■業績動向

1. 2019年12月期第2四半期累計業績の概要
ケアネット<2150>の2019年12月期第2四半期累計の連結業績は、売上高で前年同期比4.1%減の1,362百万円、営業利益で同0.7%減の237百万円、経常利益で同6.4%増の227百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益で同9.4%増の143百万円となった。売上高は医薬営業支援サービスが同3.6%減、医療コンテンツサービスが同7.2%減といずれも減収となった。特に医薬営業支援サービスでは、厚生労働省が策定した「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」が2019年4月に施行されたことに伴い、主要な取引先において審査及び新規案件の意思決定に若干の遅れが生じたことが影響した。

一方で、サービス原価の継続的な見直しに取り組んだことで売上原価率が低下し、営業利益率は前年同期比で0.6ポイント上昇の17.4%となった。販管費の増加により営業利益は若干の減益となったものの、営業外の貸倒引当金繰入額が前年同期比17百万円減少したことにより、経常利益は増益を維持した。

また、期初会社計画比では新ガイドライン施行の影響や医療コンテンツサービスのうちDVD販売の落ち込みが大きかったことにより売上高は未達となったが、利益面では原価低減効果によりすべての項目で上回った。また、同社は第1四半期決算発表時に、新ガイドラインの影響を勘案して業績修正を行ったが、その後に営業活動を強化した効果により、売上高、利益ともに上回って着地している。事業セグメント別の動向は以下のとおり。

(1) 医薬営業支援サービス
医薬営業支援サービスの売上高は前年同期比3.6%減の1,181百万円、営業利益は同15.6%増の593百万円となった。新ガイドラインの施行により、eプロモーション案件の内容に関する顧客側の審査手続きが従来よりも厳格化されたことにより、プロモーション開始時期や新規案件の受注時期の遅れが生じたことが減収要因となったが、第2四半期(2019年4月-6月)だけで見れば前年同期比11.5%増と回復に転じており、落ち込みは一時的なものと弊社では見ている。実際、スペシャリティ医薬品に関するプロモーション案件の需要は旺盛で、新規顧客の獲得も進んでいる。売上高は減少したものの、営業利益率は前年同期の41.9%から50.3%と大きく上昇した。サービス原価の見直しを継続的に取り組んできた効果が出ている。

なお、2018年11月より「CareNet.com」内にオープンした専門医向けのソーシャル機能を備えた医療・医学ニュースサイト「Doctors’ Picks」については、順調にPick数が増加している。同サイトは、主にオンコロジー領域、疾患の見分け方、学会発表論文や重要なニュース等をテーマに、各領域のKOL(キー・オピニオンリーダー)やYOL(ヤング・オピニオンリーダー)と呼ばれる医師等が、解説や意見等のコメントを付けて共有する投稿型ニュースサイトとなる。専門性の高い医療情報をKOL等の解説・意見も含めて効率的に収集できることに加えて、医師限定かつ実名での利用に限定していることから、医師同士のコミュニケーションが生まれ、ネットワークが広がりやすく、サイトオープン以降の評価も上々のようだ。2019年6月にはiOS版アプリをリリースし、利便性の向上も図っている。オンコロジー領域を中心に既に多くの専門医が利用しており、質の高いKOLを囲い込むことで同メディアを活性化し、専門医の会員数を増やしていくことで競合他社との差別化を図っていく戦略となっている。

(2) 医療コンテンツサービス
医療コンテンツサービスの売上高は前年同期比7.2%減の181百万円、営業利益は同51.0%減の35百万円となった。医師向け教育動画サービス「CareNeTV」の売上高は有料会員数が前年同期末比125人増加の4,465人と順調に増加したことで、前年同期比6.9%増の118百万円と増収基調が続いたものの、医師向け教育コンテンツ「ケアネットDVD」及び「その他」の売上高が同25.4%減の63百万円と大きく落ち込んだことが減収要因となった。また、利益面では減収要因に加えて、体制強化のための人員増や利便性向上を目的とした「CareNeTV」アプリの改修費用増も減益要因となった。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 ケアネット Research Memo(3):新ガイドライン施行の影響により減収も、原価改善施策により営業利益率は上昇