a) 食道がん(放射線療法との併用) 2013年より岡山大学で実施された医師主導の臨床研究では、ステージI〜IIIまでの食道がんで外科手術による切除や根治的化学放射線療法が困難な患者(高齢者等)を対象に放射線療法との併用による治療が実施された。治療期間は6週間で、週5日の放射線治療とテロメライシンを合計3回投与し、腫瘍縮小効果を見ると言うもの。臨床研究の結果については2018年7月の日本臨床腫瘍学会で発表されており、全13例中のうち8例で腫瘍が完全消滅したことが確認されている。
b) 進行性または転移性固形がん(免疫チェックポイント阻害剤との併用) 国内では食道がんを中心とした進行性または転移性固形がんの患者を対象に、抗PD-1抗体であるペムブロリズマブとの併用療法による医師主導の第1/2相臨床試験が、2017年12月より国立がん研究センター東病院等で開始している。症例数は最大で28例(最少で11例)を予定しており、2018年7月時点で5例(食道がん4例、胃がん1例)の組み入れが完了している。主要評価項目は、安全性、抗腫瘍効果、免疫応答等で1年間の経過観察期間を設けている。ペムブロリズマブの単独治療では部分奏効率が15〜18%程度と言われており、併用療法によってこの数値が25%を上回ってくれば、末期食道がん患者の治療法としてその価値が認められると考えられる。
c) メラノーマ(単剤→免疫チェックポイント阻害剤との併用) 米国で第3、4ステージの切除不能、または転移性メラノーマ患者を対象とした第2相臨床試験が2017年7月から開始されている。治療期間は24週間で6週間ごとにテロメライシンを5回投与し、有効性、安全性、免疫応答等を評価する。症例数は最大50例を予定しており、最初の10例は単剤投与試験で局所効果及び全身の免疫効果を確認し、4例以上で効果があると確認されれば単剤投与での臨床試験を継続※、逆に3例以下にとどまった場合は、免疫チェックポイント阻害剤との併用試験に切り替えて進むか、もしくは中止することも選択肢として考えている。現在の組入状況は4例と当初の想定よりも遅れ気味となっているため、治験施設を現状の4施設から8施設に拡大し、2018年内に10例の実施を目指し、遅くとも2019年夏までには今後の開発方針を決定するとしている。弊社では、食道がんでの臨床試験が米国で進む可能性が高いこと、メラノーマでは先発品が既にあり競合が激しいため、同等程度以上の薬効が確認されなければ臨床試験は中止する可能性もあると見ている。