■クリーク・アンド・リバー社<4763>の業績見通し

2. 事業セグメント別見通し
(1) クリエイティブ分野(日本)
クリエイティブ分野(日本)の売上高は前期比8.9%増の26,800百万円、営業利益は同24.4%増の1,635百万円となる見通し。映像、ゲーム、Web分野を中心にエージェンシー事業やプロデュース事業の安定成長が続くほか、新規事業(建築、ファッション、シェフ、コンピュータサイエンス、ドローン、舞台芸術、ライフサイエンス、語学、アスリート、CXO)への取り組みを強化し、収益化を図っていく方針。

分野別で見ると、映像分野はテレビ・映画製作などの停滞が懸念されるものの、動画配信サービス向け等の伸びにより堅調な推移が見込まれる。ゲーム分野についても、「クリエイティブアカデミー」を通じた人材育成により旺盛な需要に対応していく。現在、同アカデミーについては、感染症対策のためオンラインでの小規模開催で対応している。また、子会社のクレイテックワークスについては、受託開発案件を中心に取り組んでいく方針で、利益面では黒字に転じる見通しだ。Web分野についても、官公庁や民間からの引き合いが堅調に推移しており、増収増益を見込んでいる。

VR分野では新たな取り組みとして、社員の教育・研修用ソリューションとして「ファストVR」を開発し、2020年4月よりサービス提供を開始している。教育・研修用のVRコンテンツをユーザー自身で手軽に制作・利用するためのツールで、ユーザー自身が撮影した動画をVRコンテンツに編集するアプリ「ファストVRエディター」、作成したコンテンツをコントロールする「ファストVRコントローラー」、VRゴーグルで視聴するための「ファストVRプレイヤー」を標準セットとして年間150万円で提供する。5Gの商用サービス開始に伴い、製造業やサービス業の現場で、VRを活用した教育研修、トレーニングなどのニーズが高まると見ており、ユーザー自身で手軽にコンテンツを制作できるツールを提供することでVRの普及促進を図っていく戦略だ。また、充実したコンテンツを希望するユーザーに対しては、個別でコンテンツ制作についても受託する。既に、スーパーマーケット大手のベルク<9974>に導入したことを発表しており、今後のVR事業の拡大につながる取り組みとして注目される。

(2) クリエイティブ分野(韓国)
クリエイティブ分野(韓国)の売上高は、CREEK & RIVER ENTERTAINMENT(テレビ局向けエージェンシー事業)を子会社化したことで、前期の68百万円から3,770百万円と急拡大する見通し。ゲーム分野だけでなく、動画やアニメなどのコンテンツ配信で日本や中国などと連携する機会が増えており、今回、子会社化することとなった。韓国のエンジニアを日本に紹介する取り組みも推進していく予定で、今後のシナジー効果が期待される。韓国でのエージェンシー事業の収益性はまだ低く、営業利益は2社合わせて20百万円の見込みとなっている。

(3) 医療分野
医療分野の売上高は前期比10.6%増の4,500百万円、営業利益は同8.1%増の800百万円となる見通し。事業拡大に伴う人員増並びにシステム投資を行う予定で利益率は若干低下するものの、旺盛な医師需要を背景とした紹介件数の増加が見込まれる。新規事業(M&A、事業承継、開業支援、読影サービス等)については2021年2月期も前期並みの投資を実施する予定で、収益化については2022年2月期以降となりそうだ。なお、「レジナビフェア」については6月まで開催を中止することが決まっており、売上げへの影響額は1億円程度と見られる。

(4) 会計・法曹分野
会計・法曹分野の売上高は前期比10.3%増の2,340百万円、営業利益は同11.8%増の260百万円となる見通し。会計分野では、現在4.2万人となる会計士・税理士等のネットワークをさらに広げていくとともに、会計事務所の事業承継支援や、会計事務所勤務経験者を対象とした「在宅ワーカー紹介サービス」等の提供を進めることで収益拡大を図る。

また法曹分野については、人員増強及び拠点の拡大による事業基盤の強化と、弁護士ネットワークの拡大により収益拡大を進めていく。また、2019年8月より開始した病院向けの「院内弁護士」紹介サービスの取り組みも引き続き強化していく。

(5) その他の事業
子会社8社※で構成するその他の事業の売上高は前期比56.7%増の2,890百万円、営業損失は90百万円(前期は131百万円の損失)を見込む。

※韓国の子会社についてはクリエイティブ分野(韓国)のセグメントに異動。伸び率は異動を考慮したベースで算出。


リーディング・エッジ社に関しては、引き続き「Python」に精通したエンジニアの採用・育成に取り組み、ロボット・AI業界等向けの派遣サービスの拡大を見込む。一方、Idrasysについては、先行投資が続き若干の赤字を見込んでいる。またVR Japanについても、新型コロナウイルスの影響でVRゴーグルの中国製造拠点が一時的にストップしたため販売数が計画を下回った。今上期は減収となり下期以降の巻き返しを目指している。同様にインター・ベルについても客先店舗の休業により派遣需要が落ち込んでおり、減収減益となる可能性が高い。米国のCREEK & RIVER Global(カリフォルニア州)は、外出禁止令が出るなかで弁護士の紹介業務も直近はほぼストップしているが、企業からの法務関連の相談は今後増加することが予想されるため、その動向が注目される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




<YM>

情報提供元: FISCO
記事名:「 C&R社 Research Memo(10):クリエイティブ分野を中心にすべての事業セグメントで増収増益を目指す