■アンジェス<4563>の業績動向

3. 財務状況と新たな資金調達について
2019年12月期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比4,473百万円増加の12,524百万円となった。主な増減要因を見ると、流動資産のうち現金及び預金は4,255百万円の増加となった。新株予約権の行使に伴う入金が7,718百万円のうち、一部を事業費用に充当した。また、「ナグラザイム®」の販売終了に伴い売掛金が254百万円減少したほか、原材料の評価替え及び臨床試験への使用に伴い、原材料及び貯蔵品が358百万円減少し、外注試験の終了に伴い前渡金が192百万円減少した。固定資産は、今後の成長に向けた開発パイプラインの拡充を目指してEmendoやMyBiotics Pharmaへ投資を実施したことで、投資有価証券が1,017百万円増加した。

負債合計は前期末比153百万円増加の469百万円となった。主に海外提携先との研究開発費用等の計上により、買掛金が70百万円増加したほか、海外提携先からの研究費用の預り金が54百万円増加した。純資産は同4,320百万円増加の12,055百万円となった。親会社株主に帰属する当期純損失3,750百万円の計上により利益剰余金が減少した一方で、新株予約権の行使により資本金及び資本剰余金がそれぞれ3,896百万円増加した。また、投資有価証券評価損を計上したことに伴い、その他有価証券評価差額金が243百万円増加した。

なお、同社は2020年3月4日付で第37回新株予約権(第三者割当て)を発行し、当初の行使価額584円(下限行使価額は292円)を前提に約93億円の資金調達を行うことを発表している。潜在株式数は1,600万株で希薄化率は13%となる。資金調達の目的は、海外の市場を含めた更なる開発パイプラインの拡充のための資金(45億円)、HGF遺伝子治療用製品の原薬の製造委託費用(16.5億円)及び運転資金(32億円)となる。開発パイプラインの拡充手段としてはライセンス導入や共同開発、事業提携や資本参加、M&A等を想定している。

2019年12月期末時点の現金及び預金残高は約100億円となっており、今後も前期並みの損失が続いたと仮定すると3年程度で事業資金が枯渇することになる。当面、継続収入として期待できるのは「コラテジェン®」の国内販売のみであり、金額的にも年間数千万円程度にとどまるものと予想される。米国で開発が順調に進んだとしても上市時期は早くて2023年以降となる。NF-κBデコイオリゴや高血圧ワクチンのライセンスアウトによる一時金が入る可能性もあるが、財務リスクを回避するために現段階から資金調達を進めておくことは妥当と判断される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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情報提供元: FISCO
記事名:「 アンジェス Research Memo(7):新株予約権を新たに発行し、パイプラインの更なる拡充を進める方針