■業績の動向

●2019年6月期決算の概要
トラスト・テック<2154>の2019年6月期決算は、売上高81,596百万円(前期比24.8%増)、営業利益5,719百万円(同33.1%増)、経常利益5,606百万円(同32.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益3,706百万円(同44.3%増)と大幅増収増益となり、売上高、営業利益は過去最高を更新した。また、同社がKPI(重要業績評価指標)として位置付けるEBITDA(営業利益+のれん償却+減価償却費+買収一時費用)は6,843百万円(同28.3%増)となった。

EBITDAの6,843百万円という値は、当期まで同社が取り組んでいた中期経営計画において、2021年6月期の数値目標としていた6,217百万円※を超えるものだ。すなわち中期経営計画を2年前倒しで達成したということになり、後述するように同社に中期経営計画の刷新を決断させる大きな理由となった。

※中期経営計画で方針としていた「年率20%以上の成長スピード維持」、「連結営業利益率10%以上の達成」の2つを元に利益成長年率約25%を目標として同社が算出・表示(詳細は中長期の成長戦略と進捗状況の項を参照)


事業セグメント別の詳細動向は以下のとおりとなっている。

(1) 技術系領域の動向
技術系領域は売上高40,439百万円(前期比20.5%増)、EBITDA5,506百万円(同25.2%増)と大幅増収増益となった。輸送用機器や電気機器などの売上構成比の高い需要先が堅調に伸長したことに加え、同社が特に注力しているIT・ソフト開発の領域が高い伸びを示し、目標とする前期比20%成長を達成した。

期初予想との比較では売上高が1.9%、EBITDAが6.2%、それぞれ未達となった。米中貿易摩擦の激化により半導体関連業界向けの技術者派遣が計画を下回ったことや稼働数が期初計画に届かなかったことが主な要因だ。こうした需要変動は半導体業界のように局所的な動きにとどまっており、他の業界は押しなべて堅調な推移となった。

そうした実態面での力強い需要を反映し、契約単価は順調に右肩上がりが続いた。また、技術者の社員数は、中途採用に加えて新卒者の採用も加速させたため、2019年6月期末時点では6,273名に達した。稼働率は97%前後の実質的なフル稼働状態が続いていたが、第4四半期には94.9%に低下した。これは大量の新卒者採用に伴う一時的なもので、技術者の需給バランスの変化を示唆するものではない。

(2) 製造系領域
製造系領域は売上高9,989百万円(前期比0.9%増)、EBITDA561百万円(同4.8%増)となった。製造系領域ではかねてより利益率を重視し、5%の営業利益率(製造系領域においてはEBITDAマージンとほぼ同義)の維持を重要な経営目標としている。2019年6月期も地域密着型営業を基本戦略に、高単価案件の受注獲得に努めた。しかし採用者数が想定を下回ったため、売上高は前期比横ばい、期初予想比では9.2%の未達となった。しかし利益面では、採算性重視の施策を徹底したことにより、前期比4.8%増益を達成し、期初予想との比較でもほぼ予想どおりとなった。

(3) 海外領域
売上高は31,308百万円(前期比42.5%増)、EBITDA878百万円(同84.4%増)と大幅増収増益となった。2017年12月に取得したGap Personnelが2019年6月期はフル寄与となったほか、2018年8月に子会社化したQuattroの業績が10ヶ月分加わったことで大幅増収となった。利益面でも、売上同様、Gap Personnel、Quattro両者の連結効果に加え、MTrecの収益も上期を底に下期にボトムアウトしたこともあり、前期比増益のみならず、期初予想に対しても大幅に上回った。2019年6月期の注目点は、営業利益が黒字転換を果たしたことだと弊社では考えている。これまではのれんの償却負担が重く、営業損失が続いていた。営業利益の黒字転換は償却が進んだことも一因であるが、それ以上に英国3子会社で収益性の改善が着実に進んでいることを物語っていると弊社ではみている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)




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情報提供元: FISCO
記事名:「 トラストテック Research Memo(4):大幅増収増益で、過去最高を更新して着地