(2) 新規市場創造を視野に入れた新製品・サービスの開発推進 a) 新しい通信サービス規格「LPWA」と「5G」 既存のICTインフラは、IoTを前提に構築されたわけではない。商用化が始まった新規格の通信サービスにより、IoT市場は爆発的に成長することが期待される。
M2Mに適した新たな通信サービスにLPWAがある。LPWAは、Low Power Wide Areaの略で、消費電力を抑えて、遠距離通信を実現する通信方式となる。通信速度は携帯電話の100分の1程度と遅いが、通信時の消費電力が少なく、端末の電池は使い方次第で10年間交換が不要となる。通信費用も1回線当たり年100円と、携帯電話の数10分の1と格安になる。M2Mアプリケーションに対応できるよう設計されており、京セラ<6971>やKDDIはLPWAを利用した水道の自動検針の商用化を進めている。ほかには、ガス検針、スマートグリッド、安全性監視、都市駐車場、自動販売機、都市照明など幅広い分野での利用が予想される。
LPWAは、各種規格に対応する。LPWAは、免許が必要な周波数帯域を利用するものと、免許不要な帯域を利用するものとに大別される。携帯電話向けの通信方式の標準化団体である3GPPによって標準化された規格は、免許必要な周波数帯域を使用するセルラーLPWAになる。携帯電話大手3社のNTTドコモ<9437>、KDDI、ソフトバンクグループ<9984>は、2018年から新しい通信規格「LPWA」のサービスを開始した。セルラーLPWAの規格には、LTE Cat-MとNB-IoTがある。同社は、既にCat-M対応の通信デバイスを製品化し、各種センサーからのデータクラウド送信を可能にした。来年度の対応となるNB-IoT(Narrow Band IoT)は、家電や環境センサーなど、高速のデータ通信を必要としないIoT向けLTE通信の仕様になる。一方、免許不要の帯域を利用するノンセルラーLPWAには、LoRaやSifgoxなどの規格がある。LoRaは、携帯電話の電波が届かない山の中などで利用される。同社のLoRa対応の傾斜センサーは、地滑りのおそれがある箇所や建設現場の仮囲い鋼板などに設置され、傾きを検知した際に通知することで、事故を未然に防ぐ。
b) 「IoT×AI・VR・API」での付加価値提供 中長期的な成長戦略としては「FASTIO」を基盤とするインテグレーションソリューションに経営資源を傾斜する。IoTシステムを活用した新たな社会課題ソリューションを開発し、その市場ニーズが高いようならパッケージ化する。それにより、コンストラクションソリューションやGPSソリューションに次ぐ、新たな事業の柱を生む。新たなパッケージサービスを増やし、ストックビジネス化を進め、事業基盤の安定化を実現する意向だ。新ソリューションとして、在庫監視ソリューション、残量監視ソリューション、故障検知ソリューションの開発に取り組んでいる。
「IoT×AI」では、普及型エッジAIカメラ「MRM-900」を発売した。同製品は、米NVIDIAのモバイル組み込みシステムの並列処理を GPU で高速化する AI コンピューティング プラットフォーム「Jeston」を搭載した。ディープラーニング学習モデルをベースとしたエッジコンピューティングでの画像解析により、走行中の車両から撮影する画像を解析することではく離・劣化などの路面劣化診断を可能にした。河川増水や土石流検知などの防災用途では、防水・熱処理設計を施した一体型の省スペース筐体の製品を開発することで、従来運用が難しいとされてきた狭小スペースや屋外稼働を可能にした。作業員の安全帯の着用有無をリアルタイムで検知するシステムもラインアップした。道路や河川に設置したカメラのリアルタイム画像解析により、管理者の監視業務の補助や無人監視を可能にした。人為的ミスや見落としを軽減し、人材不足の解消に寄与する。