■今後の見通し

2. 2020年12月期の事業方針
2020年12月期の事業方針としては、SNSマーケティング支援事業の拡大を目指すと同時に、利益率の高いサービスへのリソース再配分とコスト見直しを実施し、収益体質を強化することを掲げている。

会社ごとの収益強化施策としてホットリンク<3680>では、利益率の高いSNS広告・コンサルティングと新サービスPGC(Professional Generated Content)に人材リソースを再配置していく。また、「BuzzSpreader」の新機能(AI搭載ツール)開発に関しては一旦区切りをつけ、同機能を社内で活用して生産性を高めていくと同時に、開発人員を成長率の高いSNS広告・コンサルティングの業務システム開発に振り向けることで人員の増加を抑制していく方針となっている。

また、トレンドExpressでは2019年12月に調達した資金で新規プロダクトの開発や人員強化、越境EC事業の加速、M&Aの推進を図っていくほか、2020年1月に協業先であった普千をグループ子会社に取り込んだことで、売上原価(外注費)の削減効果を見込んでいる。普千を取り込んだことで5%ほどの売上原価率の低減効果が期待できる。当初は2020年12月期での営業黒字化を目指していたが、新型コロナウイルス感染症拡大による中国景気の冷え込み等が懸念されており、黒字化の時期が2021年12月期にずれ込む可能性が出てきている。

Effyisに関しては前述したとおり、新規開拓事業の見直しと選別、並びに不採算プロジェクトの停止を行っており、レイオフを含む適切なコストカットの実施により2020年12月期の営業利益黒字化を見込んでいる。

市場別の戦略は以下のとおり。

(1) 日本市場
日本市場では、データ分析を強みとしたSNSマーケティング支援事業での売上拡大を目指していく。UGC(ユーザー生成コンテンツ=クチコミ)が出にくい商材についても効果的なマーケティングを可能とする新サービスとして2019年後半よりPGCサービスを開始しており、新規顧客の開拓だけでなく既存顧客向けの深掘りによる顧客単価アップにも取り組んでいく。PGCとはプロが作るコンテンツのことで、タレントや専門家など影響力の強い人材を起用してSNS動画や記事コンテンツなどを作成し、従来のUGC施策(ULSASS)と組み合わせることで、SNS上でのクチコミ数を持続的に増やし、対象となる商品の売上寄与につなげていくサービスとなる。

また、同社には無い強みを持つ同業他社との提携を積極的に進めることで、多様な顧客ニーズに応えられる体制を整え受注獲得機会を増やしていく戦略だ。具体的な動きとしては、2019年11月に効果的な話題になる施策づくりを得意とする(株)エードットと業務提携を締結したほか、2020年2月にはデジタルマーケティング支援ツールを開発するシャトルロックジャパン(株)と販売代理店契約を締結、また、女性向けコンテンツ開発を得意とする(株)Morning Laboと業務提携を締結した。今後も同社にない強みを持つ企業があれば提携戦略を進め、サービスラインナップの強化を図っていく方針となっている。

なお、ソーシャルメディア分析ツールの「クチコミ@係長」については、前期並みの水準を想定している。国内事業での人員についてはマーケティング支援サービスの営業体制強化を目的に数名程度の増員を予定している。

(2) 中国市場
トレンドExpressでは中国子会社と協業先の普千の経営統合により、新たに数慧光(上海)商務諮詢有限公司を2020年1月に設立し、中国本土市場を中心とした中華圏におけるマーケティング支援事業の更なる成長を目指していく。また、中国現地のニーズを迅速に摘み取り、新規事業・サービスの創出につなげるため、日本本社に設置していた新規プロダクト開発部門を新会社に移管した。

人材投資は引き続き積極的に行っていく方針で、2020年は中国を中心に15〜20名程度の増員を予定している。ただし、新型コロナウイルス感染症の動向次第では見直す可能性もあるとしている。同感染症患者が1月下旬以降、中国で拡大しているが、経済にも大きな影響を与え始めている。同社の事業面にも影響が及んでおり、マスクや衛生用品の急激な需要拡大が同社の収益の伸びにつながる可能性が考えられる。一方で消費全般が冷え込んでいるほか、物流機能の麻痺や中国での工場稼働がストップしていることで需要はあっても商品の供給そのものが不足するといった影響が出ており、全体で見ればマイナスに作用していると見られる。感染症問題が落ち着けば、需要そのものは旺盛なだけに高成長軌道に復帰する可能性が高いと弊社では見ている。

(3) グローバル市場
Effyisでは事業構造改革の実施により収益体質は改善しており、2020年は再度、営業黒字化を目指すことになる。固定費の削減効果で1億円強見込まれるほか、前期に低下した利益率の高いソーシャルメディアデータの販売に注力し、販売構成比の変化による利益率改善も進めていく。

また、新たな取り組みとしてダークウェブデータの販売を2020年前半にも開始し、リスクマネジメント領域の需要を取り込んでいく。ダークウェブは通常のキーワード検索やブラウザではアクセスできないWebサイトで、個人情報の売買や麻薬取引、マネーロンダリング、テロ活動の情報交換の場として利用されており、犯罪の温床にもなっている。ここ数年で、企業や政府などのセキュリティ対策の一環として、リスクマネジメントに対する予算が増えており、一定の需要と収益化が見込めるものと判断して事業化する。データの取得方法はクローリングになるが、一般的な手法で取得することは困難で高度なノウハウが必要となる。クローリングによるデータ収集のためコストはほとんど掛からず、利益率の高い商材になると見られる。全体の売上に与える影響は軽微だが、利益率の向上に寄与することが期待される。

また、独自分析によるデータの付加価値化にも取り組んでいく。例えば、ロシア語のデータを英語に自動翻訳して販売するなど利用者の使い勝手が良いスタイルにデータを加工することで付加価値を取っていく戦略となる。顧客ターゲットは、リスクマネジメント会社やブランドメーカーなど最終顧客となる。人材については前期末までに適正水準に見直したため、2020年12月期は現状維持の予定となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 ホットリンク Research Memo(9):2020年12月期はSNSマーケティング支援事業の拡大を目指す