これまでの具体的な動きとしては、2018年8月にカナダ・バンクーバーで開催されたSIGGRAPH(シーグラフ、CG、アニメ、デジタルアート等の国際展示会)の近くにおいてVR及びMR環境での製品デザインやコンテンツ制作を可能にする実証用試作機(PoC、Proof of Concept)の体験会を開催した。同社はこの領域ではVRを使った3Dデザインソフト開発を行っている英グラビティ・スケッチと協業している。
こうした同社の取り組みを試す格好のチャンスが2019年3月期第2四半期に出現した。ディスプレイ(液晶タブレット)の新製品Wacom Cintiq Pro 24の供給問題だ。この問題が2019年3月期第2四半期決算においては減収減益要因となったのは前述のとおりだが、新中期経営計画においては、まさにこうした問題をいかに解決するかが重要なテーマとなっている。Wacom Cintiq Pro 24に関して言えば、2018年3月に新製品として市場にリリースしたが、直後の2019年3月期第1四半期(4月−6月期)において供給問題が顕在化した。これを受けて同第2四半期(7月−9月期)に対策を進め、同第3四半期(10月−12月期)の年末商戦には需要に対して十分供給できる体制を整えた。また上位機種のWacom Cintiq Pro 32は11月初旬にリリースされたが、2019年3月期下期におけるブランド製品事業の巻き返しのメインエンジンはこれら24/32インチサイズのディスプレイ2機種の拡販であり、想定どおりの業績が達成できれば、同社の組織オペレーションの改革が狙いどおり機能し始めていることの証明になると弊社では考えている。