■業績動向

1. 過去の業績推移
過去の業績推移を振り返ると、主力である投資用ワンルームマンションにおける販売戸数の拡大がアーバネットコーポレーション<3242>の業績をけん引してきた。2011年6月期に業績が落ち込んでいるのは、2008年のリーマンショックの影響などによる金融引き締めを背景として、しばらく開発物件を凍結していたことによるものである。しかし、2011年6月期をボトムとして、金融緩和の動きとともに、順調に開発物件を積み上げることで業績は回復から拡大基調をたどっており、2019年6月期は過去最高業績を更新している。特に、投資用ワンルームマンションの売れ行きが好調であることや、海外投資家や事業会社等への1棟一括直接販売による販売単価の上昇もあいまって、経常利益率も10%前後の水準で推移している。

一方、財務面では、開発物件の積み上げなどに伴い有利子負債残高も増加傾向にあるが、内部留保の蓄積に加え、2015年6月には新株発行(約13億円)を実施したことにより、自己資本比率は30%前後で推移してきた。なお、2014年6月期以降、その他(固定資産)が拡大しているのは、安定収益源の確保や融資担保となる賃貸収益物件の取得を進めてきたことに加えて、新たに進めているホテル開発プロジェクトによるものである。ただ、2019年6月期の資産残高の伸びが緩やかなのは、適正利回りでの用地取得が困難になってきたことが理由であり、それに伴って有利子負債残高も僅かに減少している。

2. 2019年6月期業績の概要
2019年6月期の業績は、売上高が前期比24.9%増の20,084百万円、営業利益が同28.7%増の2,148百万円、経常利益が同32.8%増の1,913百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同32.5%増の1,310百万円と大幅な増収増益となり、売上高では過去最高業績を更新した。また、2018年12月13日付の増額修正予想をさらに上回る着地となっている。

堅調な不動産市況を背景として、「不動産開発販売」が大きく伸長した。自社開発による投資用マンション等の販売戸数は671戸(前期比115戸増)に拡大。そのうち、投資用マンション5棟357戸(前期は2棟136戸)が販売効率の高い1棟一括直接販売となっており、業績の底上げに寄与している。また、「その他(不動産賃貸業等)」についても、自己保有の賃貸収益物件の安定稼働により堅調に推移している。

利益面でも、用地価格の高騰や建築費の高止まり等により開発コストが大きく増加しているものの、増収効果に加えて、1棟一括直接販売が多かったことなどにより大幅な営業増益を実現。営業利益率も10.7%(前期は10.4%)に改善している。

財務面では、「現金及び預金」及び「販売用不動産」の増加により、総資産は前期末比6.8%増の30,467百万円に拡大。その結果、総資産300億円、現金及び預金50億円以上という目標は達成されたものの、「仕掛販売用不動産」が減少しているところには注意が必要である。前述のとおり、用地価格の高騰等により、適正利回りでの用地取得が困難な状況となっていることが理由である。一方、自己資本は内部留保の積み増しにより同12.2%増の8,356百万円に拡大したことから、自己資本比率は27.4%(前期末は26.1%)に改善。有利子負債は長短を合わせて18,076百万円(前期末比2.1%減)とわずかに減少した。

キャッシュ・フローの状況についても、増収効果に加えて、用地仕入れのペースが鈍化した影響により、営業活動によるキャッシュ・フローは大幅な増加を記録。一方、投資活動によるキャッシュ・フローはホテル開発プロジェクトの進行に伴ってわずかに減少となったほか、財務活動によるキャッシュ・フローも借入金の返済等により減少となったものの、営業活動によるキャッシュ・フローの増加が大きかったことから、期末の「現金及び現金同等物」残高は大きく増加している。

3. ホテル開発プロジェクトの進捗
2018年より開始した自社開発ホテルプロジェクトの第1号「ホテルアジール東京蒲田」も順調に進捗している(2020年5月頃の竣工予定)。「蒲田駅」から徒歩3分の好立地や優れたホスピタリティを特徴とし、1名から2名での利用はもちろん、ファミリー利用(国内外からの3名から6名までの利用者をメインターゲット)も可能な全客室48室(地上15階)を予定している。また、次のプロジェクトについても、開発用地を物色中のようである。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)




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情報提供元: FISCO
記事名:「 アーバネット Research Memo(5):好調な外部環境を追い風に、販売戸数の拡大が業績をけん引