■中長期の成長戦略

2. 成長戦略
(1) 不動産賃貸管理事業
ジェイ・エス・ビー<3480>では、上記の経営目標を達成するための成長戦略として、まず不動産賃貸管理事業においては、学生マンションの収益力向上を目指して以下の3点を実施する。

第1に、戸数増加とともに利益重視を目指す。すなわち、地域別・物件のグレード別の募集賃料見直しなどによる既存物件の利益率向上や、競争力の高い新規物件開発による管理戸数増加、土地・収益物件への積極投資などを行う。この計画について、計画2年目の2019年10月期第2四半期時点での同社による進捗評価(A~E)はAと、おおむね計画どおりに推移している。

競争力の高い新規物件の開発では、2019年3月運営開始の学生会館Uni E'meal京都高野は、京都大学を始め多数の学校を対象とする立地環境であり、家具・家電、食事付き、インターネット・Wi-Fi環境完備でオートロック・防犯カメラ等セキュリティ設備充実で、全117室が満室である。また2019年3月運営開始の学生会館Uni E'meal草津野路(滋賀)も同様の設備を有し、立命館大学(びわこ・くさつキャンパス)に近接し、全106室が満室である。

第2に、自社学生マンションブランドの差別化及びサービス品質の向上を図る。すなわち、食育・健康の観点から健全な食生活をサポートする食事付きマンションの開発や、留学生をターゲットとするビジネスモデルの確立を目指す。この計画についても、同社の進捗評価はAと順調である。

大学・大学生協との連携によるマンション開発では、2019年2月運営開始の学生会館 ニューフロンティア高知朝倉は、高知大学まで徒歩11分、インターネット、Wi-Fi環境完備、全室家具・家電付き、オートロック・防犯カメラ等セキュリティが充実しており、全60室満室である。同じく2020年春運営開始予定の学生会館 Campus terrace Waseda(キャンパステラスワセダ)は、同社では初の早稲田大学推薦の学生寮で、早稲田キャンパス、戸山キャンパス、西早稲田キャンパスに近接し、設備やセキュリティも充実している。

学生サポートの拡充では、就職支援セミナーの開催や、食生活サポートの一環として菜園プロジェクトを実施する。また、留学生をターゲットとするビジネス拡充では、2018年11月には中国のUhomesとの業務提携を行い、中国人留学生に対する学生マンション紹介事業としては、学生マンション業界における日本企業初の業務提携となった。

第3に、企画開発・賃貸営業・メンテナンス各部門の一層の連携を行う。すなわち、メンテナンス事業の営業強化とともに、賃貸営業部門・メンテナンス部門と協力した案件情報収集・営業強化を推進する考えだ。同社による進捗評価はBであり、三位一体による物件企画開発や仲介責任・管理責任による24時間365日の入居者アフターサービスを継続課題として認識している。

(2) 高齢者住宅事業
次に、高齢者住宅事業においては、次の3点の実施により、新成長ドライバーに発展させる。

第1に、新規高齢者住宅の受託を増やす。すなわち、多様なニーズに応える住宅バリエーションの構築、関西地区を中心とした新規受託、受託方法・連携先の拡充を図る。同社による進捗評価はBと、おおむね想定どおりに進捗している。すなわち、2018年8月、9月の事業譲受により全国で13棟を運営しており、うち京都洛西中心に6施設展開など、今後もドミナント戦略により効率運営を追求する方針である。

第2に、運営力の向上を図る。すなわち、高稼働維持、介護サービスなどの提供力の向上、運営の良質化を行う。高稼働の維持、介護サービスなどの提供力向上についてはおおむね想定どおりに進捗しているものの、運営の良質化については効率化の推進を含めて、まだ途上であり、同社の進捗評価はCである。

第3に、地域に根差した存在を目指す。すなわち、地域への浸透、地域に交流の場を提供、人材の確保を図ることで、高齢者住宅を地域の公民館のようにする計画である。現状、公民館化の取り組みを2住宅で実施中であり、実施住宅の増加に向けて準備しているが、同社の進捗評価はCにとどまっている。

(3) 組織強化
加えて、組織強化の面では、人員数・店舗数を増強し、キャパシティを拡大して更なる成長につなげる。具体的には、グループの人員数・店舗数を2017年10月期の772人・70店から、2020年10月期には892人・85店にまで増やす計画である。2019年4月末時点で、947人と人員増強は計画通りに進捗している一方、店舗数は77店舗にとどまり弱含みである。このため、同社の進捗評価はBである。

3. ESGへの取り組み
同社では、豊かな生活空間の創造を経営理念として掲げており、ESG(環境・社会・ガバナンス)にも積極的に取り組んでいる。Environmentでは、低炭素型社会実現へ向けて、環境配慮型まちづくり、ごみ回収ボランティア活動等を推進する。また、Socialでは、学生マンション事業を通じて学生・親・オーナーに貢献し、高齢者住宅事業を通じて高齢者・家族・オーナー・地域社会に貢献している。さらに、Governanceでは、企業価値の最大化に向けて、任意の委員会として報酬委員会を設置するとともに、取締役への業績連動型報酬制度や株式報酬制度を導入している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 ジェイ・エス・ビー Research Memo(8):強固な経営基盤を構築し、次期ステージの発展につなげる(2)