■会社概要

4. 事業内容
同社グループはカルナバイオサイエンス<4572>と連結子会社1社(CarnaBio USA, Inc.)で構成され、事業セグメントとしては「創薬事業」及び「創薬支援事業」の2つに分けられている。キナーゼの作製技術やキナーゼ阻害薬を研究するに当たって必要となるプロファイリング・スクリーニングなどのキナーゼのアッセイ系のノウハウ並びに、キナーゼ阻害活性を有する独自の化合物ライブラリーを構築するノウハウなどが同社の基盤技術となっている。同社はこれらの創薬基盤技術を生かして創薬支援事業で安定した収益を獲得し、獲得資金を創薬の研究開発に投入し、ライセンスアウトを行うことによって大きな成長とリターンを目指すビジネスモデルとなっている。

(1) 創薬事業
創薬事業は、同社が有するキナーゼ阻害薬に関する創薬基盤技術がベースとなる。高品質なキナーゼを製造する技術や高度なプロファイリング・スクリーニング技術によって、効率的に医薬品候補となる化合物を探索できることに加え、自社内に本格的な化学合成ラボを有していることから、随時化合物の最適化ができる点が、他社との差別化要因となっている。同社の創薬パイプラインは、そのすべてが自社単独ないしはアカデミアなどとの共同研究から生み出されたものとなっており、独自性が高い。これまでに創り出してきたキナーゼ阻害活性を有する独自の化合物ライブラリーを有しているだけでなく、in-vitro(試験管内)、in-vivo(動物モデル)の評価を行う人材・設備等も整備している。また、2018年12月期には研究開発本部に臨床開発部を創設し、自社で臨床試験を実施するための体制を構築し始めている。現在は本社に2名、米国に新たに開設したオフィスに2名の体制となっているが、臨床開発のノウハウを持つ人材をもう少し増やしていく方針となっている。

創薬事業の経営方針としては、いまだ画期的な治療法が確立していないアンメット・メディカル・ニーズの強い疾患を中心に選定、特にがんや免疫炎症疾患を重点領域として少数精鋭の研究体制により、ファースト・イン・クラス※1とベスト・イン・クラス※2の両パイプラインの構築を進めていく。また、一部のパイプラインを除いて自社で臨床試験の前期第2相まで開発を進め、導出価値を最大化した上でライセンスアウトを行う方針となっている。一部のパイプラインに関しては前臨床段階での早期導出も戦略的に進めていく。

※1 ある疾患に対する治療薬で、新規な標的や作用機序を持ち、従来の治療体系を大幅に変えるような独創的医薬品(画期的新薬)を指す。
※2 ある疾患に対する治療薬のうち、新規の作用機序を有するわけではないが、既存の標的・作用機序に新たな価値を付与することで他の既存薬に対して明確な優位性を持つ薬を指す。


(2) 創薬事業
創薬支援事業とは、同社のキナーゼに関する創薬基盤技術をベースに、製薬企業や大学などの研究機関で実施される創薬研究を支援するための製品・サービスを販売・提供する事業となる。製品としては、キナーゼ阻害薬の研究で用いられるキナーゼタンパク質、キナーゼのアッセイキット※1を販売している。また、受託サービスとして製薬企業などが創り出した薬の素となる化合物のプロファイリング及びスクリーニングなどの実施や、顧客からの特注によるアッセイ開発、並びに同社及び同社の協力会社が開発したセルベースアッセイサービスの提供などを行っている。セルベースアッセイとは、キナーゼ阻害薬の研究が深化するなかで細胞レベルでの化合物評価をしたいという顧客ニーズに対応するサービスである。なお、相補型スプリットルシフェラーゼアッセイ技術※2に基づく安定発現細胞株の研究開発及び提供を行っていた子会社のProbeXについては経営の効率化を図るため2018年春に同社が吸収合併している。

※1 アッセイとは測定試験の総称で、被験化合物が標的とするキナーゼの働きをどの程度抑えるのか、また抑えないのかを調べること(キナーゼ活性測定)を指し、調べるために必要なキナーゼや緩衝液などをキットにして販売している。
※2 相補型スプリットルシフェラーゼアッセイ技術とは、ルシフェラーゼ(ホタルなどの発光生物の体内に存在する酵素)のDNA配列を適切な部位で2つに分断し、それぞれを細胞内に導入すると自然界には存在しないルシフェラーゼのタンパク質断片が細胞内に生成され、これらのタンパク質断片が細胞内で物理的に近づくと、分断されていても発光を回復する現象を活用したアッセイ技術を指す。


同事業セグメントの売上高の大半は、キナーゼタンパク質の販売とスクリーニング・プロファイリング受託サービスで占められている。同受託サービスの主要顧客として、国内では小野薬品工業<4528>、海外では米Gilead Sciences Inc.などが挙げられる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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情報提供元: FISCO
記事名:「 カルナバイオ Research Memo(3):創薬支援事業で得た収益等で創薬の開発を行うビジネスモデル