展開するが、メインとなる金融3事業が営業収益全体の8割強を占める。2020年12月期第1四半期は、日本金融事業、韓国及びモンゴル金融事業が利益を確保し、東南アジア金融事業、投資事業、非金融事業の損失を補った。

(1) 日本金融事業
日本金融事業には、信用保証業務を中心に事業展開する(株)日本保証、クレジット・信販業務のJトラストカード(株)、サービサー業務(債権回収事業)のパルティール債権回収(株)などがある。国内の消費者金融市場が縮小するなか、2015年9月には実質的に無担保ローン事業から撤退し、不動産関連の保証業務及び債権回収業務に注力する体制を整備した。日本金融事業は、同社グループの強みが生かせる分野を中心に緩やかに成長し、安定的な利益を確保することで、同社グループ全体の利益を下支えする役割を担っている。

2020年12月期第1四半期の日本金融事業は、保証残高及び回収実績は順調に推移し、営業収益は2,366百万円と通期業績予想8,330百万円の28%に、営業利益も1,151百万円と通期業績予想2,930百万円の39%に達し、順調なスタートとなった。韓国及びモンゴル金融事業に次いで高い利益を確保し、営業利益率も高水準で安定している。

日本金融事業では、アパートローン保証を安定的な利益基盤とする一方で、海外不動産担保ローンやクラウドファンディング商品保証など、新たな保証商品への多角化を図っている。2020年3月の債務保証残高の合計は2,129億円となり、前年同期の2,028億円から安定した残高水準で推移している。

不動産関連保証業務における同社グループの強みは、市場ニーズに合わせたオーダーメイド型商品の開発力と、独自の不動産ローン審査力である。同社グループが不動産の評価、審査と信用保証を担い、銀行が融資を行う。地域金融機関と提携して、賃貸住宅ローン(アパートローン)保証業務を中心に保証残高は右肩上がりで増加を続けてきた。しかし、大手銀行の不正融資問題をきっかけに、アパートローン保証は以前のような勢いはない状況だ。ただ、ローンの期間は20年~30年超と長期のため、その間は保証料収入が安定的に入ってくる。

また、同社が保証する物件は、東名阪福の各地域の都市部、徒歩10分程度の駅近物件に集中しており、債務保証を行っている賃貸住宅の入居率は99%を維持している。保証料が高いその他の保証(個人事業主への融資保証等)は、近年、競争が激化していることから取扱いを抑え、保証料が低いものの貸倒リスクが小さいアパートローンへの有担保保証を増やし、ボリュームでカバーすることで利益を確保してきた。

ただ、上記のように、現在は金融機関の審査基準が厳格化していることなどから、当面はアパートローンの保証残高は増加を期待しにくい環境にある。こうした環境下、最近の動きとしては、新たな保証商品としてクラウドファンディング商品の保証(グラフではその他保証に含む)を開始した。日本保証の保証付きクラウドファンディング商品を3本リリースしたところ好評で、いずれも即時に目標額達成となった。さらに、海外不動産担保ローンも徐々に保証提携先銀行が増え、保証残高は増加傾向にある。こうした提携先の拡大や商品の多様化により、今後も保証残高を積み上げる計画だ。

サービサー事業では、日本保証が(株)武富士より承継した簿外債権(請求可能債権)の精査を2019年12月に実施した結果、現在の請求債権残高は約1,300億円に減少している。ただ、債権買取は順調であり、パルティール債権回収が取り扱う請求債権残高は、8,001億円に増加している。業界全体では金融機関等の貸付債権が6割近くを占めるのに対し、同社ではリース・クレジット債権が過半数を占めている。以上から、サービサー事業における債権残高は引き続き合計9,000億円超を保有している。

債権回収業務における同社グループの強みは、多様な債権回収事業会社出身者のノウハウを結集した国内トップクラスの回収力にある。回収力の強さは、金融機関やカード会社などから債権を買い取る際の入札競争においても優位となり、その結果、事業拡大という好循環につながる。今後もこの強みを生かした事業拡大を進めていく方針だ。また、こうした国内事業での債権回収力の強さは、韓国やインドネシアでも生かされていると言える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)




<YM>

情報提供元: FISCO
記事名:「 Jトラスト Research Memo(3):日本金融事業、韓国及びモンゴル金融事業を中心に業績は回復基調(1)