■要約

テノックス<1905>は、杭工事など基礎工事に特化した建設事業を行っている。基礎工事は、住宅やマンション、商業施設、道路、鉄道高架橋などを目に見えないところで支えており、品質が良くて当たり前という施工への信頼が非常に重要な事業と言える。また、大地震への備えや、大型台風、集中豪雨の頻発を背景とした自然災害などへの防災意識の高まりなどから、近年、一般の人からの注目も集まっている。なかでも同社は、業界のパイオニアとしての専業企業であり、中低層建築物向けに広く浸透しているテノコラム工法や、高速道路や鉄道などの土木工事に用いられるガンテツパイル工法を開発するなど、国内有数の技術力を誇っている。長年培ってきた同社の経験やノウハウは、社会的にも大きな財産と言って過言ではない。

同社の基礎工事は建設事業セグメントに分類される。高架橋などの土木構造物や建築構造物などにおける杭工事と地盤改良工事を得意とし、様々な構造物や地盤、また施主の要望に対応するため、同社の保有する各工法や施工ノウハウを駆使して最善の基礎工事を提供することができる。セグメント別では建設事業が業績の大半を占めるが、ほかに土木建築コンサルティングや不動産賃貸事業などを行っている。同社の特徴は、請負契約上はゼネコンの下請けだが、バリューチェーンという点で川上の設計専業者と直接つながっていることにある。そして、地盤と構造物に最適な工法を開発する開発力、直接設計専業者とつながる提案力、確実に工事を進行する高品質な施工力——の3つの力を強みに、設計から施工まで一貫した体制で臨んでいる。

今後予想される受注環境や社会情勢の変化などから、同社は経営環境を厳しく見ている。このため、1)市場や顧客から求められる安全や品質面での信頼性の確保、2)新技術や新サービスの創出による新たなイノベーション、3)生産性の向上、4)受注力の強化、5)将来の中核セグメントとしての海外事業の橋頭堡づくり——といった5つをテーマに掲げ、市場ニーズの変化にいち早く対応、新技術や新サービスの創出、新市場や海外事業といった成長事業に取り込んでいく方針である。その結果、創立50周年の2021年3月期に、売上高220億円、経常利益15億円、ROE8%以上を目指す。さらに、テノックスブランドを向上させ、新たなステージへ向かって進化していくことで、2022年3月期以降も一層の収益拡大につなげる考えである。

2020年3月期第2四半期の業績は、売上高88億93百万円(前年同期比23.1%減)、営業利益5億97百万円(同19.4%増)となった。北陸新幹線の高架橋杭工事が寄与したものの、東日本大震災復興関連工事のピークアウトなどにより減収、一方、前期に計上した施工不具合に伴う工事関連費用の解消などにより増益となった。同社は2020年3月期業績見通しを、売上高210億円(前期比1.1%増)、営業利益11億50百万円(同20.6%増)と見込んでいる。新名神高速道路関連の杭工事の増加などにより増収、リスク管理の徹底や経営資源の効率的配置などにより増益が予想される。中長期的には、大阪・関西万博や鉄道関連など開発案件が目白押しで、弊社では同社が想定する以上に堅調な動きとなる可能性もあると考えている。

■Key Points
・杭工事や地盤改良工事など基礎工事のパイオニア
・2020年3月期通期で売上・利益ともに成長回帰
・2021年3月期には経常利益15億円を目指す

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)




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情報提供元: FISCO
記事名:「 テノックス Research Memo(1):杭打ちなど基礎工事のパイオニア