■成長戦略

1. 成長戦略の方向性
これからもIoTやブロックチェーン、仮想通貨、自動運転など、新しいテクノロジーが出るたびに、新たなデジタルリスクの発生が予想されるが、それらのデジタルリスクに対応する形で事業領域の拡張を目指す方向性である。エルテス<3967>はこれまでも、SNS上のオープンデータの収集・解析(風評ダメージや炎上対策)から始まり、組織内ログデータ(情報漏えい対策)、勤怠・入退室データ(生産性向上)など、より機密性の高いデータへと分析対象を拡げることで、顧客企業に対するソリューションの幅(影響範囲)も拡げてきたが、今後も、増加するデジタルデータを分析対象に加え、ソリューションの拡大をねらう。

加えて、デジタルリスクから派生する新たな社会課題(テロ対策、電子政府化、金融犯罪対策等)の解決にも貢献していく。また、本人認証技術の活用についても、既述のとおり、サイバネティカとの連携により本格展開を開始したほか、ブロックチェーンの活用についても、プロジェクト化に向けた準備を進めているようだ。

2. 今後の成長イメージ
同社は、具体的な中期経営計画を公表していない。ただ、今後の成長イメージとして、積み上げ型の「ソーシャルリスクサービス」及び「内部脅威検知サービス」が、顧客基盤の拡大やアップセルにより着実な成長を持続するとともに、ポテンシャルの大きな新サービス(電子政府関連など)による大幅な事業拡大(非連続な成長)を目指している。

弊社でも、デジタル化の進展に伴う新たなリスク対策ニーズの拡大に加えて、今回の新型コロナウイルス感染症拡大がデジタル化の流れを一気に加速させる可能性が見込まれるなかで、他社に先行して優位性を構築してきた同社にとって、中長期的にも高い成長率を持続することは可能であると見ている。特に、着実に導入数が増えている「内部脅威検知サービス」は、潜在的な市場規模が大きく、競合も少ないことから圧倒的なポジショニングを確立する可能性が高い。2020年1月にリリースした「AIリスク管理プラットフォーム」の進化が、事業拡大に向けた転機になるかどうかがポイントと言える。また、新たに開始した「従業員感染リスク管理プラットフォーム」によるプレゼンス向上をはじめ、ポテンシャルの大きい情報共有技術や本人認証技術の活用(電子政府関連等)についても、将来を見据えた先行投資により早い段階で事業を立ち上げ、実証実験等を積み上げていく同社の戦略は、理にかなったものと評価している。今後は、具体的な実績を示していくことがより重要なテーマとなってくるだろう。ただ、注目されている電子政府関連については、「デジタル手続法(デジタルファースト法)」の成立(2019年5月)により前進はしたものの、努力義務となっている地方自治体への完全普及には時間を要すると見られる。また、行政手続きのデジタル化はマイナンバー制度の活用が前提となるため、マイナンバーカードが健康保険証として使えるようになる2021年3月以降に、ブレークスルーを迎える可能性が高い。いずれにしても、IT先進国のエストニアにて導入実績のある情報共有技術や本人認証技術をいかに活用していくのかが成功要因となるだろう。これからも新規事業の進捗を含め、具体的なソリューション実績や案件の拡がりをフォローするとともに、事業拡大に向けた社内体制の強化をはじめ、他社との連携やM&Aなど外部リソースの活用にも注目したい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)




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情報提供元: FISCO
記事名:「 エルテス Research Memo(8):テクノロジーの発展に伴うデジタルリスクに対応。事業領域の拡張による成長加速へ