■今後の見通し

2. 成長戦略と新規事業の動向
アクセル<6730>は今後の成長戦略として、主力の遊技機器市場については2021年3月期以降170万台の市場規模が続くことを前提に、グラフィックスLSIの売上拡大やその他周辺LSIのラインナップ拡充により、機器1台当たりの収益を拡大していくことで、安定成長を目指していく戦略となっている。

また、中長期的に更なる飛躍を目指すため、遊技機器市場で培ってきた技術やノウハウを生かした新規事業の育成にも注力していく。ターゲットとするコア・テクノロジーは「ミドルウェア(圧縮技術、超解像技術等)」「機械学習」「セキュリティ」「ブロックチェーン」の4領域となる。新規事業の進め方の基本方針としては、1)外部リソースの有効活用により、早期の事業確立を目指すこと、2)社内の限られたリソースをコア・テクノロジーの開発に収集すること、3)外部リソースやアライアンスを活用しながら事業化を加速していくこと、の3点を掲げている。

要素技術の研究開発と製品化については同社(約20人のスタッフ)で行い、今後の事業化段階では新設した子会社などで展開していく方針となっている。「ミドルウェア」と「機械学習」の領域は2019年5月に設立したaxで、「ブロックチェーン」については2018年7月に設立した(株)VIPPOOLで行い、「セキュリティ」に関しては同社で事業展開する。これら新規事業の売上目標については2020年3月期の約1億円から、2021年3月期に約5億円、2022年3月期に約10億円、2023年3月期に約16億円強まで拡大し、売上総利益率で50%程度の水準を目指している。

(1) ミドルウェア製品(AXIP)
ミドルウェア製品は主にゲーミング市場にターゲットを絞り、同社が得意とするデータ圧縮技術を中心に製品を提供していく計画となっている。既にWEB広告向けやアニメ制作、スマホネイティブアプリの開発会社などにムービーミドルウェアの「H2MD」※1や超解像「GRADIA(グラディア)」※2などの採用が広がっており、競合品と比較して性能だけでなく、使い勝手のよいミドルウェアとして評価が高まっている。また、そのほかにも低負荷・低遅延を実現したサウンドミドルウェア「C-FA(シーファ)」やHDR対応超高圧縮ムービーミドルウェア「LESIA(リーシャ)」、ファイルパッキングミドルウェア「VUCKET(バケット)」※3、エッジ向けディープラーニングミドルウェア「ailia(アイリア)」※4など各種ミドルウェア製品を2018年にリリースしたほか、2019年もカジノ・アーケードゲーム向けムービーミドルウェア「AXVC」をリリースするなど幅広い製品をラインアップしていることも強みと言え、これら製品を多機能パッケージとして販売することで付加価値を向上することも可能となる。

※1 ブラウザで動画を再生できる動画コーデックライブラリで、複数動画の同時再生や透過レイヤー(動画の重ね合わせ)制御が可能なこと、CPUの負荷が少ないこと等が特徴となっている。
※2 超解像とは、ディスプレイに表示される文字や絵などを拡大した時に、通常はジャギー状(ギザギザ状)になってしまう輪郭部分を滑らかで自然な状態に補正する技術
※3 自動実行型の圧縮ファイル・ソフトウェア、VUCKETは画像・音声等の大容量ファアイルを1つにまとめる機能だけでなく、ファイルの破損チェックや暗号化等にも対応している。
※4 「ailia」の特徴はディープラーニングの知識なしに簡単に利用が可能で、物体検出や画像分類、特徴抽出に対応していること。また、組込みシステムに移植が可能なほか、Unity(ゲーム開発エンジン)にも対応しているため、様々な用途での採用が見込まれている。


ビジネスモデルとしては企業、アプリごとに固定料金(ライセンス販売)、もしくは売上連動型のロイヤリティビジネスで展開していくことになる。2023年3月期の売上目標としてAXIP全体で約8億円を目指していく。ゲーム開発用ミドルウェアの市場規模は年間で数十億円規模と見られ、成長余地は大きい。競合としてはCRI・ミドルウェア<3698>が挙げられる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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情報提供元: FISCO
記事名:「 アクセル Research Memo(6):遊技機器市場で培った技術・ノウハウを新規事業に展開、新たな収益柱を育成(1)