■業績動向

2. サービス別売上動向
(1) コンテンツプラットフォームサービス
コンテンツプラットフォームサービスの売上高は前期比1.2%増の581百万円と会社計画(617百万円)を下回ったものの増収を維持した。半期ベースで見ると上期が前年同期比8.1%増と順調に拡大したが、下期に同5.5%減と失速した格好となっている。これは第3四半期以降、「はてなブログ」等のメディアと接続しているアドネットワーク(GDNやYDN等10社以上)の一部と、一次接続ができなくなったことで入札参加型広告主が減少し、その結果、広告単価が下落したことが影響したとはてな<3930>では分析している。接続できなくなった原因については、接続先事業者から開示されないため不明だが、現在、相手先と協議は進めており、遅くとも2020年春までには再接続を図る予定にしている。

なお、2019年1月に「はてなダイアリー」のサービスを停止し、「はてなブログ」に統合したことや、「人力検索はてな」等のレガシーサービスへの訪問者数減少により、当第4四半期の月間ユニークブラウザ数は1.96億UBと、第2四半期の2.38億UBから18%ほど落ち込んだが、売上面での影響は軽微で逆に開発費やサーバー費用の削減が図られ利益面ではプラスに寄与している。

主力の「はてなブログ」や「はてなブックマーク」の訪問者数については順調に増加しており、登録ユーザー数も前期末比23%増の876万人と伸びが加速した。また、「はてなブログPro」等の課金収入についても、規模は小さいながら好調に推移したようだ。TwitterやFacebookなどSNSを使って情報発信する人が増加傾向にあるなかで、さらに深い情報を発信したいユーザーが、同社の「はてなブログ」を利用するようになり、また、ヘビーユーザーが有料プランを利用するといった流れができつつあるものと思われる。

(2) コンテンツマーケティングサービス
コンテンツマーケティングサービスの売上高は前期比16.2%増の852百万円と2ケタ成長が続き、会社計画(750百万円)に対しても上回って推移した。企業のオウンドメディアとなる「はてなブログMedia」の運用件数が前期末比28件増の75件となり、会社目標の65件を上回ったことが主因だ。増減の内訳を見ると、新規開設数が37件(前期実績19件)、解約数が9件(同8件)となっており、新規開設数の大幅増が目立った。

使いやすいUIや高いシステム安定性、検索エンジンで上位表示されやすいサイト構造の実現に向けた開発力などが引き続き評価されているほか、2018年7月期から提供サービスプランに「レギュラー」「ライト」の2プラン制を導入し、大企業からベンチャー企業まで幅広い企業層に対して提案訴求してきたことが運用件数の増加につながっている。特に、ここ1~2年は企業がデジタルマーケティングや人材採用・広報を目的としたオウンドメディアを開設する動きが活発化しており、こうしたニーズをうまく取り込めているものと考えられる。

運用件数の伸びに対して増収率が低いのは、ライトプランを利用する企業が増えていることや、人材採用のオウンドメディアが増加していることなどが要因となっている。人材採用向けのオウンドメディアについては、顧客の担当部署が人事部となるため予算も限られており、当初は基本的なサービスのみで利用するケースが多く、コンテンツ作成や拡散のための広告掲載なども少ないためだ。なお、解約理由についてはオウンドメディアの更新停止や統合、他社サービスの利用など顧客先の事由によるもので、商品力そのものには問題ないと同社では考えている。

(3) テクノロジーソリューションサービス
テクノロジーソリューションサービスの売上高は前期比38.4%増の1,087百万円と大幅増収となった。会社計画(1,155百万円)に対して若干下回ったが、これは受託開発案件で期ずれが発生したことが主因となっている。

受託サービスのうち、受託開発では任天堂が2018年12月に発売した「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」における「ニュース・お知らせ機能」の開発を行ったほか、同ソフトと連動したゲーム専用のスマートフォンサービス「スマプラス」を共同開発し、2019年4月より提供を開始した。任天堂の共同開発事例は、「うごメモシアター/うごメモはてな」「Miiverse」「イカリング2」に続く4例目となり、今後も共同開発の受注が期待される。

また、マンガビューワ「GigaViewer」については、新たに(株)ヒーローズのマンガ雑誌「月刊ヒーローズ」公式サイトや、(株)リイド社のマンガサービス「コミックボーダー」、(株)オーバーラップのマンガサービス「コミックガルド」に採用され、合計8件(前期末比5件増)となった。「GigaViewer」や受託開発案件の保守運用サービスの増収率は前期比34.6%増となっている。

サーバー監視サービス「Mackerel」の累積顧客指数は前期末比44.1%増と高成長が続いた。クラウドサービスの普及拡大を背景に、AWS(アマゾンウェブサービス)を利用する企業に対して導入が順調に広がっている。主には展示会の出展やオンラインで顧客の獲得を進めているが、2018年8月にはAWS最上位コンサルティングパートナーであるクラスメソッド(株)と販売代理店契約を結び、「クラスメソッドメンバーズ」の監視オプションに採用されたことも契約数の増加につながった。

さらに、新機能の開発も順次進めており製品力の向上を図っている。2019年2月に「Mackerelコンテナエージェント」のβ版をリリースし、同年7月に正式リリースした。仮想化技術の1つでニーズが高まっている「コンテナ」の監視に対応したサービスとなる。また、同年3月に「ロール内異常検知」のβ版をリリースし、同年8月に有料オプションサービスとして正式リリースした。同機能は機械学習技術により、複雑だった監視ルールの設定とメンテナンスを不要とし、簡単な監視項目の設定のみでサーバーの異常検知を可能にする機能となる。こうした機能の強化を進めていくことで、サーバー監視サービスの需要を取り込んでいく戦略となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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情報提供元: FISCO
記事名:「 はてな Research Memo(4):「Mackerel」等のBtoB向けストック型ビジネスが好調