(2) 最近の進捗状況と今後の見通し a) 歯科材料事業 前述のように、2018年3月期において、2014年3月期に実施した歯科材料事業を担うKulzerの買収にかかるのれん代等の無形資産について減損処理を行った。これによってKulzerの負の側面はほぼ解消され、あとは攻めるだけという状況となった。Kulzerは歯科材料全般を手掛けるが、この業界ではデジタル化という大きな潮流がある。デジタル化とは義歯などの歯科技工物の製作において歯科技工士による手作業から3Dプリンタ等デジタル機器による作製への転換の動きを言う。またデジタル化というなかにおいても、大型デジタル機器から小型デジタル機器へという潮流がある。Kulzerは小型デジタル化という点で出遅れていたが、追い上げ体制が整いつつある。
b) 不織布事業 同社はプレミアム紙おむつ市場向けに高機能不織布を展開している。直近の動きとしては、名古屋工場に15,000トン/年の設備を新設したほか、四日市工場ではギャザー部分に使用される柔軟伸縮不織布の能力を6,000トン/年増強した(いずれも2019年3月期稼働)。これらの結果、グローバル生産能力は約20%増加し、足元では115,000トン/年に達している。
c) ビジョンケア材料 同社はプラスチックメガネレンズモノマーで世界シェア45%を握るトップ企業だ。この市場は年率4%で安定成長が続いている。直近の進捗では、ワンタッチで遠近を瞬時に切り替えられる次世代アイウエアTouch FocusTMを2018年2月に販売開始したことが挙げられる。Touch FocusTMは、フレームのタッチセンサーで液晶レンズを作動させ、遠近の切り替えを行うものだ。メーカー希望小売価格は1本25万円(税別)で、7店舗で販売がスタートした。2019年3月期までに販売拠点を100店舗に拡大することを目標としている。中期的には2023年3月期において、年間5万本の販売を目指すとしている。
(2) 最近の進捗状況と今後の見通し a) 農薬事業 2018年3月期に最も顕著な進捗があったのは、農薬事業だ。同社は次世代の収益成長を担うと期待される新規5原体をパイプラインとして保有しており、そのうち最初の殺菌剤をトルプロカルブとして2016年に上市し、また、水稲用除草剤のシクロピリモレートの登録申請を行った。2018年3月期中には、殺虫剤ブロフラニリドについてドイツ・BASFと長期商業化契約を締結し、殺菌剤キノフメリンについてはドイツ・バイエルとグローバルライセンス契約を締結した。BASFとバイエルはともに世界4大農薬メーカーの一角を占めるワールドメジャー企業であり、これらに対して同社の農薬原体を導出できたことの意義は極めて大きいと弊社では考えている。
b) イクロステープTM(機能性フィルム・シート事業) イクロステープTMは産業向けの代表的製品であり、半導体製造工程で使用されている。現状は名古屋工場に2ラインを有するが、需要拡大を受け、台湾の高雄に新工場を建設することを決定している。380万平方メートル/年(ただし銘柄構成で能力は変動する)の能力を有する1ラインが2019年9月に稼働する予定だ。台湾新工場が稼働すれば供給能力は現行の1.5倍となり、年6%以上のペースで拡大を続ける需要に対して十分対応できることになる。これまでの進捗としては、2017年11月に台湾工場のための新会社が設立された後、2018年5月に起工式が挙行されて建設がスタートしたところだ。