■中長期の成長に向けた重点取り組みと進捗状況

2. ルネサスエレクトロニクス製品の売上・デザイン-イン取り組み強化の進捗状況
(1) デザイン-インの取組状況
ルネサスイーストン<9995>はルネサスエレクトロニクスの特約店ということもあって、売上高の約8割をルネサスエレクトロニクス製品が占めている。そのルネサスエレクトロニクスは、事業構造改革の一環で自動車分野と産業分野をターゲット市場の中心としている。したがって同社のターゲットもその2分野となる。これらの市場に切り込むには、顧客が新製品開発を進める初期段階で顧客ニーズを満たすようなソリューション提案を行うことが重要だ。同社はこうした営業手法を「デザイン-イン」と呼んでいる。

こうした状況を踏まえて同社は、ターゲット市場をスマートカー(自動車分野)、スマートファクトリー(産業分野)、スマートインフラ(産業分野)の3つの領域に分け、それぞれの市場における技術的課題の解決に向けたソリューションを提案することでルネサスエレクトロニクス製品の売上拡大を図っている。

求められるニーズの高度化や半導体チップなどハードの高性能化などを背景に、実際の販売の現場においては、販売面での工夫が求められるようになってきている。それは顧客側の技術者の育成だ。高機能化する半導体チップとユーザー側のスキルとのギャップが拡大する方向にある。そこをきちんと埋めることで顧客側の製品に対する理解を深め、販売の拡大につなげるという戦略だ。

従来この役割はルネサスエレクトロニクス自身が担っていた。しかしながら事業構造改革の流れのなかでこの機能は大きく低下した。代わってその役割を担っているのが同社だ。同社は半導体トレーニングセンターを設立し、顧客側の技術者の育成に注力している。これは同社にとって負担増にも見えるが、同社が付加価値を創造できるチャンスでもあり、ルネサスエレクトロニクス製品の売上拡大を図るうえではむしろプラスに働くと弊社ではみている。

半導体トレーニングセンターは物理的な施設があるわけではなく、同社の講師が顧客のオフィス等に出向いて行う出張トレーニングが中心だ。不動産経費などの費用を伴わず、人件費や教材費等だけで低コストで実施できるのがポイントだ。教材はルネサスエレクトロニクスが開催するセミナーで使用されるものと同等のものを使用しており、こういった点にも同社がルネサスエレクトロニクスの役割の一部を担っていることがうかがえる。

同社が顧客をサポートする施設やプログラムはほかにも、茨城デザインセンターなど複数存在している。同社はこうした取り組みを今後も強化していく方針だ。

半導体トレーニングセンターなどの取り組みは、現状は顧客向け有料サービスとなっている。しかし、顧客側の技術者を育成するこうした取り組みがサービス収益をもたらすだけにとどまらず、半導体トレーニングセンターやデザインセンターなどを通じた顧客との関係をいかにビジネス(取引)に発展させられるかが重要だ。この点については、同社が提供する大きな“付加価値”として、ビジネスの拡大や商品の拡販に重要な貢献を果たしていると弊社ではみている。

(2) 2019年3月期第2四半期の進捗
2019年3月期第2四半期は、自動車分野263億円、産業分野で89億円の合計352億円のデザイン-イン実績があった。2019年3月期下期については自動車分野で124億円、産業分野で113億円の合計237億円のデザイン-インを予定しており、通期ベースでは自動車分野387億円、産業分野202億円の合計589億円となる見通しだ。

2019年3月期第2四半期における主なデザイン-イン事例としては、自動車分野でのR-CarをコアにしたADAS(先進運転支援システム)へのワンストップソリューションの提供や、産業分野向けカメラモジュールの受注とそのネットワーク対応などが挙げられる。前者では自動運転に必要な要素技術として道路や地図の認知があるがこれを人間と同レベルで行うには高精細かつリアルタイムの描画処理が必要となる。同社は半導体チップ、セキュリティ、車載向けリアルタイムOS、技術サポートなどをワンストップで提供している。

産業用ネットワークカメラの案件では、半導体チップ、通信デバイス、通信ネットワークのサポート、システムインテグレーションなどをやはりワンストップで提供し、顧客が求めるリアルタイムの監視カメラシステムを構築した。

こうした一連の活動を通じて同社では、2019年3月期通期ベースのルネサスエレクトロニクス製品の売上高を、前期比0.5%減の636億円と計画している。期初予想では647億円を予想していたが第2四半期までの進捗を踏まえて修正した。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 イーストン Research Memo(4):顧客の知識アップや技術者育成、ソフト開発支援などの付加価値提供にも取り組む